第106回 「都合のいい客」と「本当にいい客」の境目

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第106回 「都合のいい客」と「本当にいい客」の境目


藤原

境目研究家」の安田さんにぜひ伺いたいテーマがあって。「いい顧客と都合のいい顧客」の境目についてなんですが。

安田

なるほど、面白い切り口ですね。


藤原

一般的にビジネスの世界では、文句も言わずに自社の商品を買ってくれて、手間もかからず、問い合わせもしてこないようなお客さんを「いいお客さん」と定義しがちですよね。利益率も高いし、何より楽ですから。

安田

ええ、企業側からすれば非常にありがたい存在ではありますよね。


藤原

でも私は、そういう人はあくまで「都合のいいお客さん」であって、「本当にいいお客さん」とは違うんじゃないかと思っているんです。我々も商品やサービスを提供している身ですが、どれだけ探究しても完璧なものなんて作れないじゃないですか。

安田

そうですね。常に改善の余地はあります。


藤原

そんな時、「ここはすごくいいけど、このままだと良くないんじゃないか」といった、クレームにも聞こえる指摘をしてくれるお客さんがいますよね。

安田

いますね。対応するのに骨が折れるお客さん(笑)。


藤原

そう、短期的には手間がかかるし面倒かもしれませんが、そういう批評家的な視点を持って接してくれる人こそが、商品やサービスを育ててくれる「本当にいいお客さん」なんじゃないかと。

安田

その定義でいくと、いいお客さんを得られるかどうかは、受け手である自分自身の成熟度が問われますね。要は「いい彼氏」と「都合のいい彼氏」、「いい友達」と「都合のいい友達」の違いと同じなんですよ。


藤原

ああ、まさにそうです。安田さんはご自身で商売をされていて、その違いをどう感じますか?

安田

藤原さんが常々仰っている「報酬」の話で考えると、お金という「外的報酬」しかくれないのが「都合のいい人」。それに加えて、厳しさや励ましといった「内的報酬」までくれるのが「いいお客さん」というイメージですね。


藤原

なるほど、その整理はすごくしっくりきます。内的報酬まで与えてくれる相手というのは、関わりの深さや種類が違いますもんね。

安田

私自身も飲食店などに行ったときは、「いいお客さん」でありたいといつも思うんですよ。都合のいい客になるつもりはないですが、お店側の事情を察して振る舞うといいますか。


藤原

ほう、例えばどんなことですか?

安田

そろそろ食事が終わりそうな時に、飛び込みのお客さんが来て、お店側が「今満席なんです」みたいな状況だったら、サッと席を空けて帰るとかですね。


藤原

ほう、自分から席を立つと。

安田

ええ。「もう終わりますよ」と声をかけてあげて、新しい人を入れてあげたほうがお店は儲かるわけですから。冒頭で言った「都合のいい客」と同じに見えるかもしれませんけど、動機が違うんです。それはお店への配慮という「内的報酬」のつもりであえてやっている。


藤原

素晴らしいですね。そういう状況まで想像して慮ることができるのは、本当の意味での「いいお客さん」だと思います。消費者としての「品」を感じますね。

安田

でも意外とこれ、やる人少ないんですよね。お店の人に「僕らもう終わりますよ」って声をかけてあげればいいのに。


藤原

お店の人も助かるでしょうし、「この人、なんていいお客さんなんだ」と感動すると思いますよ。

安田

まあ、お店の人が「断りたい」という顔をしている時もあるので、そこは顔色を見て余計なことはしないようにしていますけどね(笑)。

藤原

確かにそういうケースもありますね(笑)。今の話で思ったんですが、やはり消費者にも「品格」が必要なんだと思うんです。お金を払っているからといって何をしてもいいわけではない。

安田

間違いないですね。「品がある」というのは、自分本位じゃなくて「相手のことを考えられる」ってことだと思うんです。だから店のために席を譲ることもあれば、逆にあえて厳しい指導や耳の痛い意見を言うこともある。根っこは同じ愛があるからこそ、関係性が深まるんですよね。

藤原

社員に対しても全く同じことが言えますよね。「都合のいい社員」なのか「いい社員」なのか。上司の指示に文句も言わずに従うイエスマンは、都合はいいけれど会社を良くはしない。

安田

でも社長さんたちって、「うちの社員は自分の頭で考えない」と嘆きつつ、実際には言うことを聞く都合のいい人ばかり採用していたりするんですよね。

藤原

多いですよね(笑)。「社長、それは長期的に見るとマイナスですよ」と諫めてくれる社員こそが本当は必要なんですけど。

安田

結局、周りにイエスマンばかり置いてしまうのは、自分自身が都合のいい人ばかりを選んで集めているだけなんですよね。

藤原

本当にその通りです。耳の痛いことを言ってくれる「いい人」が周りにいないのは、結局はこちら側の問題であると。

安田

顧客も社員も、自分にとって「都合のいい存在」を求めているうちは、本当の成長はないということですね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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