第146回 会社が成長すると「バッドニュース」が増える理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第146回 会社が成長すると「バッドニュース」が増える理由

安田

新店舗も好調な万代さんですが、今日はあらためて目標達成についてお聞きしてみたいなと。規模が大きくなるにつれて、それまでのやり方では超えられない壁って出てくると思うんです。


倉橋

ああ、ありますね。例えば30億の会社が100億を目指すとき、従来のやり方のまま売上を積み重ねていくと、毎日のようにバッドニュースが出てくるんです。欠品が起きて物量が追いつかないとか、社員の問題が発生するとか。

安田

確かに。働く人の数が増えると、様々な問題が一気に噴き出してくるんですよね。


倉橋

そうそう。他にも、クレームが一気に増えたこともありました。

安田

売上が伸びること自体がリスクになるというのはなかなかイメージしにくいですけど、社員が問題を起こしたりとか、現場が回らなくなったりとか、そういうことが頻発するわけですか。


倉橋

そうですね。前のやり方でただ売上を伸ばすだけだと、クレームも増えるし従業員の不満も増える。その処理をマネージャーたちがやるわけですけど、処理だけで手一杯になると、ポジティブな意思決定が何もできなくなるんです。結果、仕事が全然面白くなくなっていく。

安田

なるほどなぁ。前のやり方はあくまでそれまでの規模にちょうどよかったということなんでしょうね。そのまま続けると面白くないことしか起こらない状況になると。万代さんはそこからどうやって変えていったんですか?


倉橋

まず分業ですね。人の育成をするマネージャー、モチベーションを上げるマネージャー、シフトを組む人、採用する人、バイヤーと現場の運営を分ける。要するにマルチタスクをやめて、シングルタスクにしていくんです。

安田

ということは今までなかった部署がどんどんできてくるわけですね。それぞれの担当者がその分野のスペシャリストになっていくと。中小企業の感覚とはだいぶ違いますよね。


倉橋

そうですね。採用なら採用、教育なら教育、CS向上ならCS向上と、それぞれの担当者にお願いする。シングルタスクにすれば、それがその人の強みになりますから。一人が何でもやる体制から、それぞれの専門性を深めていく体制に切り替えるんです。

安田

よく大企業に入ると専門的な一部の仕事しかやらせてもらえないと聞きますけど、中小企業は人がいないからマルチタスクでやるしかない。それが面白いという声もありますが、規模が大きくなれば分業化は避けられないということですか。


倉橋

というより、マルチタスクは難易度がものすごく高いんですよ。僕も最初は一つのお店を自分が店長として全部やっていました。でも2店舗目を出すときには、自分の分身はいないから誰かに任せないといけない。そこでやり方が根本的に変わるんです。

安田

ははぁ。まずはマルチタスクができる人を育てるのが第一歩で、でもそのまま100億200億と伸ばしていこうとしても、必ず組織が崩壊すると。目の前の処理に追われると、ビジネスの醍醐味である仮説検証もできなくなりますもんね。

倉橋

まさにそうなんです。クレーム対応に追われてヘトヘトになってしまいますから。ターゲット層のお客様からのご意見には真摯に応えるべきですが、意図がわからないようなものは専門部署に任せた方がいいんです。

安田

確かにそうですね。ちなみにマルチタスクが向いている人とシングルタスクが向いている人って、性質がちょっと違う気もするんです。つまり規模に応じて採用する人材も変えていくということですか。

倉橋

そうですね。会社を次のフェーズに進めたければ変えていった方がいいでしょうし、今の規模でお客様に喜んでもらい続けるならそのままでもいい。でも組織を大きくするなら、今までのやり方を否定する勇気を持たないと、成功はかなり難しいと思いますね。

安田

なるほどなるほど。とはいえ、そうやってシングルタスク化を進めた先に、また新たな壁が出てくるんじゃないですか?

倉橋

仰るとおりです。今度は個人では解決できない、会社全体の課題が出てくる。例えば物流の問題ですね。納期に届かないとか倉庫に商品が届かないとか、どうしても必要な商品が欠品するとか。シングルタスクでやっていても解決できない構造的な問題が発生してくる。

安田

は~、なるほど。そうなるともう、その分野のスペシャリストを外から引っ張ってくるしかないですよね。新人から育てるわけにもいかないですし。全国チェーンを経験してきた物流のプロとか、流通のプロみたいな方ですか。

倉橋

まさにその通りで、大手で経験を積んだスペシャリストに会社にジョインしてもらう。僕も実際にそういう方の仕事を見て、こんなやり方があるのかと驚きましたよ。展開のスピードが全く違うんです。それなりの報酬も必要ですけど、その規模になっていればある程度良い条件も提示できますからね。

安田

なるほどなぁ。慣れ親しんだやり方を変えるのは相当な労力だと思いますが、それをやらないと次には進めないんでしょうね。

倉橋

ええ。ものすごくコストもパワーも必要です。でもそうしない限り絶対に突破はできないというのが、実感としてあります。

安田

万代さんのこの先のステージでは、さらに全体を任せられるCOOのような存在が必要になるかもしれませんね。

倉橋

そうですね。このWebマガジンも、そういうスペシャリストの方に見ていただいて、うちの会社に興味を持ってもらえたら嬉しいです。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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