第110回 「日本の消費者は世界一厳しい」は本当か?

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第110回 「日本の消費者は世界一厳しい」は本当か?

安田

日本は「安いうえにサービスがいい国」としてインバウンドに人気ですが、裏を返せば「消費者が世界一うるさい国」とも言えるんじゃないかと思うんです。


倉橋

ああ、まさしく日本の消費者は世界で一番厳しいと思いますよ。求められるレベルが尋常じゃないというか。

安田

そうですよね。品質やサービスに対して、ナチュラルに「完璧」を求めますもんね。


倉橋

そうそう。接客態度一つ、商品のちょっとした不備一つで、絶対に許さない、というような厳しい視線を感じますね。先日も、知人が飲食店をオープンしたんですが、開店当初なんてどうしたってバタバタするじゃないですか。でもそれすら許してもらえないって嘆いてました(笑)。

安田

スタッフも慣れてないから、多少はオーダーミスがあったり、ドリンクが遅かったりは仕方ない気がしますけどね。


倉橋

でしょう? 「お金をいただく以上、プロとして完璧であるべきだ」という価値観が非常に強いんでしょうね。そういう意味でも、日本でビジネスをやるのはなかなか大変なんです。

安田

なるほどなぁ。でも海外はどうかと考えると、それはそれで問題がある気もするんです。例えば中国で商売しようとすると、売る側は少しでも高く売ろうとするし、お客さんは意地でも値切るしで、なんだか殺伐としているじゃないですか(笑)。それに比べれば日本はまだのどかな気もしますけど。


倉橋

気持ちはわかりますけど、経済活動という視点で見れば中国企業が正解なんです。まるで呪いのように値上げに踏み切れない日本企業を見ると、そちらの方がよっぽど異常事態な感じがします。

安田

確かに。でも実際日本だと、ちょっと値上げしただけで一斉にお客さんが来なくなったりするじゃないですか。消費者同士が示し合わせたかのように、ものの見事に波が引いていくという。


倉橋

ああ、確かに。最近のお米の問題もまさにそうですよね。備蓄米を提供しすぎたことによって、今度は大量に余ってしまっている。結局、消費者心理や市場をきちんと読める人がハンドリングしないとこうなるよ、っていう好例だと思います。

安田

あの時も情報が二転三転しましたもんね。「米農家さんは全然儲かってないのに、卸業者がぼろ儲けしてる」みたいな話も出回ってましたけど、ふたを開けてみたらそんなこともなくて。


倉橋

そもそも今の価格の方が適正なんですよ。それを安くしろという方がおかしい。「ニーズがあるものは価格が高くなり、ニーズがないものは価格が低くなる」というのが商売の大前提ですから。

安田

そうですよね。そこを否定したらそもそも商売が成り立たないだろうと。それでいうと、「転売ヤー」なんて叩かれまくってますけど、仕入れたものに利益を乗せて売るのは普通のことのような気もしますし。

倉橋

まぁ確かに、市場をリサーチして、ニーズを読み、商品を求めている人に届けていると考えればそうなんですよね。もっとも、リユース業の経営者の立場としては、転売を全面的に肯定するのも難しいんですけど。

安田

ああ、そうですね。とはいえ一つのビジネスとしてリスクを背負ってやっているわけで。仕入れてから販売するまでの間に、人気がなくなって赤字になる可能性もあるわけじゃないですか。あれがダメなら、輸入業者だってダメなんじゃないかと思ってしまいますけど。

倉橋

まぁ実際大変な仕事だとは思いますよ。転売ヤーとしてものすごく活躍してる人がいたら、自社で採用したいくらい(笑)。もちろんマスクや消毒液のように、必需品を買い占めて高値で売るのは、倫理的に問題がありますけど。

安田

なるほど。そのイメージが強いのかもしれませんね。とはいえ日本人はお金儲けをすること自体に、ネガティブな感情を持つ人が多過ぎる気がします。

倉橋

汗水流して働くのが美徳で、工夫して儲けるのは「ずるい」というような風潮は、確かにあるかもしれませんね。海外に行くと、その感覚は全くない。ニーズがあるものは正当に評価され、価格も上がる。非常にオーソドックスな市場原理が働いています。

安田

客の態度が悪ければ、店員側が普通に怒ったりもしますしね(笑)。安いお金で、完璧なサービスを要求して、何かあれば土下座しろだなんて、日本だけの特殊な文化ですよ。

倉橋

本当にそう思います。ただ見方を変えれば、これだけ厳しい市場で戦ってきた日本の商品やサービスは、海外でも圧倒的な競争力になるはずです。だからもっと日本人は海外に出ていくべきだと思いますよ。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

Twitter  Facebook

株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから

CAPTCHA