第13回「日本の商品を中東で売るのと、中東の商品を日本で売るのは、どちらが難しいですか?どちらが儲かりますか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「日本の商品を中東で売るのと、中東の商品を日本で売るのは、どちらが難しいですか?どちらが儲かりますか?」

売る難易度や儲かるかどうかは商品によって異なりますので本来は商品ごとに判断すべきですが、あえて「日本の商品」「中東の商品」、地域も「日本」「中東」とひとくくりにして考えてみると、強いて言えば現在は「日本の商品を中東で売る」ほうが儲かるかもしれません。

まず、乱暴に理由を述べると、
・儲かるのは競合が少ない「新しいモノ」である
・「新しいモノ」の需要を牽引するのは比較的若い世代である
・高齢化が進んだ日本より若い世代の多い中東の方が市場として可能性がある

我ながら極めて乱暴な三段論法です。細かい部分を完全無視しましたが、一般的に考えて50歳の人と30歳の人を比べるとき、新しいモノを買う傾向が強いのは後者ではないでしょうか。

日本人の年齢中央値は国連のデータによれば48.3歳で世界1位です。CIA World Factbookでも48.6歳で世界2位と世界トップランクとなっています。(CIAのデータではモナコが1位だが、富裕層メインで年配層が多い特殊な国なので、それを除けば日本は実質1位)
一方、中東各国のほとんどが20-30歳代と若いです。若さを維持できているのは少なくとも人間の数が減っていないということです。

また、日本市場にはすでに世界中のものが多く集まっており、ある意味成熟していると言えます。したがって、中東の商品をそのまま持ってきたところで、新しいモノに映るかどうかはわかりません。
一方、中東にも既に世界中から色々なものが集まっていますが、欧米や中国からが多く、日本からそれほど多く入っているわけではありません。日本の商品が今まで目にすることがなかった新しいモノとして映る可能性はあると思います。

人口構造や年齢だけで結論付けるのは非常にアレですが、市場は人間で構成されているので、その属性を考える上でこれらは重要なファクターといえます。

以上、あまり面白くない一般的考察となりましたが、これはあくまで全体の話なので一つ一つ個別に商品を見ていけば中東の商品が日本でも売れる可能性はあります。
今後日本で外国人労働者やイスラム教徒の存在が今よりも普通となり、市場の属性が変化すれば、彼ら向けにハラール製品など「中東の商品」の需要がより増えるかもしれません。

ところで、日本の商品を中東へ売るといっても何が売れるのかは具体的にやってみなければわかりませんが、最近では雨に関連するものにチャンスを感じました。
中東と言えば砂漠で雨が降らないイメージを持つ人は多いと思いますが、近年は気候変動のせいか雨がそれなりに降ることもあります。
中東はもともと雨の少ない地域で、少量降っても強い日差しですぐ乾くため、雨が少ないことを前提とした街づくりになっています。つまり、雨が少し続けば冠水します。

(↑12月、サウジアラビアで雨が降った後にタクシーから撮影)

それほど大雨が降ったわけではないのですが、道路はこのような状態になっていました。
走行の難易度が上がり、道も混雑するため、タクシーの料金もはね上がります。

また、日本のニュースではほとんど取り扱われていませんでしたが、2020年8月、パキスタンのカラチは史上最大級の豪雨に見舞われました。現地から送られてきた写真やビデオを見ると、居住区域にワニが侵入してきたり、家の中で魚が泳いでいたりと、まさにマンガのような状況になっていました。

(↑居住区域に侵入するワニ)

(↑家の中で泳ぐ魚たち)

一日の降水量は過去最高記録を更新し、被害は甚大なものとなったようです。
日本もここ数年は冠水するような豪雨に見舞われていますが、古くから大水対策に腐心してきた国として、何か良いアイデアを商品と言うパッケージで提供できないものだろうかと思いました。
ワニ対策でも構いませんので、アイデアをお持ちであれば是非チャレンジを。

 

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ)

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

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