第109回 資本主義の皮を被った「資本家主義」の正体

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第109回 資本主義の皮を被った「資本家主義」の正体

安田

藤原さんはメルマガの中で「資本主義」と「資本家主義」という言葉を使い分けていますよね。藤原さんの中では別のものなんですか?


藤原

そうですね。きれいに切り分けられるわけではないのですが、「資本家主義」は「資本主義」の延長線上で生まれたもの、というイメージです。そもそもの話、「資本主義」というシステム自体は、ある種平等なものじゃないですか。

安田

確かに「お金というツールを使って経済を動かしていくこと」そのものは、誰に対しても開かれていますからね。


藤原

ええ。ただそこで、「資本家」たちの都合のいいように社会のルールを作り変えてしまった状態、これを私は「資本家主義」と呼んでいるんです。利他的な人がお金を持って、それを社会に貢献する形で循環させられればよかったのですが、現実はそうならなかった。

安田

確かに。アメリカを象徴とするような資本家たちが、自分たちの利益のために世の中を回すようになってしまっている。


藤原

そうなんです。そこに大きな歪みが出てきているように感じるんですよ。

安田

お金の発明そのものには功罪ありますけど、メリットもかなりありますよね。例えば物は放っておくと腐りますけど、お金は腐らない。それによって物々交換の不便さが解消されて、人間社会が豊かになったのは紛れもない事実ですから。


藤原

仰るとおり、人類にとって素晴らしい発明であることは間違いないですね。

安田

ルールも大事ですけど、基本は市場に任せておけば、いい物が売れて、価格も丁度いいところに落ち着く。儲かりそうなら別の資本家が参入してくるし、作りすぎて余れば価格が下がる。その競争原理自体は、とても健全だという気がするんです。


藤原

そこは私も同感です。市場原理そのものは素晴らしい。ただ一度資本を持つと、そうでない人との間には固定された上下関係ができてしまう。そして今のネット社会になってからは、その関係がさらに強固になっているじゃないですか。

安田

ああ、確かに。よく「オーナー哲学」なんて言いますが、一族には帝王学を教え込む一方で、社員には「労働者としての従順な心得」を求めるという、ダブルスタンダードも生じますよね。


藤原

そうなんですよ。「人は仕事で磨かれる」という言葉も、オーナー経営者が言うと「都合のいい労働者を作りたいだけだろう」と炎上してしまう。

安田

もちろん株を持つこと自体は誰でもできるし、悪いことではないんですけど。資本を持つことで振る舞いが変わってしまったのが問題ということなんでしょうね。


藤原

そう思います。歴史を振り返ってみると、かつてヨーロッパには王族や貴族がいて「ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)」という考えがあった。生まれながらに恵まれているからこそ、自分の力やお金を見返りを求めず、持たざる者のために使うのが当然だとされていた。

安田

パトロンという言葉も、昔は「芸術家を育てるために私財を投じる人」という、いい意味で使われていましたもんね。


藤原

ええ。でも産業革命以降、急速に富を得た「ブルジョワジー」たちが力を持つようになった。貴族のような「義務」の教育を受けていない彼らを中心に、お金さえあれば利己的な欲求を満たしていい、という風潮が強まったんです。

安田

そして古きよきラグジュアリーブランドも、そういう新しいお金持ちの欲望に合わせるようになっていった。お金がお金の力だけで、欲望のままに回るようになってしまったというか。


藤原

そうなんです。だから今、特にアメリカの若い世代などは、この資本家の都合だけで回るシステムに対して「NO」を突きつけ始めているんだと思います。

安田

資本家同士が裏で手を組んで既得権益を守っている、なんて話もよく聞きますよね。都市伝説だと言われることもありますけど、あながち嘘ではないと感じる部分もあって。

藤原

既得権益を守る動きは確実にあるでしょうね。自分たちに有利なルールは変えたくないでしょうから。

安田

そう考えると、もう皆自分で勉強して、小さくても自分の得意なことで商売した方がいい気がしますね。でも世の中には「独立なんてリスクだ」「大きな会社にいたほうが人生安泰だ」という空気がまだまだ強い。独立を煽ると、すぐに「情報商材を売ろうとしている悪い奴だ」とか言われたりして(笑)。

藤原

まあ、実際に不安を煽って商材を売る悪い奴らもいるから厄介なんですけどね(笑)。

安田

そうそう(笑)。でもそれを言っちゃうと、本当に皆が会社員という枠に閉じ込められていくというか。「外は危険だ」と思い込まされて、自ら閉じこもっているようにも見えるんです。

藤原

確かにそこは問題ですよね。誰しも「会社員にならなくても困らないぐらい稼ぐ力」を持つことは可能なはずなんです。フリーランスやひとり社長など、選択肢はいろいろありますし。それを理解した上で「自分には会社員が向いている」と選ぶならいいと思うんですよ。

安田

確かに確かに。「選べる」という状態が大事なんですよね。

藤原

ええ。でも戦後の教育は、むしろその選択肢を見えないようにしてきたわけです。「独立は危険だ」と刷り込むことで、優秀な労働者を企業に留めておこうとする。それによって、「本当は会社員じゃないほうが向いている人」まで残ってしまっているなら、解放していったほうがいい気がしますね。

安田

そのシステムの中にいる限り、労働者がどれだけ頑張ってもその上前をはねる資本家がさらに儲かる構造は変わりませんからね。

藤原

仰るとおりです。ただ、会社という組織を抜けたからといって、結局は巨大資本が作ったプラットフォームの上でビジネスをするわけですから、完全な自由ではないかもしれません。でも少なくとも「資本家主義」の都合のいい駒として生きるよりは、はるかに自由度は高いと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

Twitter note

1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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