第70回 コロナの真の恐ろしさは「命の選択」を迫られたこと

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第70回 コロナの真の恐ろしさは「命の選択」を迫られたこと

安田
今回も前回に引き続きコロナについてお話ししていきたいと思います。騒動から時間が経ち、今ではもう「ただの風邪」と見る向きも強いと思うんです。これはやはりウイルス自体がどんどん弱体化しているからなんでしょうか?

久保
そうですね。ウイルスにとっての「宿主=人間」が死んでしまったら、当然ウイルスも生き延びることができないので。共存していくためにも、徐々に弱体化するのは一般的な変遷だと言えます。
安田
確かに、蔓延するウイルスがデルタ株からオミクロン株に変わってきたあたりから、入院するほど重症化するような人は少なくなったようです。それにしても当時の感染対策って、本当に有効だったんでしょうかね?

久保
といいますと?
安田
こまめな手洗いやうがい、殺菌消毒、そして常にマスク着用…そういう行動でウイルスの侵入を完全に遮ることって可能だったのかな、と。

久保
いや、無理でしょうね(笑)。でもあの頃はまだ「コロナ=未知のウイルス」だったので、どうにかしてこれ以上の感染拡大を防ごうと、国も一生懸命だったんだろうとは思いますけれど。
安田
それは私も理解できるんです。でも年を取った人や体の弱い人から死んでいくのは自然の摂理なんだから、ある程度ウイルスに負けて亡くなる人がいることは受け入れざるを得ないと思うんですよね。…こんなこと言ったら大炎上してしまいそうですが(笑)。

久保
笑。「一部の人」を守るために過剰なまでの感染対策をすることは、本当に意味があったのかと思う気持ちもわかります。実は私、「デルタ株」が大流行している時に、「コロナという病気そのもの」よりも怖いと思っていたことがあったんです。
安田
ほう…どんなことだったんでしょうか?

久保
人工呼吸器ECMOが必要なほど、肺に深刻なダメージを受けた人が急増していたのに、治療できる環境が整っていなかったことです。2021年当時、日本全体で人口の0.1%、つまり約10万人がコロナにかかっていたと言われています。そのうち約80%は無症状か、発症しても自然免疫で快復できていましたが、残り20%の人は人工呼吸器が必要になる可能性があったんです。
安田
20%ということは、約2万人か。つまり、その人数分だけの人工呼吸器を確保しておく必要があったと。

久保
ええ。ところが、日本全体で約2万2000台の人工呼吸器があるものの、コロナの新規患者に使えるのは1万台ほどだったんです。
安田
あぁそうか、コロナ以外でも人工呼吸器を必要とする患者さんはいますもんね。じゃあECMOはどうだったんです? 確か前回の対談では、ECMOが必要なほど重篤な患者さんは発症者の約5%だと教えていただきましたよね。ということは約5000人くらい?

久保
はい。ところが国内のECMO台数は1400台ほどしかないんです。
安田
ははぁ…しかも人工呼吸器と同様、すでに別の患者さんに使われているECMOもあるわけですよね?

久保
ええ、すでに1200台は使用中。つまり新規患者に使えるのはたった200台しかなかったというわけです。
安田
全然足りていないじゃないですか!

久保
そうなんです。1台しかECMOがないのに、それを必要とする患者さんが大勢病院に運ばれてきたら、どの人にECMOを使うのか。つまり私は「命を選択せざるを得ない状況に陥ること」こそが怖いなと。
安田
そうですねぇ。あの混乱下では、医療現場に明確な基準があったわけでもないでしょうし…。結果、どうなったんですか?

久保
幸いなことに、なんとかその事態は避けられたと聞いています。感染者だけでなく濃厚接触者まで厳重に隔離して、とにかく感染者数を抑えようという努力があったことで、ある程度は抑え込めたんだろうと。
安田
確かにみんな自主的にステイホームをして、過剰なくらいに対策していましたもんね。

久保
そうですね。あれは日本人の生真面目さが功を奏した例だと思いますよ。国からの強制力はないにもかかわらず、大多数の人が規律を守った行動をされていましたね。そういった1人ひとりの努力のおかげで医療現場もなんとか持ちこたえたのだろうなと。
安田
それはそうかもしれませんね。とは言え、ウイルス株がどんどん変化して弱毒化していったはずなのに、日本はかなり長い間「厳重な感染対策路線」でした。

久保
長かったですねぇ。私としては、もっと「正しく恐れる」ことができていれば、こんなに長期間にわたってマスク生活も続ける必要はなかったのかなとは思いましたけどね。少なくとも2020年3月にはどんな病気かイメージはできていた。そこから1年も経てば「コロナはどういう病気か」「どういう人が重症化するか」というデータもかなり集まっていたはずですから。
安田
そうですよね。実際に世界はそれで大きく動き出しましたから。ところが日本だけはなぜか頑なに「コロナを極端に恐れ続けていた」気がして仕方ないです。

久保
仰るとおりですね。もちろん国として緊急事態宣言を出したり、ワクチンを摂取させたり、「できるだけ死者を出さないため」に大きな決断がなされたことは、2020年の時点でできた最善の策だったとは思っていますが。
安田
ただ日本人って一度振り上げたものをなかなか下ろすことができない民族ですからね。全てのリスクが解消されるまでは、様々な規制も解いてはいけないと思い込んでいるというか…。

久保
それは大いにあるでしょうね。今あらためてコロナ騒動を振り返ってみて「あの判断でどんな結果になったのか」ということをきちんと総括すべきなのではないかと思います。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

Twitter  Facebook

仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから