// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
さて、今回はちょっと趣向を変えて、私の思い出話から始めてみたいと思います。
私にはバーを開業したいと考えるきっかけとなったお店があります。
そのお店は私が営業マン時代に勤めていた会社から家まで帰る途中の乗換駅にあり、お店の前を通るたびに「バーでお酒を飲んでみたい」という思いが募り、ある日思い切ってお店のドアを開け、人生で初めてのバーに飛び込んでみたのです。
店内は大手チェーンの居酒屋にはない、小規模経営ならではのこだわりが感じられる内装。店内に漂うほど良い緊張感。所狭しと並ぶ見たこともないボトルの数々。15席ほどのカウンターに並んで座る常連さんたち。
混み合うカウンターの隅の方の席に案内され、緊張で味も分からないビールをしばらく飲んでいると、店長が忙しい合間に私に話しかけて来てくれました。詳細までは覚えていませんが、ビールしか知らなかった当時の私に、お酒に関する興味深い話を色々と教えてくれて、とても嬉しかったことを覚えています。
そんな経験からこのお店がすっかりお気に入りになった私は、その後様々なバーにも行ってみることになる訳ですが、そこであることに気づいたのです。
それが、私が初めて入ったバーの店長は「話が分かりやすかった」ということ。
他のお店のバーテンダーさんと話をしてみて分かったのですが、私にいつもお酒の話を教えてくれた店長は、私が知らないようなバーの業界用語や、お酒ならではの表現を全く使わず、知識のない私のレベルに合わせて話をしてくれていたのです。
そして、店長の話が分かりやすかったからこそ話を聞きたくなり、話を聞きたいからこそ、私はそのお店に通っていたのです。だから、そのお店はいつ行っても繁盛していたのだと、いま振り返ってみると思うのです。
商売上手な人は話が分かりやすい、ということ。
これは何もバーに限った話ではないと思います。
商売をしていると、私が知らない業界用語や難しい横文字を使って説明してくる人に会うことがあります。確かに難解な言葉を使えば、少なくとも私よりも専門的な知識を持っている事は誇示できるかも知れません。
ただ、話が分かりにくい人の話は聞く気にならず、話を聞く気にならない人から商品を買おうという気持ちが生まれる事はないような気がするのです。
そう考えると、私たちが商売をする上で意識すべきなのは、難しい言葉で相手の優位に立とうとすることではなく、むしろ易しい言葉で相手の興味を引くことなのではないでしょうか?
優位に立つのと商品が売れるかは別問題だということ。
この違いに気づかない限り、どんなに相手の優位に立つことを頑張ったとしても、その人の商売が上手くいくことはないと、私は思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/