日本はずっと初任給が上がってないですけど、他の国はどうなんですか?
中国はものすごく上がってます。
ですよね。欧米の先進国はどうですか?
欧米のようなジョブ型はもともと初任給が高いです。日本とは初任給の概念が違いますから。
日本もジョブ型雇用する大手が増えてきましたね。
どんどんそっちに移行すると思います。
ジョブ型だと初任給が増えるんですか。
たとえばLINEは初任給1000万で募集してます。
なんと!
でもほとんどの会社はずっと横並びです。
ずっと初任給20万前後って感じ。
日本商業開発というエネルギー系のメーカーは初任給50万です。
それは全員一律で?
そうです。ただ仕事は大変なんだろうって感じますね。ここまで振り切ると。
確かに。
北の達人コーポレーションも38万ですね。食品関係ですけど。
そんなに払って大丈夫なんでしょうか。上がっていく一方なのに。
上がらないかもしれないですよ。
なるほど。そういうケースも出てくるんですね。
間違いないのはどんどん格差がついていくこと。
それはジョブ型が増えるから?
はい。ソニーもジョブ型雇用を始めました。ジョブに対して給与が決まっていくと格差は大きくなります。
新入社員でも差がつくってことですよね。
つきます。今みたいに「とりあえず20万で雇っちゃおう」みたいなのは減っていく。
なくなりはしないですか。
続くと思います。ジョブ型だけに振り切るのは難しいでしょう。
100%ジョブ型って難しいですよね、日本では。
ほとんどの新卒は仕事の特定ができないから。はじめから高いのは無理です。
仕事を特定できない新卒はパートナーシップ型が続いていくと。
そうですね。パートナーシップ型がずっと継続しつつ、システム開発とか、事業の立ち上げとか、何千万も払うジョブ型が加わっていく。
事業の立ち上げなんて新卒にできますか。
学生時代に起業して事業をやってた人とか。ぜんぜんできちゃうでしょ。
なるほど。パートナーシップ型はこれから先も初任給は増えないですか。
解雇できないので。定年まで考えると億単位の買い物ですから。仮に10年いたとしても安い買い物ではないですもんね。
年収300万だとしても3000万ですよね。
しかもゼロから教えなきゃいけないですから。教えて、社会保険料も払って。それでも途中で辞められるし。
これからも初任給はずっと20万円前後だと。
びっくりしますよね。私が大学卒業して18年経ちますけど、当時の初任給が21万円でしたから。
この20年ほとんど上がってないです。
へたすると20万切る会社もあるじゃないですか。
ありますね。
ただ円安で物価も高くなってるので。もうこの給与じゃ生活できないですよ。
若者はお金よりプライベートという感じですけど。
そこも変わっていくでしょうね。働きやすさより金銭的なところに戻っていく。だって生活できないんですから。
企業は増やしますか?初任給。
もう上げざるを得ないんじゃないですか。ちゃんとした人を採用しようと思うなら。
久野さんが新卒の頃は20万あれば余裕で生活できましたか。
いえ、当時でも結構厳しかったです。若い頃はすぐいろんなものに使っちゃうし。
地方だったら20万円あればやっていけそうですけど。
そんなことないですよ、安田さん。
ファストフードもアパレルも、どこに行っても安く手に入るじゃないですか。
60円ハンバーガーとかもうないですから。外食したら結構な金額いくんですよ。
若者はあまり外食しないんですかね。
家でも娯楽が楽しめるようになったので。お金を使わなくても生活できるってのはある。ただ足りてるかといったら足りてない。
税金や社会保険料も上がりましたしね。消費税も上がったし。
可処分所得はめちゃくちゃ減ってます。
なおかつ物価も上がっていくとなると、さすがに横ばいじゃ無理ってことですね。
無理ですよ。もう我慢の限界だと思う。
初任給を上げられない会社は人が採れなくなる?
そうです。ただ新卒を上げると2年目、3年目も、更に言うと、30代、40代、50代まで上げざるを得ない。だから大変なんです。
全員上げるってことですもんね。
はい。この変化に耐えられる会社しか残れないと思います。逆にそこを頑張れば一気に人が集まってくる。
そりゃそうでしょうけど。日本は同調圧力が強いですから上げにくいですよ。
上げる会社は出てくると思う。これだけ物価が上がってるので上げざるを得ないし。
たとえばどの会社ですか?トヨタとか。
それこそ新浪さんとか。「物価上昇に合わせて給与も上げるぞ」って言ってる。
今の日本で安心して新卒が働ける初任給って、いくらぐらいが妥当なんですか。
25万ぐらいじゃないですかね。
それは世界的に見たらどうなんですか。
中国はどんどん上がってきてますけど、まだ17、18万。アメリカも初任給が増えていく文化ではないので。
じゃあ25万円になれば、結構いい感じになりますね。
最初だけですね。アメリカは仕事ができない人には絶対にお金を払わないけど、その分キャリアが付いたら上がっていきます。
日本はそんなに上がらないですもんね。
年に1万円も上がらないじゃないですか。
あっという間に抜かれますね。
はい。アメリカの初任給は修行期間みたいなもので、修行が終わって次の会社行ったときにぼんと上がる。だからそこは我慢できるんですよ。
マイナーリーガーみたいなものですね。メジャーに上がると天文学的に増える。
日本だったら2軍もそこそこもらってるじゃないですか。
確かに。でもそれが日本の良さとも言えませんか。
日本の良さではあると思う。けどやっぱりそれでは勝てないですよ。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。