2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第230回「替え玉受験の本質」
第231回「学歴の価値」
全入学時代と言われていまして。
はい。選ばなければ全員が大学生になれる時代ですね。
学生が足りないので、名前を書いたら入れる大学もあるらしくて。
そんな大学に「わざわざ大金を払って行く価値あるのか」って考えないと。
浪人する人がすごく減ってるそうです。
そりゃそうでしょうね。経済的に厳しい家庭も多いですから。
浪人して志望校に行くより、「ちょっとランクを落として現役で」という選択らしいです。
そうなりますよ。
どうせ大学に行くなら、有名大学に入った方が良くないですか?
何をやりたいかにもよるんですけど。早稲田・慶應に浪人してまで入らなきゃいけないかっていったら、僕は「ノー」だと思う。
早稲田・慶應でも浪人していく価値はない?
と思います。
へぇ~。
500万円ぐらいかけて「早稲田大学卒」を得る価値って、逆に何なのかってことですよ。
「早稲田だったら採用しよう」という会社は、まだまだ多いのが現実でしょう。
中小企業の社長はそういうの好きですからね。
そこに価値は感じませんか。
そこに500万の価値を感じるなら、浪人してもいいんじゃないんですか。
早稲田じゃなかったとしても、それなりの学費はかかるわけじゃないですか。
そうですね。
現役で入ったとしても数百万はかかるわけで。どうせなら早慶に入った方が得だという気がするんですけど。
それって就職のために「自分ブランドを高める」ってことと、ほぼイコールですよね。
まあそうですね。
有名大学を卒業するメリットって、「新卒で優遇されるかもしれない」ことと「OBとのつながりが仕事上使える」こと。この2つだと思うんですよ。
OBとの繋がりは価値がありますよね。
それこそ大学によるでしょう。
早慶OBとの人脈なんてすごい価値だと思いますけど。
日本では早慶は名門だけど、世界で見たらFランク校ですから。
え!早慶が世界のFランク校なんですか?
早稲田も慶應も世界のFランク校ですよ。
あんなに難関なのに。
世界ランキングでは圏外です。「そんな大学あるの!?」って感じですよ。
国内では超エリート校ですよね。
グローバル企業から見たら「は?」って感じでしょう。世界的にはまったくの無名校ですから。
東大・京大レベルじゃないと学歴としての価値はないと。
世界的な尺度で考えるなら、日本の大学じゃなく海外に行った方がいい。もっと安く行けるし。
安くはないでしょう。
日本よりぜんぜん安いですよ。たとえば台湾とか。
台湾の大学のほうが、世界的に価値があるんですか?
台湾は技術力で日本を凌駕している部分がいっぱいありますから。日本人は30年前のイメージで止まってるけど。
シャープも台湾企業に買われちゃいましたからね。
あるいはマレーシアの大学とか。ASEANにも名門校はたくさんあります。
日本企業に入るときには不利にならないんですか?
日本でも「海外大卒をとれ」という企業が増えてきてます。
それは大手でも?
大手ほどそういう傾向が強いですよ。
そうなんですね。レールから外れた人を、大企業は嫌いそうな気がするんですけど。
もう時代が違いますよ。今は「海外大は採れ」という方向です。
へぇ~。
「早慶上智・海外大」っていう枠があるんですよ。
そうなんですか。
安田さんは海外大を出ているから、卒業の大変さがわかるでしょう。
まあ確かに大変ですね。
これがね、浸透してるんですよ。わざわざ言葉の通じない異文化の国に飛び込んで、単位認定の厳しいところで卒業した。それは価値がありますよ。
仮に、石塚さんのお子さんが「日本の大学に学行きたい」って言ったら、「行くな」とは言わないでしょう?やっぱり。
いえ。僕は「やめておいたほうがいいよ」と言ってます。
え、そうなんですか!?
はい。理想は「まず1回、高校を出たら働いてくれ」と。
すごいですね。
そんな無理して浪人するぐらいだったら「1回、何年か働いてみ」って。
そのあと大学に行けと。
そう。みんな知らないけど、有名大学も社会人入学をやってまして。「社会人経験1年以上で受験資格」とかあるんです。
そうなんですか。
しかも社会人って入試が簡単なの。国立もありますよ。
同級生に「おじさん」とか「おばさん」とか言われませんか。
ぜんぜん。1年か2年ぐらいいいじゃないですか。
それを自分の子どもにって、なかなか勇気が要ります。
そうですか。1年か2年働いてみて、世の中をリアルに体感して、それから考えたってぜんぜん遅くない。
他人の子ならそう言いますけど(笑)自分の子供には言いにくい。
えーっ!安田さんでも?
無難な選択をする気持ちはよくわかります。
無難なことがリスクだったら勧めないでしょ?
勧めはしませんけれど、本人が「そうしたい」って言ったら止めないと思います。
うちは子ども3人いますけど、「大学に行ってくれ」とは絶対に言わないし、「高校を出たら1回仕事をするのがいい」「できれば日本から出てくれ」って言ってます。
「大学に行ってくれ」とは思いませんけど。できれば高校を卒業するまでに「自分で稼げる能力」を身に付けてほしい。
いいですね。
大学に行くんだったら、自分で学費を払って行くぐらいになってほしいです。
すばらしいじゃないですか。でも、それだけ稼げたら「大学行こう」とは思わないかもしれないですよ。
その可能性は高いですよね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。