第191回「家の情報がない不動産サイトという小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「家の情報がない不動産サイトという小さなブルーオーシャン」


少子高齢化や人口減少などにより増え続けている空き家。
2033年頃には空き家数2,150万戸、なんと全住宅の3戸に1戸が空き家になってしまうという民間予測があります。
2040年頃になると空き家率は40%を超えると予測されていて、深刻な社会問題となっています。
では、この問題に対して当の所有者側はどう考えているのでしょうか?
国土交通省の「空き地等に関する所有者アンケート」によると、売却・賃貸等のために情報を広く一般に提供してもよい所有者は、実は15.6%のみ。
私からすれば空き家として所有しているよりも売却をするとか、あるいは貸すことで家賃収入を得たいと考えると思いそうですが…。そうでもないということに驚きです。
ちなみに、情報公開はしたくないものの、まちづくりのための利活用であれば検討するという所有者は70%以上というデータはあるそうです。

一般の人には売却したり貸したりはしたくないけど、地域や国などの利用であれば検討するというのが所有者側の心理なんですね。

そんな所有者心理からサービスを展開している会社があります。

三重県桑名市にある株式会社On-Co
2019年3月創業のベンチャー企業で、古民家のリノベーションやイベント企画などを手がけている会社です。

「誰にでも貸したいわけではない」所有者の想い。従来の仕組みを逆にする。

この株式会社On-Coが手掛けているサービスが「さかさま不動産」

物件の情報はひとつも載っていません。
代わりに載っているのは、
●気軽に演劇ができる小さな劇場をつくりたい
●保護猫がいるシェアハウスをつくりたい
●やばいアートなコインランドリーをつくりたい
●名古屋市でシーシャカフェを創りたい
などなど。
物件を探す人とその人の「かなえたい夢」が載っているのです。
どんな人が、どんな考えで、どんな物件を借りたいか。借り手側の「想い」が写真付きで公開されているのです。
空き家所有者は借り手側の自己紹介を見て、自分の物件を貸したい人を選びだします。

さかさま不動産は、所有者側の物件情報を伝えるのではなく、借り手側の情報を開示してマッチングをしているというわけです。
従来の不動産流通の仕組みを逆にすることで、「借り手を選びたい」「家情報を公開せず借り手を探したい」と考える所有者や、地域との相性を踏まえた移住者誘致に繋げたい人などに有効なサービスなのです。

物件オーナーというのは、ただ物件を貸して収入を得たいというだけではなく、実は「面白いことをしたい」「地域活性に繋げたい」「若者の挑戦を応援したい」という人が多いらしいのです。
ところが、従来の不動産の仲介の仕組みは、「土地活用」「空き家活用」による収入を得るための仕組みでしかありません。つまり、不動産仲介会社の考えるWin−Winの状態は、メリット、デメリットの世界ということです。

しかし、さかさま不動産というサービスは、単に空き家を埋める事、収益のみを得ることといったメリット、デメリットだけではなく、所有者側の想い、借り手の想いを具現化した「ストーリー」を大事にしているように思えます。

損得だけではビジネスが成り立たない時代になっている気がします。安いから売れる、高いから売れないではなく、売る側の顔や想い、買う側の顔や想いがフィットした時に、始めてビジネスになるのかもしれませんね。

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株式会社On-Co
本社:三重県桑名市
HP:https://on-co.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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