2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第132回「コロナ危機の境目は年収500万」
コロナの影響でみんなダメになってるように見えるんですけど。伸びてる会社もあるって石塚さん言いますよね。
そうなんですよ。たとえばニチバンという会社があって。
ニチバンってあのセロハンテープの?
おっしゃるとおり。文房具のカテゴリーでテープをつくってる会社。昨対134パーセント、つまり34パーセント業績が伸びてます。
へえ!テープが売れてるんですか。
ニチバンっていろんなテープをつくってまして。たとえばコンビニのテープとか。
コンビニのテープ?
セブンイレブンだったら「7」と「i」が書かれたオレンジ色のテープ。買い物したら貼るでしょ。
ああ。あのテープですか。
「レジ袋いりますか」「いいです」「じゃあテープ貼らせてください」ってヤツ。
「支払い済んでます」テープですね。
ニチバンはそういうテープを会社ごとに大量につくってまして。それがめちゃくちゃ増えてるわけです。
なるほど。レジ袋を使わなくなったから?
そうなんです。レジ袋の代わりのテープ。
買った証拠ってことですよね。
これまではレジ袋に入ってることが証拠になってたわけです。「ちゃんと袋に入ってるから、お代は払ってますよ」っていう。
考えてみたら、すべての事業がダメになるはずがないですよね。たとえば家飲みで高級食材や酒が売れるとか。
そうなんですよ。メディアはそういう部分を取り上げないから。悪い情報ばかりが蔓延してます。
他にもコロナでいい影響が出てる会社ってありますか?
たとえばキユーピーも。巣ごもり需要でマヨネーズの売上がすごかったらしいです。
そうなんですか!?
いやぁ~深いなぁと思いましたね。緊急事態宣言が出て巣ごもりしてる月はマヨネーズ欠品したそうです。在庫がなくなって。
へぇ~。
みんな家庭内で調理するから。
マヨネーズってそんなに食べるものですか。
マヨネーズって万能じゃないですか。
たしかに。使い勝手はいいですよね。
面白いなと思ったのは、ドレッシングも最初は一緒に売れたんですって。ところがドレッシングの伸びは止まって、マヨネーズだけが相変わらず伸びていると。
へぇ~。面白い。
家庭内調理は「マヨネーズがあればなんとかなるよ」っていう。家計って渋いんですよ。YouTube見れば自家製ドレッシングも簡単につくれるし。
マヨネーズは自分でつくれないから?
マヨネーズって自分でつくっても「キユーピーのほうが安くておいしい」ってなるそうです。
確かに。キユーピーマヨネーズはおいしいです(笑)
そうなんですよ(笑)
コロナで伸びてる事業って表に出ないだけで結構あるんですね。
あります、あります。アウトドア関連なんてすごいですよ。
それはキャンプが増えたから?
そうです。コロナで外食もできないから「ちょっといいテント買おうか」って。ものすごい金額のテントをバーンって。
テントってそんなに高いんですか。
新潟の三条にあるスノーピークなんて、ひと張り何十万っていうテントがどんどん売れるらしくて。
へえ。
人が集まるところには行けない。とはいえ全員が巣ごもってるわけじゃないので。外に行きたいっていう人がいっぱいいるわけですよ。
なるほど。
そうやって新たなマーケットがどんどん出来てます。
みんなで行ったらキャンプ場も密になりませんか?
だから「ここ空いてますよ」っていうキャンプ場サイトが流行ってる。
へえ。なるほど。
何かがダメになったら、他の何かが伸びるんですよ。
コロナで仕事がなくなるとか言われてますけど。人間がいる限り仕事はなくならないんですね。
そのとおりです。働く場所は変わっても結局どこかで人手は必要になる。労働力という観点で見れば一定の人数は必要なんですよ。
仕事に関しては何も心配することはないと。
ただし労働単価に関しては相当な地殻変動が起きてます。
安くなってるんですか。
1,000万を超える年収を取ろうとすると、難易度は2倍ぐらい上がってます。
ここに就職できたら「年収1,000万以上確定」みたいなのは、もう無理だと。
どんどん減っていくと思います。同じ会社で稼げるのも20年が限界でしょうね。
逆にいうと、そこまで高い収入を求めなければ仕事はある。
そのとおりです。今は東京でも500万以下で暮らせますから。
暮らせますか?東京で。
まったく心配いらないです。だって日本は生活費が安いし。
テレビでは「お先真っ暗」みたいに言われてますけど。
ぜんぜん。
年収500万の仕事はなくならないし、それで十分暮らせますよと。
やっちゃいけないことは2つだけです。都心に高い家を買うことと、子供に高い教育費をかけること。これをやめればかなり余裕があります。
買うなら郊外ですか?
都心に家を買う必要もなくなりましたから。リモートになって。
確かに。
生活コストを下げちゃえばいいんですよ。
そのためには「都心に家を買わない」「学費の高い学校に入れない」ってことですね。
それを守れば可処分所得はすごいです。実際20代はその志向が非常に強い。
へえ。それは大企業の20代でも同じですか?
まったく同じです。だって、そこさえ下げとけば余裕で生活できるわけですから。
堅実ですね。
上を見てますから。40代のサラリーマンはそれができなくて困っているわけで。
40代の人も今から下げればいいんじゃないですか。
家を買ったり、学校に入れたりすると、いろんなしがらみが出来ちゃうから。
そこから抜けられなくなる?
はい。彼らはもう降りられないってことです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。