2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第244回「保育士を活かす方法」
第245回「セブン&アイグループの展望」
イトーヨーカドーお店をどんどん閉めているそうです。
セブンイレブンに集中するということですよ。だけど、それも安泰ではない。
セブンは好調じゃないんですか?
コンビニって店舗によって、売上の差がものすごく激しいんです。なので全部のお店が良いとは限らない。
そりゃあそうですよね。
日販80万を超えるようなお店もあるけど、日販40万とかもあって。そういう店舗にものすごくパワーを割かないといけないわけです。
放っておくわけにもいかないと。
優等生は放っておいても売れるからいいんです。だけど売上が伸びない店にパワーをかけても、そんなに生産性は上がらない。皮肉なことですがこれがコンビニの宿命ですね。
ほとんどのお店はFCなので、オーナーに任せておけばいいじゃないですか。
それじゃあ売上は伸びないわけですよ。
「FCオーナーになりたい」という人さえ増えていけば、本部は安泰じゃないんですか。
そんなに単純ではないですね。コンビニの成功確率って年々下がってますし。
どういう理由で下がってるんですか?
店が増えてるから。同じ業態でも平気で近くにぶつけられるじゃないですか。
「何メートル離れなきゃいけない」とか、決まりはないんですか。
一応の決まりはあります。けど本部に「そこに作るな」とは言えない。
ほんと目と鼻の先にありますよね。
おっしゃる通り。
どうしても店舗によって勝ち負けが分かれちゃうんでしょう。
コンビニの商圏って半径750メーターなんですよ。
へぇ~。
750メートルの輪をつなげていく。それで日本中を網羅するというのがセブン&アイ・ホールディングスの戦略なんです。だけど、なかなか机上の計算どおりにはいかない。
750メートルも離れていないような店、いっぱいありますけど。
あります。同じ商圏の中に「あっ、またここにも」みたいな。
今後はイトーヨーカドーを閉じて、さらにコンビニを増やすんですよね。
食品スーパーって、コンビニとは比べものにならないぐらい利益率が低いわけです。売上はたくさんあるけど儲からない。たとえば大根1本売って30銭とか。
確かにそういうイメージです。
コンビニの収益率と比べちゃうと食品スーパーって儲からない商売なんです。
なるほど。だからコンビニにシフトするわけですね。
ただ食品スーパーってブレがないから。地域ごとの食品スーパーはずっと続いているし、一定の利益が出る。景気にも左右されにくい。コロナでも手堅い商売なんです。
じゃあ、なぜ撤退するんですか?
株主目線に合わせるしかないので。収益率だけで比較すると「儲からない事業にこれ以上突っ込むな」という話なんですよ。
株主には逆らえない?
おっしゃる通り。セブン&アイはメインの5事業がありまして。いちばん収益率のいい事業ってどこかご存じですか?
セブンじゃないんですか。
もう1個あるんですよ。抜群なのが。
何ですか?
セブン銀行。
セブン銀行ってそんなに儲かっているんですか!?
セブン銀行はもう凄いですよ。毎日チャリチャリ利益が落ちるから。
あの機械を設置しているだけですよね。
おっしゃる通り。その次がコンビニエンス事業。で、だいぶ下がるけど次が食品スーパー事業。そして、そろそろ売却と言われている飲食事業ですね。デニーズとか。
なるほど。
そして、とうとう売却が決定したのが、西武そごうです。
話を聞いてると上の2つしか残らない気がするんですけど。
そうなんですよ。
それだけでグループ全体の収益を賄えるんですか。
株主還元だけを考えたら、「即座に食品スーパー事業をたたき売って、強いところに選択と集中をせよ」ということなんです。
でもそれだけだと、だんだん利益も減っていくでしょう。
おっしゃる通り。セブン銀行とコンビニだけで拡大し続けられるかといったら、厳しいです。
ということは、また新たな事業をやるんでしょうか。
もちろんやるでしょうね。今のままだと利益も頭打ちだから。人口減少社会になると地方のコンビニは壊滅的に閉まり始めます。
コンビニが減っていくんですか。
人口減だとそうせざるを得ない。四谷の本部は真剣に次を考えてると思います。
セブン銀行はなぜそんなに儲かるんですか。銀行はATMが儲からないから設置しなくなったわけですよね。
セブン銀行は「振り込みと出金」に特化しているからです。
特化してるから儲かるんですか?
あのATMにいろんな地方銀行の「ここで下ろせる」という機能が付いてるわけです。
そんなのは都銀のATMにも付いてたじゃないですか。手数料だけでそんなに儲かるなら、なぜ他の銀行は撤退したんでしょう。
家賃が高いんですよ。
家賃?
銀行の場合は物件を借りて、ATMコーナーを設置しなきゃいけない。
採算が合わないってことですか。
街にあるATM1台の月間維持費って知ってますか?
いや、知りません。
月間30万ですよ。
家賃が高いんですか?
家賃と、電気代と、メンテナンス料ですね。だけどコンビニだとどうですか?
コンビニの中につくれば家賃は必要ないですよね。
おっしゃる通り。コンビニは24時間開いてる。間違いなく人も来る。電気もついてるしエアコンも効いてる。一緒にメンテナンスもしてくれる。
なるほど!言われてみればよくできてますね。
凄いモデルですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。