7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第56回「女を見る目がない男?」
前回シングルマザーさんの話をしましたよね。
はい。個人的には、すごく狙い目のターゲットじゃないかと思ってます。
実はもっとニッチな超狙い目がありまして。
ほう。どんなターゲットですか?
シングルファーザー。
え?シングルファーザーですか。
安田さんは「シングルファーザー」って聞いて、どんなイメージ思い浮かべます?
イメージですか。う〜ん・・・
たとえば僕が「実はシングルファーザーで、家内とは7年前に離婚して、子どもをいま2人育ててます」とかって言ったら、正直どういう印象を持ちます?
「大変なんだな」って(笑)。なんとなく「普通の仕事できないんじゃないか」って気がします。
なぜですか?
いや、それはもう、家帰って子どもの食事つくったりしないといけないし。保育園の送り迎えもあるだろうし。
安田さんって意外と偏見ないですね。
え、そうですか。
一般的に「シングルファーザー」っていうと、まだまだ社会的な見方がすごく厳しい。
それはどのような?
たとえば「DVじゃないか?この人は」とか。「酒乱じゃないか?」とか。
すごい偏見ですね。
シングルマザーっていうと「大丈夫?応援するよ」って感じじゃないですか。
そうですよね。
でもシングルファーザーは「おまえが手を上げたり、酒乱だったり、金入れなかったりしたんじゃないか?」みたいな。
つまり「おまえが悪い」ってことですか。
そう思う人が多いってことです。
なんか可哀想ですね。そうじゃない人もいそうですけど。
そうなんです。実は最近シングルファーザーが急増してるんですけど。
増えてるんですか?
奥さんが外にいい人つくって、子育ても放棄して、出ていく人がすごく多いんです。
それは、旦那さんは全く悪くないという?
はい。けなげな旦那さんが取り残されていくケース。増えてます。
でも確かに奥さんが逃げ出すケースって、旦那のDVをイメージしちゃいますよね。
でしょ?でも実際は奥さんがDVしてるケースもいっぱいあるんですよ。
旦那のDVが原因だったら、子どもも連れて逃げますもんね。
おっしゃるとおり。
子どもを置いていくってことは「奥さんにも原因があるのかな」と考えちゃいます。
安田さん、さすが深いですよね。普通はそこまで考えないですよ。
そうですか?
「奥さん大変だね」って見られ方のほうが、まだまだ多いですよ。
じゃあシングルファーザーは偏見があって大変だと。
すごく大変です。私も父親友達で1人いるけど、すごく頑張ってます。
ある意味シングルマザーより大変ってことですよね?
問題は、シングルファーザーには「公的な福祉が一切ない」ってことなんですよ。日本って。
え!そうなんですか。
はい。母子手当はあるけど父子手当はない。
日本人の常識として「シングルファーザーなんてあり得ない」って思ってるから。
それもまたすごい偏見ですね。
実際には「奥さんが散財する、酒は飲む、子どもに手を上げる、もちろん旦那にも手上げる」っていうのが増えてるんですよ。
「もう、この人とはやってられない」って、旦那が子ども連れて出ていくみたいな。
そうです。そういうケースがすごく増えてる。
じゃあ、やっぱり公的な支援が必要じゃないですか。
そうなんですけど「シングルファーザーに光を!」なんて誰も言わないじゃないですか。
確かに言わないですね。なぜでしょう。
票にならないからじゃないですか。
「シングルマザーほど困ってない」というイメージもあるんじゃないですか。
いや困ってますよ。
「仕事はあるだろう」みたいな。男だし。
そういうイメージを持たれてるからしんどいんですよ。実情は仕事と家庭の両立、子育ての両立で悩んでる方が多いです。
そこが求人ターゲットとしての狙い目だと。
そういうことです。「シングルファーザーをサポートします」という会社が、結構いい採用をしてます。
シングルファーザーって、何をサポートしてあげればいいんですか?
まず「仕事あがる時間を自分で決めていい」っていうのがひとつ目。
そこはシングルマザーと同じですね。
はい同じです。で、2つ目は、社長の奥さまとか、女性従業員さんのサポート。
それはどのような?
いちばん困るのが幼稚園・小学校で、キャラ弁つくんなきゃいけないとか。あと縫い物とか、学校の宿題とか。
それを会社の女性が手伝ってあげるってことですか?
そう。特に女の子だったら、父親じゃ教えられないこともあるじゃないですか。
確かに。
男の子だってお母さん的なるものは恋しいですし。
なるほど。家庭に不足している母性を補ってあげると。
そう。それを謳ってあげるとバーッと集まって来ます。
そんなに皆さん苦労してるんですね。
特に中小企業さんは、そういう受け入れをすれば凄くいい人が採れる。
「奥さんに逃げられた=仕事できない人」みたいな偏見もありそうですけど。
そんなことないですよ!仕事ができるからといって、女性を見る目があるとは限らない。
まあ、確かに。
残念ながら「奥さんの選択ミス」ってかなりあるんですよ。
じゃあ、能力が高くて仕事ができるけど、女性を見る目がない人。これが意外と狙い目だと。
まあ、そのとおりですね(笑)
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。