『会社員も終わりから考える』終わりから考える重要性【2/4】

私(安田佳生)が終わりを意識し始めたのは、まさに終わった時。すなわち会社が潰れた時です。終わると思っていなかったことが終わる。そのとき痛感したのは「終わりを想定していなかった愚かさ」です。会社にも、人生にも、あらゆるものに終わりはあります。終わることが問題なのではなく、自覚がないままに終わっていくことが問題なのです。この対談は、ご葬儀というまさに「人生の終わり」を仕事にしている鈴木社長に、私の率直な疑問をぶつけたものです。社長の終わり、社員の終わり、夫婦や友達の終わり、そして人生の終わりについて。終わりから考えた二人の対談をぜひご一読ください。

『会社員も終わりから考える』

安田
安田
前回は社長の終わりについてお話しました。
鈴木
鈴木

はい。

安田
安田
今日は社員さんの終わりについて。ちょっと対談してみたいと思います。
鈴木
鈴木
社員の終わりですか。
安田
安田
はい。じつは私、商売を学ぶ学校をやってまして。日本には商売を学ぶ場所がないじゃないですか。
鈴木
鈴木

昔は親や先輩が教えてくれたんでしょうけどね。

安田
安田

そうなんですよ。じつは昭和30年代まで、日本は自営業者のほうが圧倒的に多かったんですよ。

鈴木
鈴木
へぇ~
安田
安田

会社員がこんなに多くなったのって、つい最近なんです。

鈴木
鈴木

大量生産の賜物なんですかね。

安田
安田

まさにそうです。

鈴木
鈴木
工場に人を集めて、作ったら売れる時代でしたから。
安田
安田
会社に言われた通り仕事をしてれば、どんどん豊かになって、一戸建ての家が持てた。

鈴木
鈴木

ということは会社員が当たり前になって、まだ60年ぐらい?

安田
安田

そうなんです。その間に親子3代会社員という人も増えて。今や「ちゃんと働く」=「正社員になる」と思ってる人が多いです。

鈴木
鈴木

言われてみればそうですね。

安田
安田

「就職する」=「まともな社会人になる」という図式で。就職しないと「会社にも入らないで、なにやってんの」ってことになります。

鈴木
鈴木
考えてみればおかしな話ですよね。
安田
安田
金融機関の評価も、社会的な評価も、有名企業の正社員であれば高いわけです。
鈴木
鈴木
それは人の評価っていうより収入に対する評価でしょうね。
安田
安田
そうですね。だけど大手も今やどんどんリストラしてまして。
鈴木
鈴木

雇いきれないんでしょう。人間の寿命も長くなったし。

安田
安田

そうなんですよ。「70歳まで働く」っていうのが当たり前になってきて。

鈴木
鈴木

採用する時にはそこまで想定してないでしょうし。

安田
安田

人間の寿命と反比例して、会社や事業の寿命がどんどん短くなってます。

鈴木
鈴木

昔は「会社の寿命は30年」って言われてましたよね。

安田
安田

言われてましたね。今は同じ商品を、同じお客さんに、同じ売り方してると、4〜5年で終わっちゃう。

鈴木
鈴木

事業モデルを変えていかないと保たないですよ。うちの会社も私の代で相当変わりましたもん。

安田
安田
家電屋さんが家電を作らなくなったり。

鈴木
鈴木

カメラ屋さんが家電を売る時代ですから。

安田
安田

いずれトヨタも車をつくらなくなるかもしれないです。

鈴木
鈴木
でしょうね、たぶん。

安田
安田

そうなってくると、事業の変化とともに必要な人材や能力も、ぜんぶ変わるわけです。人間が働く期間のほうが事業の賞味期限より長いから。

鈴木
鈴木
会社の寿命って「長けりゃ長いほどいい」みたいな常識でしたけど。変わりつつあるんでしょうね。
安田
安田

そうですね。親子3代「ひとつの会社で勤め上げた」って美徳でしたもんね。今は自分がひとつの会社で食べていくだけで大変です。

鈴木
鈴木
転職も当たり前になってきましたね。
安田
安田
今のスキルが他の会社で使えりゃいいんですけど。通用しなかったりするんですよ。とくに元々優秀なはずの大企業の人たちが。
鈴木
鈴木

うん。確かに使えない人いますね。

安田
安田

そっちの方が多いと思います。50〜60代でリストラされたら大変ですよ。1,000万以上もらってた人が300〜400万で働く気にならないだろうし。

鈴木
鈴木

それが自分の相場ということじゃないですか。

安田
安田

経営者から見たら「500万払えるようなスキルじゃないだろ」って人が、たくさんいますよね。

鈴木
鈴木
その程度だったら「パートさんでもできるよ」って人もいます。
安田
安田
いますよね。自分のイメージと相場が合ってない人。
鈴木
鈴木
今だったら外注先もいっぱいあるわけですし。
安田
安田
そうなんですよ。だから50歳でいきなり「リストラだ」って言われても困るわけです。ちゃんと自分で終わりを決めておくことが大事。
鈴木
鈴木
それは難しいでしょうね。みんな安定を求めて正社員になるんでしょうし。
安田
安田
でも70歳まで働くとしたら、47〜8歳でようやく折り返し地点ですよ。
鈴木
鈴木
言われてみればそうですね。昔だったら引退をそろそろ考える頃ですけど。
安田
安田

今は長いんですよ。50歳手前でようやく折り返し。そこから同じスキルであと20年食えるかっていうと、これが厳しい。

鈴木
鈴木
同じ年収は絶対無理でしょうね。
安田
安田
無理です。だけど稼がなくちゃいけない。国にも余裕ないですし。
鈴木
鈴木
国に養ってもらうどころか、どんどん税金が増えていくから。
安田
安田
そう考えると、50歳でゼロからスタートするのは無理があります。
鈴木
鈴木
もっと早くから、自分のフィールド探さなあかんですよね。
安田
安田
そうなんです。ひとつの会社に10年以上いるっていうのは、働く人にとっても大きなリスクなんですよ。
鈴木
鈴木
10年もいたら新しいことはやらなくなりますよ。
安田
安田
前回の社長の話と同じで、会社員も「10年限定」と決めてれば「どういうスキルをつけないといけないのか」って真剣に考えると思う。
鈴木
鈴木
ああ、なるほど。長くずっとおれば安心とか安定っていう時代はもう終わりだと。
安田
安田

私はそう思います。

鈴木
鈴木
今の安定を自分で勝ち取ったのか、与えられてるのかの違いもありますよね。
安田
安田
自分で勝ち取れる人なら、ひとつの会社にしがみついたりしないです。
鈴木
鈴木
今は会社自体が続くかどうかという時代だし。
安田
安田

あのシャープでさえ台湾企業に売られてしまう時代で。東芝もしんどそうだし。安定してる会社がずっと安定し続ける保証なんてないです。

鈴木
鈴木
ないですね。
安田
安田

仮に会社が続いていたとしても、自分の居場所があり続けるかどうかは別だし。

鈴木
鈴木

日本の場合は労働法で守られてますけどね。

安田
安田
理論的に会社にしがみつくことはできます。どんなに罵られても我慢し続けて。だけどそれも大変ですよ。
鈴木
鈴木
そこからがまた長いですもんね。
安田
安田
長いです。下手したら罵られ続けて30年とか。
鈴木
鈴木

しがみつくタイプの人は、そこからのほうが長くなりそう。やることがなかったら、会社にいるのもつらいし。

安田
安田
つらいですよ。毎日ずっとですよ。
鈴木
鈴木
人の役に立ってないって実感してたら、すごく生きてるのがつらいでしょうね。
安田
安田

そもそも会社って、誰かの役に立つからお金もらえるわけじゃないですか。

鈴木
鈴木
そうですね。
安田
安田
会社には社会の中でなんらかの役割がある。社員も本来ならその会社の中で役割があるはずで。
鈴木
鈴木
大きい会社だと実感しにくいでしょう。
安田
安田
仕事がものすごく細分化されてますから。だから「その会社では役に立つけど、他の会社に行ったら役に立たない」という人が生まれちゃう。
鈴木
鈴木

業界によっても違うでしょうけどね。大きい会社に入ると、そういうことが起こりやすいでしょうね。

安田
安田
お客さんの役に立てなくても、上司に気に入られたら出世できたりするわけで。
鈴木
鈴木
そんな世界で何十年も過ごして、「これが当たり前だ」と思ったら、恐ろしいことになりますね。
安田
安田
恐ろしいことなんですよ。
鈴木
鈴木
僕だったらどうするかな。
安田
安田

たとえば今、家も財産も全部なくして、とりあえず食べていくために働かなくちゃいけないとしたら。何します?

鈴木
鈴木

現金もなし?

安田
安田

現金は100万ぐらい。そうなったらどうしますか。自分でもう1回事業を起こす?

鈴木
鈴木

いまだったら不動産事業をやると思います。

安田
安田

就職はしないですか。

鈴木
鈴木

えっ?就職。うーん、ちょっと足かけで、バイトぐらいするかもしれないけど。

安田
安田

なぜ就職しないんですか。

鈴木
鈴木

会社員じゃたぶん稼げないだろうってのもあるし。「こうやってください」って言われても、「えっ、なんでこんなことやるの」と思ってしまう。

安田
安田

そうですよね。私は創業者だったので、会社がつぶれても「べつに食べていけるだろ」と思ってたんですよ。

鈴木
鈴木

安田さんは余裕で食べていけるでしょ。

安田
安田

じつはそんなことないんですよ。20年も社長をやりつづけると、社員がいないと何も出来なくなってしまう。ひとりじゃ稼げないという現実にぶち当たりました。

鈴木
鈴木

ああ。だから「社長も副業をやった方がいい」っていう意見なんですね。

安田
安田

そうなんです。

対談相手:鈴木 哲馬
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役
昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

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