7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第103回「リストラ部屋はどこに行く」
中小企業では社長が連帯保証しますけど。大企業は社長もサラリーマンですよね。
そのとおり。
そう考えるとコロナの影響なんて、大企業の経営者には大したことない気がします。
上場企業であれば株価にも影響するじゃないですか。
それは影響するでしょうね。
いまのままだったら含み損でドーンと業績が下がる。会社業績が下がるってことは、株価が下がるってこと。
「コロナの影響です」って言えば株主総会は乗り越えられそうですけど。
経営陣は株の報酬もあるから。株価が下がるのは困るわけですよ。
なるほど。他人事ではないと。
だから次に何をやるかといったら、市場が納得するような劇的な手を打つ。となればもうリストラしかない。
市場を納得させるためのリストラですか。
はい。「人員を思い切って削減します」と。
コロナの前からすでに大手はリストラしてましたけど。さらに激しくなるってことですか?
逆にチャンス到来でしょ。
チャンス到来?
たとえば三菱UFJを見て「ああ、やっぱり」って。AIの登場でいちばん追いやられるのって、生産性や付加価値のない高年収社員なんですよ。
まあそうでしょうね。
事務系の社員はペイしてるんです。給料に見合ってるからそのまま働いてくださいと。
事務系だけだったら成り立つってことですか。
支店は半分ぐらいにするけど、事務処理をする人は雇ってもぜんぜん問題ない。AIでは取って代われない。
へえ。そうなんですか。
いらないのは本部を中心にしたホワイトカラー。年収1,200万~1,500万、メガバンクであれば45歳過ぎた人たち。
リモートワークが導入されて、もう元には戻らないんじゃないかと言われてます。そうなると管理職がいらなくなる。
そうなんです。だから大企業の社長さん、語弊を恐れずに言うとすごく明るいんですよ。
え!明るいんですか?
明るいです、気分的に。「ヒマだよぉ」って言って。
ひま?
「なんでヒマなんですか?」って聞いたら「余計な会議みんななくなった」って。「これ、ひょっとしたら、このままいけるかな」って言ってました。
経営者は会議を減らしたいんですか。
だって優秀なホワイトカラーは、毎日会社に来させる必要なんてないし。マネジメントも最低限で十分。
確かにそうですね。優秀な人ならリモートで仕事してくれれば十分ペイするし。
この収録だって今はオンラインじゃないですか。
まあこういうご時世なんで。
安田さん「オンラインは嫌いです」って言ってたのに。
いや、ホント嫌いなんですよ。でもそんなこと言ってられない。
必要は発明の母で、必要性があれば好むと好まざるとこうなるじゃないですか。
なりますね。「スマホは嫌いだから使いません」と言ってるに等しい。やらないわけにはいかない。
僕はもう完全に慣れました。目の前にいる安田さんと話してるような感覚。
さすがですね(笑)。でも私もzoomが増えましたよ。
ホント便利ですよ。移動がないし。
話が戻っちゃいますけど、優秀な人には管理が必要ないってことでしたよね。
いらないです。
変な報告書もいらないし、忖度もいらないし。逆になくしちゃったほうが生産性が上がる。
そのとおり。
ただ大手の40〜50代って、管理とか報告とか許可を与えるために存在してたわけですよね。
そうです。
ということは、丸ごとそこはいらなくなってしまう。
おっしゃるとおりです。それは間違いなく加速します、この2年で。
加速しますか?
します。
その人たちを「いらない」って判断する人も、明日は我が身ですよ。
いや、経営陣は別ですね。いらないのは高給取りの中間管理職。
経営陣も似たようなものだと思いますけど。
大企業の経営者はニコニコしてます。コロナのおかげで生産性が著しく可視化されたので。
自分は安全地帯にいるってことですね。
もちろん。安全地帯からどんどんリストラを進めていくんです。
リモート時代のリストラって、どんな感じで始まるんですか?
「ちょっと能力的に足りないね」と判定したら、「そのまま自宅でeラーニングしてください」って。
自宅で研修させるってことですか?
はい。会社で用意してた「リストラ部屋」を自宅に持っていける。
ひどい。じゃあ自宅が「窓際」になるわけですか。
そのとおりです。もはや都心のオフィス自体がいらなくなる。
そもそも通勤時間って無駄ですもんね。
無駄です。その時間、働いてもらったほうがよっぽどいい。
でも優秀な人材だけをそんなにうまく見抜けますかね。
オンライン会議をやると、優秀な人と優秀じゃない人ってすぐわかるそうです。
発言しなくなるってことですか?
おっしゃるとおりです。発言やアイデア出しがない。
いままでだったら会議で目立たないようにしてたのに。目立たないことが逆に目立ってしまうと。
そういうことです。
そういう人は次から会議に呼ばれない?
あるオンライン会議のシステムでは、発言回数が少ないと画面がだんだん小さくなっていくんだって。
えーっ、恐ろしい。
恐ろしいですよね(笑)
発言は少ないけど優秀な人もいるでしょ?
どの責任者さんも言います。「プロジェクトに必要な人はすぐわかる」って。「次のアサインどうしましょう?」「高松君は入れといて」「石塚さんはどうします?」「あいつはいいや」みたいな。
だんだん呼ばれなくなっていくと。
「あれ?最近呼ばれないなあ」なんて思ったら、人事から「石塚さんは最近の生産性に問題がありますので、ちょっとトレーニングが必要です」って。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。