「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第26回 コミュニケーション不足の解消が、会社復興のカギ
中辻さんがペイント王の社外取締役に就任されてしばらく経ちましたね。その後いかがですか?
おかげさまで、いろいろと順調に進んでいます。
そうですか、それは良かったです。前回、「長年ペイント王という会社を外から見ていて感じる課題がいろいろあった」と話されていましたけど、それは具体的にどういう課題だったんでしょう?
圧倒的にコミュニケーションが足りていなかったことですね。
コミュニケーションというと、社員同士の?
それももちろんありますが、やはり社長の久保さんと社員のみなさんとのコミュニケーションが全然足りていないなと。
あぁ、なるほど。久保さんはちょっと口下手なところがありますからね(笑)。
そうなんですよ(笑)。もともと久保さんは、頭の中で自分の理想とするイメージやそれを実現するための設計図を作り上げるのがとてもお上手なんですけどね。
頭の中ではいろいろ考えているけど、それを周りにうまく伝えられないんですね。
仰る通りです(笑)。自分のアイディアを言葉にして、周りを巻き込みながら引っ張っていく。そういうことが苦手みたいです。
確かに、「この人についていったら面白いことができそうだぞ」と、みんなをその気にさせるようなリーダーシップ力は、あまり感じられないかもしれない(笑)。
笑。そういうこともあって、これまでずっと久保さんについてきている人は、久保さんが何も言わなくてもその気持ちを汲み取って動ける能力のある人なんですよ。私も含めて。
そんなエスパーみたいな人、そうそういないですよ(笑)。
ですよね(笑)。ただ一方で「雇われている側」の人って、自分たちの気持ちをわかってもらいたいという想いのほうが圧倒的に強いと思っていて。
俺たち社員に、社長の思いを汲み取って理解してあげる余裕はないぞ、と。
そうなんですよ。だからこそ社員に対しては「あなたのことを理解したいと思っているよ」「楽しく働けるように配慮するね」という気持ちをしっかり言葉と態度で示す必要があると思うんです。
相手の気持ちに寄り添って信頼を得られるからこそ、「会社を盛り上げていくために一緒に頑張ろう!」と言える。そういうわけですか?
仰る通りです。だから私は社外取締役という立場から、ペイント王の社員のみなさんを盛り立てて、いろんな企画や新しい取り組みに巻き込んでいく役目を担おうと思っています。
久保さんに足りない部分を補うわけですね。
はい、そうなります。そのためにも現場とのコミュニケーションを大切にする。それがペイント王の改革に向けた第一歩になるのかなと思っていますね。
社外取締役就任後からすぐ、毎月2回の社内会議を実施しているそうですが。やはりそういう場があると、社員たちとのコミュニケーションも活発になりますか?
なりますね。すごく充実した会議ができていると思いますよ。なにしろ私がよく喋るから(笑)。みんなもつられるように自分の意見をポンポン出してくれています。
中辻さんのコミュニケーション能力の高さは、この対談を通じて、私もますます実感していますからね(笑)。
ありがとうございます(笑)。
会議には久保さんと中辻さん以外に、どんな役職の人が参加しているんですか?
基本的には全社員に参加してもらっています。営業さんとか経理さんとかも含めて。というのも、全員が一堂に会することが重要だと思っていて。目線がしっかり合うからこそ全員が同じ方向に向かって進んでいけるんじゃないかなと。
なるほど。それを2週間に1度のペースでやっていけば、久保さんや中辻さんの想いも社員1人ひとりにしっかり浸透していきそうですね。
そうなればいいなと思っています。だからこそ今は、みんなで直接顔を合わせて、あーだこーだ言う時間を大切にしているところです。
ちなみに、ポスティングのプロでもあるMAMENOKI COMPANY代表の中辻さんから見て、ペイント王のポスティングにはどんな課題がありそうですか?
そうですね…。これまでは正直なところ、チラシを撒けばそれなりの反響があったんです。地域の中で「ペイント王」の認知度は圧倒的でしたから。
ところが最近は、そうでもなくなってきた、と?
ええ。今までだったらペイント王を「追いかける側」だった地元の小さな塗装屋さんたちが「競合店」になってきているんです。
ペイント王と対等な立場で戦える塗装屋さんが現れたわけですね。
ペイント王の営業マンって、みんなすごく頑張ってくれているんです。資料も上手に作りますし、提案もスムーズ。クロージングだってとても良く考えられていて。
はい、私はそう思っています。営業マンの方々の頑張りが会社の成長にうまく作用するように、しばらくは全力でフォローしていきます。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。