第154回「新卒一括採用がなくなる日」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第153回「パナソニックはもう買うな!?」

 第154回「新卒一括採用がなくなる日」 


安田

入社して1か月以内に離職する新人が増えているそうです。

石塚

3.8%と書いてましたね。

安田

転職エージェントの意見としては「1か月で辞めた人をとる会社は少ないから、もうちょっと働いてから辞めたほうがいい」って。

石塚

いやいや。合わないんだったら早いほうがいいです。

安田

ネットもそういう意見が多かったです。

石塚

だって早いほうがいいでしょ。合わないんだから。

安田

次の就職に影響が出ませんか?

石塚

そこを考えないといけないですよね。早期で辞めることのデメリットはまさにおっしゃる通りなので。

安田

そこはエージェントの言う通りだと。

石塚

「辞めるのはいいけど、あなた、どれぐらいの確率で決まるの?」ってことですよ。でも新卒の場合はほぼリスクないです。

安田

え!そうなんですか?

石塚

「すみませんでした。こういう理由で僕が間違えました。就職活動をやり直したんです」って言ったら、またすぐ決まります。

安田

へえ〜。決まりますか。

石塚

決まります。

安田

転職エージェントには「『卒業してからフリーターをやってた』と書いておきます」って言われたそうです。すぐ辞めたらイメージが悪いので。

石塚

いやいや。嘘をつくと、あとでバレたときに大変ですよ。嘘はダメ。

安田

ですよね。

石塚

正直に言って大丈夫です。

安田

1か月で辞めた理由がちゃんと納得のいくものだったら、それでいいと。

石塚

相手が納得してくれるかどうかは別ですけど。事実は事実として伝えないとだめ。

安田

なるほど。

石塚

たとえば某国立トップ大学を出て、4月1日でやめた人がいるんです。

安田

ほお。

石塚

でも、それは事実として消せないじゃないですか。1回入ったわけですから。

安田

はい。

石塚

まあ本人には本人なりの理由があるんでしょう。

安田

さすがに1日で辞めるとかなりマイナスイメージですよね。

石塚

「そんな人間はダメだ」って会社は採らないでしょうね。僕だったら逆に「どうして1日で判断したの?」って聞いてみたいですけど。

安田

へぇ~。

石塚

大きく分けて理由は2つあると思うんですよ。会社が合わなかったか、そもそも会社勤めが向かないのか。このどちらか。

安田

なるほど。

石塚

会社勤めが向かないのであれば採らない。「それは会社との相性だな」って場合は、相性が合いそうならオファーは出します。

安田

「合う合わない」って1日で分かりますか?

石塚

安田さんが今の時代に学生だったら、1日で「僕辞めます」って言うと思いますよ。

安田

確かに。私は言いそうですよね(笑)会社員には向かないタイプですから。

石塚

でしょ(笑)

安田

1日で辞めちゃう子って、そもそも会社員に向いてないんじゃないですか。

石塚

いや、合う会社はあると思います。

安田

へえ〜。そうですか。

石塚

はい。合う会社はあります。

安田

たとえば、どういう理由だったら転職に差し支えないんですか?

石塚

裁量や自由度が極端にないとか。言われた通りにやらなきゃいけない職場だとか。「合いません」っていうのは理解できます。

安田

それって就職活動で分かった上で入って来るんじゃ。

石塚

いやぁ、分からないですよ。そんなきちっとした就職活動になってませんから。

安田

そうですかね。

石塚

常々思いますけど、リクルーターと呼ばれてる入社1・2年目の人間に、事業や会社の実態なんてわかるはずがない。

安田

確かに。

石塚

本当は現場の最先端でやってるマネージャーに、よさも悪さも含めて実態を聞いたほうがいいんです。だけどそういう人は採用には一切出てこないじゃないですか。

安田

忙しいですからね。

石塚

だから会社の説明は表面的になってしまう。このギャップは昔よりも広がってると思います。

安田

エステの業界に入った人が「資格を取る費用や、スキルを覚えるための費用が給料から天引きされて、手取り5万円しかなかった」って。

石塚

よくある話ですよ。

安田

これを入社前に聞いてないって、さすがにひどいですよ。

石塚

ひどいと思いますけど、よくある話です。

安田

最初から騙すつもりでやってるってことですか?

石塚

そうでしょうね。

安田

でも1か月で辞められたら会社もかなり痛手ですよ。入社前にちゃんと説明したほうがいいと思うんですけど。

石塚

それやったら集まりませんもん。

安田

そうですけど。

石塚

たとえばメガバンクだって「『営業』って言葉は絶対使っちゃだめですよ」って言われるんですから。

安田

そうなんですか。

石塚

「だって、入ったら営業だろ」「ダメです!石塚さん。それじゃいい学生とれないんです」って。もう新卒一括採用は限界なんですよ。お互いが本音を隠すから。

安田

じゃあ「このぐらいは辞めるだろう」というのは織り込み済みだと。

石塚

企業側は「こんなもんだろう」っていう歩留まりで納得してると思う。

安田

今後も騙し合いの構図は変わらないですか。

石塚

この先22歳人口が減るので、ますます奪い合いになるわけですよ。要するに、あんまりシリアスな、シビアなことを言ったら来ないじゃないですか。

安田

確かに。

石塚

ますますニンジンをぶら下げるし、甘い言葉を言うし、なるべく学生の意向を聞こうとするし。

安田

「転勤がなくて、副業もできて、テレワークの会社です」みたいな。

石塚

おっしゃる通り。

安田

だけど、そんな甘い条件で選ぶ人材って戦力になるんですか?

石塚

結局のところ「新卒採用って何だろう?」ってことですよ。

安田

ひとことで言えば「いい人材の囲い込み」じゃないですか。

石塚

つまり「その会社にずっといる」ということが前提なわけです。

安田

もはや新卒採用は「いい人材」を採るための手法ではないと。

石塚

終身雇用が事実上なくなったとき、新卒一括採用の意味もなくなったんです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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