第377回 ミスマッチはお互いのデメリット

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第377回「ミスマッチはお互いのデメリット」


安田

入社式が終わってすぐ退職代行に申し込む人が増えているのだとか。

久野

これ毎年増えていってますね。

安田

本当に。新卒って辞めにくいのが売りだったんですけど。

久野

確かに昔はそういう感じでした。入れてしまえばなんとかなるみたいな。

安田

「入社前に聞いていた労働条件と違う」という理由が多いみたいです。固定給だと聞いていたのに歩合だったとか。今はそんなギャップがあるとすぐ辞めちゃいますよね。

久野

昨日のyahooニュースには「4時間で辞めた」って書いてありました。

安田

4時間?

久野

午前中の説明を聞いて昼の1時に退職代行に連絡したそうです。

安田

夕方まで待てなかったんですね。まあ会社員に向いてない人もいますからね。ただ労働条件を偽って採用するのはもう無理だと感じます。

久野

たぶん偽ってるつもりはないと思うんですよ。さすがに今の時代にそれは無理だとわかっているので。

安田

じゃあ認識の齟齬ってことですか?

久野

期待値調整がしきれないまま来ちゃうとか。それが結構大きい。

安田

なるほど。

久野

「入社したらすぐに稼いでください」なんて説明会では言わないから。でも経営者からすると入った瞬間から「悪いけど稼いでくれ」って思うじゃないですか。

安田

そりゃそうですね。

久野

その時点でもう相容れないっていうのが前提なので。会社側もそこを学習しないといけないです。入社前にちゃんとマイナスポイントも話しておかないと。

安田

知り合いの経営者さんはXやポッドキャストで「転勤がある」「社長との飲み会がある」ってバンバン出してます。ミスマッチがなくなると言ってました。

久野

うちの会社も入社前面談で色々言うことにしています。

安田

例えばどんなことを言うんですか?

久野

「勉強してもらわなきゃ困る」とか。課題を出したりだとか。

安田

それで辞めちゃう人もいますか?

久野

いますね。20人に1人ぐらいですけど。だから「説明と違った」っていう理由で辞める人はいません。

安田

どういう理由で辞めるんですか?

久野

思ったより勉強するのが大変でしたとか。いざ入ったら想像以上にやらされたとか。そういうのはあります。

安田

勉強するのは本人のためですけどね。

久野

マイナスになりそうな部分は丁寧に説明しておいた方がいいと思います。

安田

人によってマイナスに感じる部分って違いますからね。上司に細かく指示を出してほしいって人もいれば、そこまで管理されるのが嫌だって人もいて。

久野

ちゃんと説明して合うかどうかを相手に見極めてもらうのがいいと思います。顧問先には「とにかくネガティブな開示もした方がいい」と伝えています。

安田

絶対そうですよ。

久野

ただ順番は大事で。惹きつけてから開示しないといけない。いきなり開示すると離れてくだけなので。

安田

マイナスを補うプラスポイントもないとダメですし。

久野

それがないと採用しようがないですね。

安田

アピールポイントがない会社ほどマイナスポイントを隠しちゃうのかも。よほどのことがないと入社して4時間では辞めないですよ。

久野

中小企業はターゲットを明確にしないともう無理だと思います。マイナス部分もあるけど自社とは相性がいいという人材を狙わないと。

安田

凸凹の相性がいい人材ですよね。バランスよく全てが整っている人材を狙うと採用力のある会社に勝てない。

久野

そうなんですよ。

安田

ちなみに久野さんは「入社してすぐに辞めた人材」は採用しませんか?

久野

経営者はみんな採用しないんじゃないですかね。そもそも本人が履歴書に書かないですよ。

安田

書かないですか?

久野

1年ぐらい働いてないと普通書かないです。1日しか働いてなければ普通は書かない。1ヶ月でも書かないと思います。

安田

「労働条件が明らかに違いました」というのは本人のせいでもない気がしますけど。意外といい人材がいるかもしれませんよ。

久野

よほど何か光るものがなければ私は採らないですね。

安田

厳しい(笑)でも経営者の感覚で言うとそうでしょうね。入ってすぐに辞めるような人はいらないと。

久野

はい。辞める側にもリスクはあると分かって欲しいです。

安田

会社はマイナスポイントもしっかり開示したほうがいいし、働く側も「嫌なら辞めればいい」という安易な気持ちで就職しないほうがいいと。

久野

そういうことですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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