変と不変の取説 第93回「誰が殺してしまったのか」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第93回「誰が殺してしまったのか」

前回、第92回は「自粛はどこに向かうのか」

安田

テレビを見てると「コロナ怖い」一色ですけど。ネットでは意見が2つに分かれてまして。

そうですね。

安田

「普通の風邪でしょ」みたいな人もいて。専門家の意見ですら分かれてます。泉さんはどういうご意見なんですか?

私は「普通の風邪だけど、ひいてしまった人が重症になることもある」という、両極を持った特殊な疫病かなと思ってます。

安田

たとえばインフルエンザで死ぬ人もいて「それに比べたらぜんぜん少ないじゃん」とも言われてます。餅をのどに詰まらせて死ぬ人のほうが多いとか。

コロナって重症化したときに、すごい高度医療をしないといけないじゃないですか。

安田

そうですね。

日本には高度医療のキャパがないし、ステルス性が高いので、感染してしまうと隔離するのにすごいコストがかかる。なので社会的には結構インパクトのある疫病なんですよ。

安田

なるほど。

ただし、社会的インパクトはあるんですけど、マスコミと医療が発達してない時代であれば、コロナは大した病気じゃない。

安田

マスコミがなくても一部の人が重症化して死んじゃうのは同じですよね。

そこは同じですね。

安田

それでも大したことはないってことですか?

大したことないと思います。スペイン風邪とかコレラとかペストみたいに、人がどんどん死ぬ病気ではないので。

安田

じゃあ、重症化する人はかわいそうだけど、そんなに怖がるほどのものでもないと。

そうです。じっさい重症化している方もいますので、こういう話をすると「なんと不謹慎な」ってことになる。だから言えないんですけど。

安田

まあそうなりますよね。

はい。

安田

「自分の身近な人がかかっても、平気なのか!」みたいな。

はい。だから、みんなタブーというか、思ってても言えないってことです。

安田

識者の方は言い始めてますよ。「重症化する率とか死亡率がそこまで高くないので、これは普通に生活したほうがいいよ」って。

そういう意見を言う人が増えてきましたね。

安田

はい。だけど、やっぱり一方では「いやいや、とんでもない」っていう勢力が相変わらず強くて。どうなんですかね、このまま2つに分かれていくんですか?

「危ない」と言う人は「第2波のほうがもっとひどいから、今からもっと自粛やれ」みたいに言ってますね。

安田

全体的にはそちらの意見の方が圧倒的に多い気がします。

そっちのほうが無難なので、そっちに偏るんじゃないですか。

安田

「何よりも命が大事」という意見がすぐ出ます。命が大事ってのはおっしゃるとおりなんですけど。それだったら高齢者の免許を75歳で全部取り上げたらいいのにと思う。

正論ですけどすごい反感を買うでしょうね。

安田

「どうやって生活するんだ!」みたいな。でもその理屈でいったら、自粛を要請されてる飲食店も同じですよ。「東京に行くな」「東京から出るな」とまで言われてますし。

日本経済の中心はぜんぶ東京なので、東京の経済を止めると日本全体が沈没します。

安田

そうですよね。

でもそこまで考えてるかっていうと、考えてないと思います。

安田

私も電車やレベーターに乗るときはマスクしますけど。外を歩くときには人混み以外はマスクをしません。

熱中症も怖いですからね。

安田

それもありますけど、そもそも必要ないと思ってます。

人がいない屋外でマスクしても意味ないですよ。

安田

ところがですね、外を歩いてる人の9割以上がマスクしてるんですよ。もうほぼ全員。それが怖いんです。マスクしてない人を見るとホッとします。

わかります(笑)

安田

泉さんも怖いと思いますか?

私は「ああ、日本人っぽいな」って思いながら見てます。

安田

それが日本のよさでもあるんでしょうけど。規律正しいというか。でもさすがに度を超えてますよ。地方の観光業なんて大変ですよ。飲食業もギリギリの店がいっぱいありますし。

このままいけば失業率が一気に上がるでしょうね。

安田

そうなりますよ。じっさい給料が止まったら「こんなことやってる場合か」ってなるんでしょうけど。

給付金の財源もいずれは尽きてきますから。

安田

「店をあけるな」「旅行をするな」って、みんな人ごとみたいに言いますけど。明日は我が身ですよ。

まだ、そこまでの危機が来てないからですね。

安田

でも、そこまでの危機が来ちゃったら、もう取り返しつかなくないですか?

危機を体験したことがある人とない人で、違いが出てしまうんですよ。

安田

なるほど。

1回でも溺れたことがある人は、溺れないようにライフジャケットとか泳ぐ練習とか、いろいろやると思うんですけど。溺れたことない人は「まあ大丈夫じゃないの、波が来ても」みたいな。

安田

そうかもしれませんね。みんな他人事ですもん。

はい。本当の意味での危機体験がないんですよ。

安田

日本人の大半が“ゆでガエル”になってるわけですね。「なんだかんだ言って大丈夫だろう」みたいな。

ですね。

安田

「老後2,000万ないと生活できない」って発表しただけで怒るような国民ですから。寿命が100歳まで延びたら「働かなきゃいけない」に決まってるんですけど。

そういうふうに洗脳されてしまったんですよ。飼いならされた。

安田

飼いならされてるんですよね、やっぱり。

はい。

安田

飼いならしてしまったがゆえに、恐ろしいことになっちゃいましたね。「逃げろ!」って言ってるのにぜんぜん逃げないみたいな。

家で飼われた犬や猫になっちゃったので。家がなくなって「野生に戻れ」と言われても「生き残れるか?」ってことですね。

安田

まあ、野生とまでは言いませんけど。国や会社に頼れない時代になっていくことは確かですよ。

同感ですね。

安田

だけど、じっさいに大きな危機を経験しないと、洗脳は解けないってことですか?

はい。「陰極まれば」ですね。

安田

やっぱりそこまで極めないとだめですか?

私は逆に「いい経験かな」と思うんですけど。

安田

このコロナさえも「陰極まるためのいい機会」だと。

はい。いかにそれを学習教材にするか。

安田

そこまでいかないと、ここまで強烈に飼いならされてる私たちは変われない?

そう思います。

安田

逆にそこまでいっちゃったら、変わるんですかね。

変わると思います。遺伝子のスイッチがオンになる。

安田

戦後の焼け野原だったのが、つい数十年前ですよ。たった50年でこんなに人間の意識って変わるもんなんですね。

教育って本当に人間を殺せるんですよ。すごい教育をしてしまいました。

安田

恐ろしいことですね。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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