第154回 感謝されるお店、されないお店

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私は普段、直営店舗の横に併設された事務所で仕事をしています。

事務所のすぐ横にお店があるため、仕事をしていると隣のお店から帰る際のお客さん達の声も聞こえてくる訳ですが、そこで以前あることに気がついたのです。

それが「お客さん側からお店側に感謝を伝えている声が多い」という事実。


お店とお客さんの間で交わされる「ありがとうございました」という言葉。

当然ですが、私がお店を開業した当時も、お店を利用してくれたお客さんに対してこうした感謝の気持ちを忘れずに伝えていましたが、今から思い返すと、私には開業当初にお客さんから「ありがとうございました」という言葉をいただいた記憶がないのです。

「お客さんから感謝されるお店」と「感謝されなかった開業当初の1号店」。
この両者の違いは何なのでしょう?

今から振り返って思う、その答え。
それは、「そのお店ならではの価値をお客さんに提供できているかどうか」ではないかと思うのです。

当時の私は「安売りをすることでお客さんに喜んでもらいたい」と考えていましたが、これは言ってみれば、他のお店でもメニューの価格を書き換えるだけで真似することのできてしまう価値であり、真似することが簡単である以上、その価値は低いと言えます。

一方で、お客さんから感謝されているお店というのは、価格だけを見れば決して安くはないものの、誰でも簡単に真似できる安さとは違った「自分のお店ならではの価値」を提供できているからこそ真似することが難しく、真似することが難しいからこそ、その価値に感謝の言葉が集まるのではないかと思うのです。

つまり、お客さんは「そのお店がどれだけ他店よりも儲けを削っているか」という事に対して感謝をするのではなく、「そのお店がどれだけ他店にない価値を提供しているか」に感謝の気持ちを持つのではないか、ということ。

そう考えれば、開業当初の私の1号店に来てくれていたお客さん達は「安売りは儲けを削れば誰でもできる楽な商売」という事実を見抜いていたのかも知れず、やろうと思えば誰でもできる価値しか提供できていなかった私のお店が感謝されなかったのも、今から思えば納得なのです。

 

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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