以前、この場で
「人間の寿命は基本50年くらいではないか」
「それが生物としての<身の丈>ではないか」
と述べさせていただいたことがございます。
どうやら、そうでもなかったようです。
人間の体が生物的なピークを迎えるのは平均的に20代の半ばであり、そこを頂点に放物線上に少しずつ落ちてきて、50で終点に至る。
他人様を巻きこむわけではありませんが、この考えはそれなりに誰でも行きあたることの多い発想かと思います。実際、40代後半くらいから人間の体は目に見えて老化、劣化が顕在化するものですし、50代になってピカピカのスポーツカーのようなコンディションを自認している人は皆無でしょう。
ただ、50歳になっただけでは社会からはまだ「老人のはじまり」としかみなされません。そこから数十年続くことは可能性というより前提として語られます。
ただ、50歳寿命説からみた言い分はまだ、存在します。
医療と体のメンテナンスが発達した現代社会だからこそ、老後という「延長戦」がみんなのあたりまえになっているのだと。
たしかに社会の変動に負けず劣らず、人間の年代的な活動領域は大幅に若返っています。50代半ばの男性であれば、国民的有名アニメのキャラクターを思い出して
「わたしは波平とタメ年なのか……」
と複雑な思いを抱いたことがある方もいらっしゃることでしょう。
しかし実際のところ、時代によらず人がいつまで生きるかというのは一言でいって「人それぞれ」です。江戸時代に90歳まで生きた人はレアではありますが、歴史的な例外というわけではありません。
生きるのに必要な体のパーツが十分に動けば、現代医療がなくても長生きすることは可能です。
そして、老化が万人に訪れることと、それが長生きを妨げることはどのように関連するのかといえば、必ずしも関連しない、というのが現時点の科学的事実に近いようです。
ようするに、4、50歳を過ぎた体は保証期間の過ぎた電化製品のようなものなのです。
急に壊れるかもしれないし、もっと保つかもしれない。
自分の分身を残すために体にあれこれ指示を出してきた遺伝子は、その時期が過ぎてくると店じまいに方向転換するのかと思いきや、
「劣化はあるけど、べつに積極的に終わらそうともしない」
程度の扱いに変えてくるようです。
正直きれいに終わった方が美しいかもしれませんが、それですらないのでした。
















