人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第51回 教えるべきか、任せるべきか? 人材育成で大切な見極め力

藤原さんが取り組んでいるESの向上にも関係があると思うんですが、「人を育てる」場面って意外と多いですよね。会社でも社員が入ったら育成しないといけないし、親になれば子どもを育てないといけない。その中で、「どこまでを教えてどこからを任せるか」ってけっこう悩むポイントだなと思って。

私が最近思うのは、その人の「得意なこと」と「苦手なこと」でアプローチを変えるのがいいんじゃないかなと。つまり「得意なこと」はある程度丸投げでもよくて、「苦手なこと」は手取り足取りしっかり教えるという。

そうそう。もちろん既存のやり方がある場合はそのやり方も教えますけど、「もっとやりやすい方法があればそっちでいいよ」というスタンスです。その代わり、目的や目指すところは明確に伝える。ゴールだけ指定して、そこまでの道のりは自由にやってもらう感じですかね。

そうですね。ある程度レールが敷いてある方がやりやすいのか、レールなんてない方が自由にのびのびできていいのかは、個別に考えているかなぁ。でも入社後に細かく設定すると言うより、採用の時点でどちらのタイプか意識しているのかもしれません。

ははぁ、なるほど。そういえば、有名なテニスのコーチもそんなことを言ってました。まず基礎を教えてから打たせるのがいいか、いきなり自由に打たせるのがいいか、どちらが伸びるのかを最初に見分けるんだそうです。

それがですね、私自身はどちらもあるんです。例えば新しいソフトをインストールするような苦手なことは手順を細かく教えてほしいんですが、その先の「インストールしたソフトをどう活かすか」は、自分に考えさせてほしいという(笑)。

ああ、なるほど(笑)。多分安田さんの仰る「苦手なこと」って、「興味がないこと」と同義なんですよね。インストール方法には別に興味がないから教えて欲しい、でもそれを使ってビジネスをすることには興味があるから自分でやりたいと。

まさにそういうことです(笑)。そういう意味ではいわゆる「学校の勉強」にも興味はなくて。だからすごく苦手だったんですが、勉強の得意な兄にやり方を教えてもらって、社会だけは100点を取れるようになったんです。

教科書のテストに出そうなところにマーカーで線を引く。そしてそれをひたすら覚えるという。でもどの部分がテストに出るかなんて正確にはわからないじゃないですか。だから結局テキストはマーカーだらけで(笑)。

そうですよ。それで100点をもぎとりました(笑)。もっとも、覚えることが多すぎて他の科目をやる時間はなくて、社会以外は散々でしたけど(笑)。ともあれ、「手順を教えるにしてもその中身がすごく大事だな」と身をもって感じまして。

そうなんですよ。まぁ、教えてもらえば真似できるのか、という問題はありますけどね。京大卒の知り合いに聞いたら、その人は子どもの頃から「この先生の性格なら、テストでどういう問題を作るだろうか」と考えていたらしくて。そんな視点でテスト勉強していた奴がいたのかと(笑)。

確かに。ゲームのキャラクターみたいにパッと見てスペックがわかるわけじゃないですからね。把握するための努力が必要なんだと思います。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。