「医者の採用、本当に必要ですか」〜お医者さんは、なやんでる。 第68回〜

第68回 「医者の採用、本当に必要ですか」

お医者さん
お医者さん
うん、今月の売上もなかなかいい感じだ。早いタイミングでシステム化に取り組んだのがよかったんだろう。
お医者さん
お医者さん
1人で始めた医院だったが、気づけば医師5名体制だ。この波に乗ってさらに数名採用してみるかな。
さらに医師を増やすということですか? それはやめた方がいい気がしますけど。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
む? やめた方がいいとはどういうことだ。というかあんたは何者だ。いきなり出てきて。
初めまして、ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ドクターアバター? なんだそれは。いや、それより質問に答えたまえ。なぜやめた方がいいんだ?
そうですね。その理由を話す前に確認しておきたいのですが、先ほど先生は最初は一人で始めたと仰ってましたよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ん? ああ、そうだよ。
そして早くにシステム化を行い、利益が出るようになって徐々にスタッフを増やしていった。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
その通り。そして今や5名体制にまで大きくなったんだ。それに併せて売上もちゃんと増えている。医師を増やせばさらに増えるだろう。何がいけないんだ。
でも先生、人員が増えれば当然、人件費がかかってきます。あるいはシステムのカスタマイズなどで追加料金がかかる場合もあるでしょう。売上の額が増えているだけでなく、経費も同じように増えているということはありませんか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
君ね、それはまさに「必要経費」というやつだよ。より大きなビジネスを行うための「投資」と言ってもいい。
もちろんその通りなのですが、別の言い方をするなら、それは「売上は上がっているが利益は上がっていない」ということですよ。人をどんどん増やしていい状況だとは思えません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
言うじゃないか。なら、そういう自分だったらどんな動きをするのかね。
そうですね。むしろ人を減らします。理想的なのは、もとの1人体制に戻すことですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
な、なんだって?
保険診療はなかなか単価を上げられない商売なので、そもそもコンパクトにした方が効率はいいんです。その上で、「売上」ではなく「利益」の額でビジネスを見直すと思いますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そ、そんなことをしたら、これまでの努力が水の泡だ!
もちろん「私ならそうする」というだけです。今はテクノロジーの発展もすごくて、外部に委託できる業務もかなり増えてますから。それに何より、一人になればスタッフの相談やシステムのトラブル等の仕事から解放されます。そうすれば自分の本業に専念できる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……う〜む、確かに、人が増えたことで本業以外の雑務はかなり増えている。それにストレスを感じているのも事実だ。
私が言いたいのは、「今はいろいろな選択肢がある」ということなんです。人を増やしていく選択肢、逆に減らしていく選択肢。それぞれを検討して、ご自身に合った体制を作っていくべきです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど……確かに私は「他の道」を見てはいなかったな。君の言うように、経営者たるものいろいろな戦略を検討すべきだ。
ええ。時代は常に変化しています。これまでのやり方に固執せず、フラットな視点で世の中を見る必要があるのでしょう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだな。悔しいが、君のおかげで少し視野が広がったよ。

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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