お医者さんは、なやんでる。 第40回 「医者が尊敬されなくなった時代」

第40回 「医者が尊敬されなくなった時代」

お医者さん
お医者さん
必死にがんばって勉強して、やっと医者になることができた。だがどうだ、実際になってみたら、医療費削減で売上はどんどん下がるばかりで、思ったほど稼げやしない。
お医者さん
お医者さん
……いや、それはまだいい。私がどうしても気になるのは、医者という職業が昔ほど尊敬されていないということだ。なぜこうなってしまったのか…。
確かに、最近は患者さんのほうが立場が上ですもんね。診察の前にインターネットで症状を調べてきて、「この薬を出してください」なんて指示する人までいる始末だ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ……本当にそういう患者さんが増えたよね。医者は「先生」どころか、ドラッグストアの店員のような扱いだ。……って、あなたは一体?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
最近は「医療費削減に伴う売上減」が課題としてあがりがちですが、実のところ「医者が尊敬されなくなった」ということに悩んでいるお医者さんも、ものすごく多いんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだろうね。「人の役に立ちたい」「人から感謝されたい」というのが結局、医者を目指す一番のモチベーションだったわけでさ。それが揺らいでしまうと、やっぱり続けるのがしんどくなってくるっていうか。
ええ、わかります。かといって、「昔みたいに医者を尊敬しろ!」と強制するわけにもいきませんし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そんな惨めなことできるわけないだろう。仮にできたとして、患者さんたちが「わかりました!尊敬します!」となるわけでもないし。……はあ、何かできることはないんだろうか。
ありますよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……え? あるの?
はい。You Tubeでの情報発信です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
…………真面目に聞こうとした私がバカだったよ。なんで医者の私がYou Tubeなんかしなきゃならないんだ。
私は大真面目ですよ。医者が尊敬されなくなった理由を考えれば、それがわかると思いますが。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
尊敬されなくなった理由……? 一体何だと言うんだ?
端的に言えば、さっきも少し出ましたが、インターネットの普及ですよ。インターネットにより世の中に流通する情報の量が爆発的に増え、さらに、スマホが登場したことで誰でもいつでも情報を得られるようになった。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふむ…まあ、確かにそうとも言える。
かつて医者が尊敬されていたのは、患者が持っていない情報を持っていたからです。わからないから、知らないから、医者を頼るしかなかった。自然、医者は大切にされる。でも、これだけ情報が行き渡ってしまったら、どうです?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
まあ、言いたいことはわかるよ。だが話は袋小路だ。行き渡った情報を奪い取るわけにもいかないのだし、結局解決策はないということじゃないか。
でも先生、患者さんが事前にネットで調べてきた情報が間違っているケースもあるでしょう? 症状が似ていて間違えやすい病気とかもあるでしょうし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
! ああ、そうなんだよ。「こういう症状だからこの病気に違いありません」と来るんだけど、素人がやりがちな勘違いだったりするんだよね。
そこです。つまり、今は情報が「多すぎる」んですよ。中には間違った情報もありますし、読み手に知識がなければ勘違いも起こる。だから先生が、You Tubeで正しい情報を発信するんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
正しい情報?
先生が得意としている治療についてや、病院の方針などを、自分の言葉で伝えていくということです。「こういう勘違いが起こりやすいから気をつけましょう」ということでもいい。あるいは、信頼できるメディアを先生が教えてあげたり。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど……つまり、プロである私が情報のフィルターになるということか。
仰るとおりです! そうすれば先生への信頼が高まっていきますし、結果、尊敬にもつながるのではないでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……そういうことか。You Tubeというだけでなんとなく敬遠してしまっていたけど、使い方次第ではとてもよいメディアになるかもしれないね。
ええ。病院でYou Tubeチャンネルを持つケースも増えているようですし、すぐにでも始めたほうがいいと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
よし、わかった。具体的に検討したいから、もう少し詳しい相談をしていいかな。
もちろんです!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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