第174回 お客さんがいない時間

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

お店の閑散期になると増えるもの。
それが「お客さんがいない時間」ではないでしょうか。

そこで今回は、そんな「お客さんがいない時間」をどう捉えるかがお店の業績を左右しているのではないか?という事について、私の実体験を交えながら書いてみたいと思います。


1号店を開業したばかりの頃、私はこの「お客さんがいない時間」を「暇な時間」と捉えていたような気がします。集客を期待して駅前でチラシを少し配ってみては、お客さんがいないお店に戻ってダラダラ過ごす。

「接客業だけどお客さんがいないのだから仕方ない」
「接客業はお客さんが来てからが勝負」
当時はこんな風に自分に対して言い聞かせていた記憶があります。

でも、そんなダラダラした時間を過ごしていたある時、ふと思ったのです。
「お客さんがいない時間こそ、できる事があるじゃないか」と。

同じ「お客さんがいない時間」でも、その時間を「暇な時間」と捉えてしまえば時間の浪費になりますが、「次の種まきができる時間」と捉えれば、中長期に向けた貴重な時間の投資になります。

「お客さんがいないから仕方ない」で終わらせてしまうのではなく、お客さんがいないからこそ次の繁忙期へ向けた商品改善に時間を使えるし、お客さんがいないからこそ店内オペレーションの見直しができると考える。

繁忙期と閑散期のある商売において、繁忙期は売上を伸ばすことに忙しく、商品やオペレーションの見直しになかなか時間を取れません。

そう考えるのであれば、年間を通じたお店の業績を左右するのは「お客さんがいる時間の過ごし方」よりも、むしろ「お客さんがいない時間の過ごし方」であり、極端な言い方をすれば「接客業はお客さんがいない時間の過ごし方こそが勝負」とも言えるのではないでしょうか?

お客さんがいない時間をどう捉えるか?

短期で見れば「暇な時間」と捉えようが、「次の種まきできる時間」と捉えようが、大きな差はないかも知れません。ただ、長期で考えるのであれば、この時間をどう過ごしたのかが少しずつ確実に積み重なっていき、結果的にお店の業績に大きな差を作り出しているように思えるのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから