第2回 社長は生活レベルを上げるな

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第2回 社長は生活レベルを上げるな

安田

前回は、従業員満足度研究所の代表の藤原さんが、従業員満足度をないがしろにしたせいで大失敗した、という話を聞きました(笑)。


藤原

20年以上前の話だとしても、恥ずかしいです(笑)。

安田

ともあれ、その失敗を経て心を入れ替えた藤原さんは、従業員満足度についての知見やノウハウを伝えていくために、その名も「従業員満足度研究所株式会社」という会社を立ち上げた。


藤原

厳密に言うと、会社設立はもう少し後なんです。当初は周囲の経営者の相談に乗っているだけだったんですよ。

安田

相談というと、組織構築とか会社経営についての?


藤原

仰るとおりです。経営者仲間と飲んでいると「なんで最近、藤原さんところ定着率が良くなったの?」とか「理念作ったことで本当に効果あったの?」なんて聞かれるようになって。

安田

なるほどなるほど。確かに、従業員に次々辞められて一人ぼっちだった藤原さんが、どんどんいい組織を作っていくわけですもんね。そりゃ気になりますよ。


藤原

だからまぁ、偉そうに言うわけではないけれど、「うちはこんなことをやってみたんだよ」「理念はこんな風に作るといいと思うよ」なんてアドバイスをしたりして、それがだんだんとサービス化していったというか。

安田

ニーズは多そうですからね。ともあれ理念やクレドを決めただけでうまくいくなら、誰も苦労はしないわけですよ。私自身そっちのプロでもありますから、理念やクレドだけでうまくいったとは正直思えなくて。


藤原

ひとつあるとすれば、「どこにも外注せず、自分自身で苦しみながら実践した」ということかもしれません。セミナーに参加したり本で知識を得たりはしたけれど、それをそのまま自社にスライドしたわけじゃない。

安田

なるほど。「本にこう書いてあったから真似しよう」じゃなく、自社用にちゃんとカスタマイズした上で実践していった。しかも、プロの手を借りず、自分自身で。


藤原

仰るとおりです。もっとも、そんなスムーズにいったわけじゃありませんよ。「利益至上主義じゃなく理念経営で行く」と最初に伝えた時、社員たちは「何を言ってんだこの人」という反応でしたし。

安田

まぁそうでしょうね。「口では綺麗事を言って、結局また死ぬほど働かせるんでしょ」って思いますよ(笑)。


藤原

そうですよね(笑)。そういう意味では、ある意味で社員たちの顔色を見ながら「伝え方を変えてみようか」なんて工夫していましたね。とにかく同じ失敗を繰り返したくなかったので、必死でしたよ。

安田

でも具体的には何をどう変えていったんですか? 先ほども言ったように、ただ理念やクレドを作っただけでは組織は変わらないですよね。


藤原

そうですね。端的に言えば、私自身が本気で組織改革をするんだ、本気で従業員満足度を上げるんだと覚悟を決めたこと。その本気度が皆に伝わっていったということだと思います。

安田

うーん、でも、「従業員満足度を重視します」なんて、100社あれば100社言いますよ。その本気度を現場にどう伝えていったのかに興味があります。


藤原

ひとつ思いつくのは、私が生活レベルを上げなかったことかもしれません。小さな会社だと見てればわかるじゃないですか。「あ、社長、またスーツ買ったな」とか「ゴルフクラブが新しくなったな」とか。

安田

社用車はボロボロなのに、社長はベンツの新車で出社してくるとかね(笑)。


藤原

そうそう(笑)。でも私はそういうことはしませんでした。軽自動車に乗って、安い県営住宅に住みながら経営してましたから。

安田

なるほど、それは確かに説得力があるかもしれない。実際社員さんに「君たちよりいい暮らしはしない!」と宣言したりもしたんですか?


藤原

宣言したわけじゃないですけど、私自身が「自分の豊かさより、まずは従業員満足度だ」と本気で思っていましたから。仮に会社が儲かったとしても、先に自分の利益として取っちゃうんじゃなくて、従業員を満足させた後で取らないとダメだと。

安田

なるほど、わかりやすい。つまり「順番」の話なんですね。必ずしも従業員よりボロい家に住み続けるということじゃなく、まず社員の豊かさを先に実現すると。


藤原

そういうことです。社員たちは私の生活レベルを目の当たりにして、「あ、この人本気なんだな」と理解してくれたのかもしれません。

安田

なるほど。理念やクレドを作って終わりにしたわけじゃなく、態度や行動、そして生活レベルを見せることで本気度を伝えた。そしてそれができたのは、藤原さん自身が実際に本気だったから、ということなんですね。


藤原

そうですね。そこは揺るぎませんでした。

安田

なるほど。少しずつ藤原さんのことがわかってきました。引き続きその頃の話を聞かせてください。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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