vol.54【S氏の像|311の直後だからこそ届けた柔和な自分で本来の力を発揮するための肖像画】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

S氏の像|311の直後だからこそ届けた柔和な自分で本来の力を発揮するための肖像画

それは、311から10日ほどの時でした。まだ、時折余震がある中です。でも、だからこそ、完成した絵を受け渡したい。それが、Sさんと私の共通した想いでした。まだ緊張感が続く中なので、移動距離の中間駅にあるお店で待ち合わせました。

Sさんは行政書士で、社長。一見精悍な面持ちなのですが、笑うと人懐こい空気が溢れます。「自分の未来を応援してくれる肖像画を描いてほしい。スーツをパリッと着ているのがいいのか、Tシャツなどリラックスした私的な姿がいいのか、よくわからないので、門間さんに決めてもらいたい」という依頼でした。こういう時は、すぐどんな姿の絵がいいか決めません。どんな絵だと<応援されていると感じるか>は、Sさん自身の気持ちにあります。だから、Sさんに、今までの話、今、そして、将来の夢などを聞きました。

【その方の中にあるものを聞いて絵に変換して考える】ビジョンクリエイターとしての役割です。

話を聞いているうちに、スナップ写真などの話題も出てきたので、気に入っているものを見せていただきました。私的な写真の柔らかな笑顔を眺めているうちに「どうも仕事だとチカラが入って固くなりがちで」というSさんの言葉が浮かんできました。そして、この柔らかさを毎日心に思い起こしてもらうのがいい、と、提案しました。本来の自分に還る肖像画です。

真面目な人ほど、仕事に向かう時は、外に向けて注意が向きがちです。だから、ちょっとしたブレイクタイムに内に注意を向けて、本来の自分らしい姿をイメージして軽くふっと息を吐き出すと‥‥、余分なチカラが向けてバランスが取れます。
すると、万一、思いがけないトラブルにあっても、より適切に対応することができます。

そして、この後は、絵を描く画家の出番です。Sさんの素敵な未来を思い描きながらひと筆ひと筆、重ねていきました。顔はうっすらとやさしいほほえみを浮かべながら、まっすぐにこちらを見つめています。柔らかな魅力が仕事にも現れるように、ちょっと斜めを向いたポーズにしました。
古代ギリシア彫刻で例えるならば、重心がどちらか一方の足にある【クラシック期】の<
コントラポスト>のような動きのある肖像です。

そして、シャツにうっすらと木を描きました。それは、ゆっくりと育つ夢の木であり、成長情熱の印。後ろの光る黄色は、楽しい時もつらい時も、見守っている人がいるよ、というサインです。こうした最後の仕上げの頃に、311が起こりました。

いつにない大災害の後だからこそ、魂の肖像画を受け渡しするのが重要なのだと感じました。Sさんも、すぐに受け取ることを望みました。

互いの中間地点を待ち合わせとして、仕事帰りでも営業しているお店をWEBで調べました。しかし、実際に行ってみると、震災の影響で営業時間が短縮されていました。当時は、H Pを更新するなどできる状況ではなかったのでしょう。絵をチラリと見せられましたが、すぐに出されてしまい、空いている喫茶をなんとか探して落ち着きました。しかし、私は慌てていたのでしょう。前の店に携帯をおき忘れていました。それに気づくと、Sさんは「災害時は男子が動くものです。門間さんはここにいて」と、スッと取りにいってくれました。

その後、周りのお店もどんどん閉まっていく状況でした。だから、絵を見せて手短に話して別れましたが、絵を見た時、Sさんに満面の笑みが浮かんだのが印象的でした。

翌日、「携帯のお礼をメールで送ると、<携帯を取りに行ったことをすっかり忘れるくらいうれしかった>と返信が返ってきました。

「そういえば、携帯とりいきましたね(笑)
絵を受け取るのがあまりに嬉しくてすっかり携帯のこと忘れていました、本当に!家に帰ってすぐ、飾りました。その夜の間に何度もなんどもみて元気をもらいました。温和な自分の表情をみて、なごみ、癒されました。

絵とはいえ自分からいろんな物をもらうのは不思議な感覚ですね。これからも絵にお世話になると思います。本当に、すばらしいものを贈っていただき、ありがとうございます。」

 

今回完成した作品 ≫「S氏の像 」

 

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「門間さんに描いてもらい」とひそかに思いを育んておられた皆さま、是非ご確認くださいませ。

https://brand-farmers.jp/blog/monma_vision-paint/

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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