第140回 100年後の街を育てる「これからの庭」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第140回 100年後の街を育てる「これからの庭」

安田

ネイティブアメリカンに「土地は先祖からの贈り物ではなく、子孫からの借り物である」ということわざがあって。借り物だから大切に使ってお返ししなきゃいけないという発想ですよね。中島さんもお庭を作る時に近い感覚があるんじゃないかと思いまして。


中島

ああ、確かに。僕も子孫に残せる庭を作りたいという気持ちはあります。住み手が変わっても壊さずに残したいと思ってもらえる庭にしていきたいんです。

安田

そうですよね。家はいつか建て替えるけど、庭はずっと成長していくものですから。今住んでいる人だけじゃなく、将来そこに住む人や近所の人のものでもある。


中島

そう思います。その庭を見ながら歩いて散歩したくなるような街にしたいというのは、常に意識していることです。

安田

家は残して庭だけコンクリートで埋めるというのもあれば、逆に家を建て替えても庭は残したいという方もいますよね。後者だと中島さんとしては嬉しいわけですね。


中島

そうですね。ただ今は日本庭園というと、松を植えたり石を置いたり、庭師が何人も来て作業をするので「手間とコストがかかるもの」というイメージになってしまっていて。

安田

ははぁ、なるほど。それで庭師の仕事が外構工事屋さんに変わってきたということですかね。本来の庭づくりの文化が薄れてしまっている。


中島

そういう部分はあると思います。時代のニーズに日本庭園が合わなくなってバラバラになってきたというか。だからこそ、今の時代の日本の庭を作っていきたいという思いはありますね。

安田

ふむふむ。現代の暮らしに溶け込んでいて、それでいて四季があって自然を感じられる。手間がかかりすぎない庭ってことですね。


中島

ええ、まさに。例えば観葉植物も、増やしすぎて水やりに追われるようになってしまうと本末転倒ですから。そのバランスをしっかり考えていけたらいいなと。

安田

そこは大事ですよね。自分の庭でありながら、実は近所の人にとっての共有財産でもあるわけで。手間がかからず四季が感じられて、近所の人にとっても癒しになる庭。


中島

本当にそう思います。そういう庭を作りたいという方が一人でも増えていくように、伝え続けていきたいですね。

安田

いいですね。中島さんがお弟子さんをもっと育てていけば、その考えもどんどん広がっていくように思いますけど、そのあたりはどうなんですか?


中島

そうですね。弟子が弟子を育てるようになるくらいまでは頑張らないといけないとは思っています。今47歳なので、そろそろ弟子を育てることを本格的に進めていきたくて。

安田

すごくいいと思いますよ。5人の弟子がそれぞれ5人育てたら、地域への影響度も全然変わってくるでしょうから。


中島

ええ。私の考えが街に広がっていけば、「隣との境界もびっちりブロックで仕切るより、植栽でゆるやかにつながる方がいい」という雰囲気も生まれてくるんじゃないかと思っているんです。

安田

いいですねぇ。そういう街を作るとしたら、やっぱりご自身が住んでいる地域がいいですか? 岐阜や愛知のあたりで、中島さんテイストの庭がそこら中にあるような街があったら楽しそう(笑)。

中島

いいですね(笑)。やっぱり自分が住んでいる近くで散歩したくなるような街を作りたいです。美濃加茂とか、この辺りで実現できれば。

安田

100軒並んでいる街のうち六、七十軒が中島さんスタイルの庭だったら、景観がガラッと変わりますよね。「あの街は素敵だ!」となる。

中島

開発の規制などで難しい部分もあるんですが、素敵な庭が増えればここに住みたいという人も増えてくると思うんです。そうなったら本当に嬉しいですね。

安田

庭が街の魅力を作って、住みたい人が増えて、そこに住む人がまた庭を大切にする。その循環ができたら素晴らしいですよね。

中島

そうなんです。まずは住宅会社さんや建築会社さんと組んで、一緒にそういう街づくりをしていきたいと思っています。

安田

ぜひ実現してほしいですね。「子孫からの借り物」を大切にする庭が広がって、美濃加茂が素敵な街になっていくといいですね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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