管理職になりたくない国？

PERSOLの研究結果では、日本で管理職になりたい人の割合が21.4％。先進国を含め14の国と地域で最低なんです。

78.6％が管理職になりたくないと。

そうです。

記事によると「自己研さんを一切やってない人」が46.3％もいるそうで。

ちょっと恐ろしいです。

他の国に比べて著しく低いみたいですね。自己研さんしない比率も最下位。独立志向も最下位。休み重視が1位。

そうです。

つまり働きたくないと。

面倒な人間関係が嫌なんでしょう。

管理職になりたくないし、自己研さんもしたくないけど、休みはほしい。

まとめちゃうとそうなります。

日本人はすごく勤勉で、労働力として非常に質が高いと言われています。それ自体が変わってきてる？

いえ。勤務時間に真面目に働くことに関しては、今でも優秀だと思います。ただ、それ以上の広がりはないってことです。

なるほど。成長意欲みたいなものが低下してると。

言われたことをやってるだけなので。帰って寝るだけで、次の日にイノベーションなんて起きるわけない。

まあそうですよね。

ひたすらそれを繰り返すうちに劣化していくんです。1年目は外国人と比べてすごく優秀なんだけど、5年ぐらい働くととんでもない差がついてる。

抜かれちゃうと。

意識を持ってやってる人と、ただ同じことを繰り返した人と。差が出て当然ですよ。

「やる気のない人たち」に見えちゃうんですけど。見方を変えれば「多くを望まない真面目な人たち」とも言えますよね。

そうですね（笑）

別に部長や課長にならなくてもいい。自己研さんして収入を増やすことも考えてない。独立や起業も考えてない。言われたことは真面目にちゃんとやります。

そんな感じです。

それ相応の給料だったら、めちゃくちゃ高くなくてもいいですと。その代わりちゃんと休みちょうだいねって、ことですよね。

まとめちゃうとそうなります（笑）

つまり「仕事やりません」ってことではない。コンビニ店員だって日本人は優秀ですから。なんだかんだ言っても真面目にきっちりやる。

そうですね。

その一方で、最近すごく思うことがあって。日本製の家電がよく壊れるんです。昔の日本製品って壊れないし、アフターフォローもしっかりしてました。

たぶん余裕がないんだと思います。

人材の質も下がってるんじゃないですか。現場の不正とかも多いじゃないですか。昔ほど責任感や真面目さがなくなってる気がします。

海外との競争に勝つことが最優先なので。昔よりも早くつくらなきゃいけないし、細かいアフターフォローまでやってるとコストが合わなくなるし。

なるほど。

コストを省いたり、部品の価格交渉をしてるうちに、ギリギリのものを使うようになっていく。

現場で手抜きしているわけじゃないと。

丁寧につくるという文化から、海外と競争するためのオペレーションに変わったんです。日本人の良さが、もう発揮されない分野になっちゃった。

決して真面目さが劣化したわけじゃないと。言われたことをきちんとこなしていく仕事なら、今でも日本人は優秀ですか？

今はその部分がほぼ意味のない競争環境にあるので。

真面目さはもう必要ありませんか。

1点1点丁寧につくるとか、加工のやり方を工夫するとか。そういう分野なら日本人は世界に勝てると思うんです。

完璧なオートメーションより、三条燕市のスプーン磨きのような仕事が向いてるってことですね。

そうだと思います。逆に言うと、単なる大量生産やコモディティ化商品では、海外に勝てない。

勝てませんか。

だって発想が違うから。たとえばテレビが壊れると日本人は直そうとする。けど中国人は直さずに新しいのを送ってくる。それぐらい割り切ってやってる。

ダイソンも壊れたら新品が送られて来ました。

日本人の親切丁寧が競争の阻害要因になっちゃう分野なんです。それぐらい価格工夫の余地もなければ、スピードとコストだけが求められる。

そういう分野は苦手なんですね。

日本人はそういうトレーニングをしてこなかったから。

昔の日本製品って不良品率が圧倒的に低かったじゃないですか。そこは今も変わってないんですか？それともテクノロジーの進化で差がなくなってるんですか。

車みたいな精密部品だと日本人は圧倒的に強いんです。けど家電とかだと、もうちょっと粗雑でもいけるんですよ。

なるほど。

 1個1個の部品はそこまで複雑じゃなくて。基盤の装置だけがしっかりしてれば、あとは組むだけ。

日本メーカーは不必要な機能とか、難しい機能を付けたがりますよね。あれも真面目さですか。

お客さんが求めてないのに「付加価値をつけなきゃ」と思い込んでる。テレビだったら、大きくて、ちゃんと見えて、リモコンがついてりゃいいだけの話なんです。

なぜ無理やり付加価値をつけようとするのか。

テレビ事業を残そうとしたことが最大の失敗でしょうね。もう日本でつくるのはやめて全部捨てなきゃいけなかった。

しがみついちゃったんでしょうね。昔の栄光もあるし。

けどやってることは「ボタンをあと8個付けよう」とか。「こういう新たな機能をつけよう」とか。リモコンがどんどん大きくなっていくだけ。誰も価値を感じない。

日本はジョブ型じゃないから、テレビ事業がなくなったら他部署に移りゃいいだけなのに。なぜ撤退しなかったのか。

解雇規制がない分、1万人の事業がなくなることに関して逆にナーバスです。

なるほど。

中国だったら「1部門なくなりました。解散します」みたいな感じ。解散が許されないから、経営陣もその分野守ろうとして余計なことを始めて、結局もうからなくなる。

これって日本人の気質の問題ですか。真面目すぎるとか。

言われたことを真面目にやるっていうのは、自分で勉強して工夫しないってこと。それでも収益が出せる体制を経営者はつくるしかない。

言った通りやってくれれば利益が出て、休みも取れる会社？

そうですね。

そんな合理的な経営を日本人ができますか。

外国人経営者の方が向いていると思います。

シャープも台湾企業になって利益が回復しましたからね。

社員の待遇も良くなってます。

外資に買収された方が案外社員はハッピーかもしれませんね。

そんな気がします。