第328回 国防の危機はここから始まる

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第328回「国防の危機はここから始まる」


安田

海上保安庁の離職がすごいらしくて。転勤させるとすぐ辞めちゃうそうです。

久野

え!海上保安庁でしょ?転勤っていうか、そもそも一度海に出るとしばらく帰って来られない仕事じゃないですか。

安田

そうなんですよ。1回船に乗ると長い間帰って来れない。遠洋漁業の漁師みたいな感じで。だから家族に敬遠されるし、今の若者にも敬遠される。

久野

それはまずいですね。国防に関わる問題ですよ。

安田

まずいです。でも気持ちは分かります。自分がその生活をしたいかって言われたら、嫌ですもん。

久野

これ、給料が安すぎるんじゃないですか。

安田

仕事の割に安いんでしょうね。「お国のため」っていう、お金じゃないご褒美みたいなところで繋ぎ止めていたんでしょうけど。

久野

海上保安庁ってけっこう優秀な人が行ってましたよ。

安田

そうなんですよ。頭が良くて、体力もあって、責任感も強くて。すごい人材の集まり。だけど今は離職も増えて募集しても来ない。

久野

これは教育から変えていかないと。こういう人たちがいて初めて日本が成り立っているわけじゃないですか。

安田

そうですよね。

久野

でも日本人って全然感謝しないじゃないですか。

安田

感謝はされないし。共働きじゃないとやっていけない給料だし。だけど旦那は帰ってこないからワンオペで。今の若い子はそんな人とは結婚しませんよ。

久野

福利厚生をめちゃくちゃ良くしていかないと。ベビーシッターをつけるとか。とにかく魅力ある仕事にして、街で会ったら握手を求められるぐらいの。

安田

日本人は安全がタダだと思っていますからね。

久野

日本はやっぱり変ですよ。安全ってすごいコストかかっているはずで。

安田

「軍隊をもっと強化しろ」みたいに言う人はいますけど、自分でやる気はないですね。

久野

そうなんですよ。人任せで。

安田

「もっと予算を投入しろ」と言いながら税金が上がると怒るし。徴兵制はみんな反対するでしょうし。それが現実ですね。

久野

現実だけど何とかしなくちゃいけない。テクノロジーを使って生産性を考えていかなきゃいけない最たるところ。

安田

とにかく今は定員不足で離島の警備ができないそうです。これは待遇を良くするしかないですか。

久野

民間企業と同じですよ。まずは待遇を良くして採用広告を工夫して。

安田

定年までやったら退職金が1億円出るとか。

久野

それくらいやってもいいと思いますよ。

安田

年金もすごい手厚くして。旦那が死んじゃっても家族が豊かに生きていけるくらい遺族年金がもらえて。そしたら結婚しようかってなるじゃないですか。

久野

そうですよね。

安田

だけど日本にはもうそんな余裕がないんでしょうね。

久野

いやいや。予算の順番を間違えていますよ。これ1番大事なところじゃないですか。国あっての国民生活ですよ。

安田

ほんとその通りですね。

久野

このまま行くと九州や北海道が無くなっちゃいます。本当に。

安田

でも現実的に考えて、国防にお金や労力を費やしたいと思う若者は減っているわけじゃないですか。

久野

減ってますね。だから教育から全部変えていかなきゃいけない。

安田

教育で変わりますか?

久野

国民性として良くないところは変えていかないと。たとえば議員年金も昔はすごく優遇されていたんですよ。だけど叩きまくるじゃないですか。

安田

公務員は「もっと安く、もっと働け」って平気で言いますもんね。

久野

今の仕事ぶりが正しいかどうかはちょっと置いといて、日本の政治を司る人としては待遇を良くしていかなくちゃいけない。議員年金も今はほぼ無い状態ですから。

安田

そりゃ賄賂も貰いたくなりますね。

久野

「あの人たちだけずるい」っていう謎の足の引っ張り合いを日本国民ってやるから。

安田

真面目にやった人が損をするようになってますよ。お国のために本気でやると貧乏な生活を覚悟しなくちゃいけない。

久野

絶対に間違ってます。大きな家に住んでいるだけで叩かれたりして。もう本当に英雄みたいにしないと。誰もやらなくなっちゃいますよ。

安田

そうですよね。

久野

とくに離島の国防なんて誰もやりたがらなくなっちゃう。

安田

普通の転勤でも辞めていくご時世ですから。現実問題として共働きも増えていて、ワンオペでは子育ても出来ないし。

久野

まずは共働きしなくてもいい給与にしないといけない。この人に絶対付いていきたいって思えるような待遇にしておかないと。

安田

やりすぎだって国民が反対するでしょうね。

久野

もう日本は平和ボケですよ。高齢者の問題よりずっと優先度が高いはずなのに。順番がぐちゃぐちゃになってます。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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