第153回 その価値は伝わっているのか?

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、このコラムの運営元であるBFIの安田さんからオンラインで取材を受けました。

その内容というのが、商売を始めた当初の実体験を対談形式で話すというものであり、詳しい対談内容は、BFIが将来起業を考えている方向けに発行しているメールマガジン内で掲載されるそうです。

そんな取材を受けている時に、創業当時の私がやってしまった「ある失敗」について振り返る機会があったので、今回はその失敗について書いてみようと思います。


開業してから約1年。
私が集客でずっと苦労してきたという話はこのコラムでも何度か書いてきました。

ただ、集客で苦労したとは言っても、当然ですが全くお客さんが来なかった訳ではなく、少ないながらもお客さんは毎日お店に来てくれていたのです。じゃあ何故、1年ものあいだ集客に苦労し続けていたのかと言うと、その原因の1つは「お店の対象としていたお客さん達にリピートしてもらえなかった」からです。

お店の対象となる具体的なお客さん像を想定して商売を始めたにも関わらず、そうしたお客さん達からリピートしてもらえない。

こんな現実を目の当たりにした時、私たちは「自分が提供したい価値」そのものを疑いたくなるものではないでしょうか。

「自分が提供したい価値を必要としている人なんていないんじゃないか」と。

確かにその可能性もあるかも知れません。
ただ、ここで私の経験を書かせてもらうのであれば、当時の私が間違えていたのは「提供したい価値そのもの」ではなく、「その価値がお客さんに伝わっていなかった」ということ。

もう少し具体的に書くならば、本来お店が伝えたかった価値と、実際にお客さんがお店で手にするメニューブックの構成に大きなズレが生まれてしまっていたことに気がつかず、お客さん達に体験してほしかった価値を伝えられていなかったのです。

その後、幸いにも私はこのズレに気づき、メニュー構成の改善を続けた結果、集客を増やすことができましたが、もし当時の私が提供したい価値そのものを疑い、その価値を信じることを止めていたら、現在まで商売を続けることはできなかったような気がしてなりません。

そんな経験を振り返って改めて感じるのは、商売が上手くいかない時に見直すべきなのは「自分が提供したい価値そのものよりも、まずはその価値がお客さんに伝わっているのか」ということ。

伝え方を間違えている限り、どんなに素晴らしい価値を考えたとしてもその価値がお客さんに伝わることはなく、価値が伝わっていなかった以上、私のお店にリピーターが増えなかったのは当然だったと今では思えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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