この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第5回 大人と子どもの境目とは？
第5回 大人と子どもの境目とは？
今日は「大人と子どもの境目」について話してみたいんですけど。
なるほど。大人の定義、子どもの定義、ということですね。
ええ。例えばサザエさんで言うと、波平さんは確実に大人ですよね。マスオさんなんかも大人として描かれている。
そうですね。カツオくんやタラちゃんは子ども。サザエさんはどうなんでしょうね。
大人だと思って見てましたけど、でもサザエさんって確か20代前半くらいなんですよ。
ははあ、そんなに若いんですか。20代前半にしては大人っぽいですよね。
そうなんです。波平さんは50代らしいですけど、完全にお爺ちゃんとして描かれている。つまり昔に比べると今って「大人になる年齢が上昇している」感じがするんですよ。
確かに。今の50代なんてまだ現役バリバリの世代ですもんね。
ええ。最近は「30歳過ぎても大人になった気がしません」なんて人がけっこういる。かく言う私自身もそうなんですけど。
え？ 今でも自分は子どもだと思ってらっしゃるんですか？
いや、今はさすがに子どもだとは思わないですけど（笑）。あらためて考えると、人はいつから大人になるのかなと。鈴木さんはどうでしたか？
どうかなあ。やっぱり子どもが生まれたときに「大人だ」と感じたかもしれません。意識の中で、「大人にならねば」と思ったというか。
なるほど。でもそれって「大人」というより「親」なんじゃないですか？子どもがいても子供っぽい人もいるでしょう。暴力振るっちゃう人とか。
野球部の監督とかも、昔はバンバンに部員を殴ったりしてましたもんね。試合に勝つためだとはいえ。
そうそう。駄目だとわかっているのにそれを止められないっていうのは、ある意味「子ども」ってことなのかもしれない。
そう考えると、「100%完全に大人」って人はなかなかいないのかもしれませんね。逆に「子どもの定義」はどうなんですか？
昔、ニートをたくさん集めて「ニート株式会社」って会社を作ったんです。それで会議をしていると、彼らが私に言うわけです。「そんなの大人の勝手な言い分じゃないか！」って（笑）。
なるほど（笑）。自分たちは子どもの側にいると考えているわけだ。大人vs自分たち、というような。
でも、年齢的にはもう大人なんですよ？30代や、中には40代の人が「それは大人の理屈だ！」って怒ってる（笑）。
おもしろいなあ（笑）。世の中の体制を作っているのが大人で、それに翻弄されているのが子どもって図式で見てるんでしょうね。
そうそう。まあ、さすがに自分たちを子どもだとは思ってないかもしれませんが、一方で大人だとも思っていないというか。
なるほどねえ。まあ、大人になるとワガママも言えなくなりますからね。周りの空気を読んで、言いたいけど言わないほうが場が収まるな、なんて考えたり。
確かに日本の大人ってそうですよね。でも世界ではむしろ自己主張できないと大人として認めてもらえませんよ。
ああ、アメリカなんて裁判社会ですもんね。法廷でバチバチに喧嘩して、法律で決めてもらって、それでスッキリという。それで本当にスッキリするんかなあ、とは思うんだけど（笑）。
アメリカに行って驚いたのは、高校を卒業したらもう大人扱いなんですよね。大学の学費も自分で稼いで行っている子が多い。
もう大人なんだから自分のことは自分でやれ、ってことですね。要するに「自立させるための教育」があると。
そうそう。日本でも、子どもが「これが欲しい！あれがやりたい！」って言うと、「自分で稼げるようになってから言いなさい」みたいに怒られるじゃないですか。
確かに。そういう意味では「自分で自分の生活を面倒見れるようになったら大人」ってことなのかな。……でも、この前の話じゃないですけど、最近は子どもでも稼げますからねえ。
そうなんですよ。子どもでも稼げるし、逆に会社をクビになったら稼げないって大人もたくさんいるでしょう？
国や会社から放り出されたら生きていけないと。それはある意味で「自立できていない」ってことなのかもしれません。
そうなんですよ。まあ、かと言ってジャングルで生きていく必要もないわけで、社会のルールの中で周りと共存しながら、孤独にもキッチリ耐えつつ生きていくのが「大人」なのかもしれません。
そうですねえ。僕も最近よく会社で「自分の機嫌は自分でとろうね」って言うんですよ。自分以外に自分の機嫌をとってくれる人なんていないぞと。
なるほど。自分で機嫌をとれる人が大人、ということですね。確かに子どもは機嫌悪かったら泣いたり喚いたりしますからね。
そうそう。だからイライラして部員を殴っちゃう監督は、やっぱり大人じゃないんですよ。
そうなりますね。では大人と子どもの境目は、「自分で機嫌をとれるかどうか」。これを読んでいる方も、胸に手を当てて考えてもらえればと思います（笑）。
対談している二人
安田 佳生（やすだ よしお）
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク（BFI）代表。
