2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第210回「太陽のリストラ政策」
第211回「回転寿司こそが究極!?」
この10年で回転寿司が800店舗も増えているそうです。
増えてますよね。
人口が減って、給料も下がって、税金だけ高くなっていくなかで。なぜ回転寿司だけが業績を上げられるのか。すごく不思議なんですけど。
回転寿司って、まずヘルシーでしょ。
魚だからってことですか。
油とか使わないし。食べていて不健康な感じがしないじゃないですか。
まあそうですね。
食べる量も調節できるし。
はいはい。
そして、お寿司だけじゃなくて、いろんなものがありますよね。おそば、うどん。
ありますね。
だから、あそこは「回転寿司」って考えないほうがいいと思うんです。多商品アイテムのファミレスなんですよ、あれは。
もう寿司屋じゃないと。
寿司屋じゃないです。注文すると最新のICT技術で「あっという間」に来るわけですよ。
そんなに早いんですか。
オーダーしたらスパッとすぐ目の前に持ってくる。
へえ〜。
ファーストフードでもあり、ヘルシーフードでもあるんです。
なるほど。
誰が行っても、誰と行っても、2人で行っても、家族で行っても、おじいちゃんとおばあちゃんが行っても、若い人が行っても、ぜんぶ食べるものがある。あの業態はすごい。
ぜんぜん知りませんでした。そんなにすごい業態だったんですね。
最新式のニュータイプ・ファミレスみたいなイメージですね。
つまり回転寿司だから儲かっているわけじゃなく、飲食業としてすごい工夫があるってことですね。
すごい工夫とテクノロジーですよ。
へぇ~。
本当に回転寿司ってICTのすべてが詰まってますよ、あそこに。
でも裏では、やっぱり人が握ってるわけでしょ。
もちろん。マニュアルに沿ってちゃんと。
そこにすごく人件費もかかりそうですけど。そんなに儲かるんですか?
売上がすごいですから。
それは回転が速いからですか。
おっしゃる通り。満席でも、まあ1時間も待ってれば入れるじゃないですか。
みんな並んでますもんね。
今はその場で待たなくても、ICTで「次は何時何分です」ってスマホで分かるんですよ。これはくら寿司というチェーンがいちばんよくできています。
店舗に行かなくてもいいんですか?
今日の何時から予約が可能かって、ぜんぶスマホで分かる。無料のアプリで。いきなり店舗なんて行かないんです。
なんと。
スマホを見て「7時半だったら行けますけど、いいですよね」「じゃあ予約入れときます」って。
人気店でも並ばなくていいってことですか。
前もって予約すれば。
回転寿司を食べるために、わざわざそんなに早く予約しますか。
それがするんですよ。「お父さん、くら寿司行きたい!」「おまえ、これ見ればわかるだろ。夜の10時半まで待てるか?」「待てない。来週は絶対早く予約入れてね」「わかったわかった」みたいな。
キャンセルしたらどうなるんですか。
キャンセルしたら次が繰り上がるだけです。キャンセル待ちもたくさんいるので。
へえ〜。
ラーメンもうまかったりするんですよ。
凄いですね。
凄いです。メニューは豊富だし、ボックス席もあればカウンターもあるし。1人で行こうが、2人で行こうが、3人で行こうが、5人で行こうか、ぜんぶ吸収できる。
回転寿司は海外でもすごく人気があるらしいですけど。同じ理由ですか?
寿司はヘルシーフードだから。それにこういう仕組みもないし。
回って出てくるって驚きでしょうね。
日本人ならではの発想ですよ。「生ものが嫌い」って人は、生ものじゃないものを食べればいいわけだし。
じゃあ石塚さんの予想では回転寿司はまだまだ増える?
増えるでしょう。人口が減るので国内マーケットはどこかで止まるでしょうけど。
ワタミさんはなぜ焼肉じゃなく、こっちに行かなかったんですか。
回転寿司って、設備投資にものすごくお金がかかるんです。
そうなんですか?
1店舗つくるのにものすごくお金がかかる。焼肉なんか火つけて燃やすだけじゃないですか。
まあ、そうですけれど(笑)
回転寿司にはハードとソフトと人材と3つ必要で。経営体力のある会社しか無理なんですよ。
そうなんですね。
ワタミぐらいじゃつくれないってことです。広い土地にものすごい設備投資をかけて、システムも導入しなきゃいけない。あれこそ強者の業態です。
小さな店もあるじゃないですか。
独立系の回転寿司なんて、ぜんぶどこかに買われました。今はぜんぶ大手です。
たしかに。はま寿司か、くら寿司か、みたいな。
はま寿司は牛丼の「すき家」のゼンショーグループ。
かっぱ寿司のCMも最近見なくなりましたね。
かっぱ寿司はカッパ・クリエイト。コロワイドが買収しました。
なんと。
テレワークも回転寿司の流行に拍車をかけてます。
テレワークが?
いま安田さんだって家にいるでしょ。
ほとんど家にいます。
たまに回転寿司に食べに行きませんか?
いや、行かないです。
行って見てください。ビックリしますよ。「平日にこんなにいるの!?」って。予約しないと入れませんから。
えーっ、入れないんですか!?平日に。
「お客様、アプリ持ってますか?」って必ず聞かれます。
もうそれが常識なんですね。
はい。スマホがすべてを変えました。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。