第5回 広告はない方がいい?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第5回 広告はない方がいい?

安田
株式会社MAMENOKI COMPANYは、今年の4月で6期目に入られたとのことですが、事業内容について改めてお聞きしてもいいですか?

中辻
フロント事業はポスティングです。ただ最近では、単にチラシを配る会社というよりは、販促戦略や集客支援みたいな傾向の方が強いですね。
安田
中辻さんは専務としてお客様とやり取りしているわけですよね?営業をして、納品も見て、会社のお金の使い方も考えているわけでしょ?マネジメントもしているんですもんね。

中辻
そうですね。代表は(ペイント王の)久保さんですが、久保さんは年1回、決算書を見るくらいで(笑)。もちろん相談はしますが、一応、いろいろな決裁権は私に委ねてもらっていますね。
安田
素晴らしい。実質、ペイント王の久保社長が出資した会社を中辻さんが経営しているという感じですよね?

中辻
はい、そのとおりです。
安田
さらに6年目にして毎年黒字なんでしたっけ?

中辻
えっと、2期目だけは赤字でした。会社を大きくするための先行投資もあったので。それ以外は全部黒字決算してますね。
安田
2期目は何に投資したんですか?

中辻
主に採用ですね。社内の社員採用と、私たちが作ったチラシを配ってくれるポスティングスタッフさんの採用です。
安田
なるほどなるほど。ちなみに、今や本体のペイント王よりも利益が出ているという噂を聞いたんですが、ホントなんでしょうか?(笑)

中辻
えっと……まあ……どうでしょうね(笑)。あんまり言うと久保さんに怒られちゃうんですが(笑)、塗装業界はコロナの風当たりも正直強かったですからね。
安田
確かにそうですね。ところで中辻さんって「広告」をどう捉えているんですか?

中辻
そうだなあ……。私、広告屋さんをしていますけど、大前提として広告はない方がいいと思っているんですよ。
安田
へえ、そうなんですか!

中辻
はい。広告しなくても集客できるのが一番いいな、と。実際にウチは今そういう状況なんです。
安田
それはすごい。でも最初からそういう状況だったわけではないですよね?

中辻
そうですね。起業して2年目頃までは、いわゆるWebのリスティング広告とかLPを使って集客していました。でも今はもうクチコミや紹介だけでお問い合わせをいただけるようになって。
安田
広告を一切やらなくてよくなっているわけですね。

中辻
はい。やっぱりそういう状態が理想形で、お客様にもそうなってもらいたいんです。
安田
ということは、お客さんが将来「MAMENOKI COMPANY、今までありがとう。もう必要なくなったよ」っていうのがゴールなんですか?

中辻
私の中ではそうですね。そこに至るのは簡単ではないのでチラシやWeb広告で対応させてもらうわけですけど、「広告を打たなくても問い合わせが入る状態が理想」っていうのはブレずに思っていますね。
安田
なるほど、すごいですね。

中辻
その状態になるために日本ポスティングセンターを利用してほしい、私たちはそのために全力でお手伝いをする。そんな気持ちで取り組んでいます。
安田
素晴らしいですね。でも、広告なしで売れることをゴールにしたら、お客さんがいなくなっちゃいませんか。

中辻
世の中にはまだそこに行き着いていない会社がたくさんありますから。だからウチのお客さんがいなくなっちゃうってことはないですね。
安田
なるほどなあ。むしろ「卒業」したお客さんのクチコミで、どんどん問い合わせが増えていくような気もします。

中辻
そうなんです。実際「卒業」したお客様からご紹介いただく機会もすごく多いです。
安田
すごいなあ。それは嬉しいですね。ちなみに今、会社は女性だけで成り立っているんですよね?

中辻
はい、社内で雇用している従業員は全員女性で、私も含めて6名です。
安田
今期の売上目標はどれくらいなんですか?

中辻
今ちょうど5期目の決算をしているところで、それがたぶん2億円弱で着地するので、6期目は最低でも2億7,000万円くらいを目指しています。
安田
すごいですね。株主であり社長でもある久保さんから、「もっと売れ!」とか、「もっと儲けろ!」とプレッシャーをかけられているんですか?(笑)

中辻
いえ、そういったことは一切言われないですね(笑)。毎年決算書は見せますが、経営については、何も言われないです。
安田
でも実際、売上や利益を増やし続けるのは大変ですよね。それでも「会社をより成長させよう」と頑張れるのはなぜなんでしょう。

中辻
理由は2つあります。1つ目はポスティング業界を変えたいということ。今、世の中にあるポスティング会社さんって、「配る」ことが目的になっていると思うんです。だからチラシ自体が「安かろう悪かろう」「数打ちゃ当たる」というイメージになっている。そこを覆したいな、と。
安田
ほ~、なるほど。

中辻
2つ目は、女性が自立できる会社を作りたいということ。私自身が若い時に出産・離婚をして、シングルマザーとして働く中で、不自由に思うこともたくさんあったんですよね。だから、女性がそういう思いをせずに輝けるような会社を作りたい、っていう思いが強くあるんです。
安田
女性が本当の意味で働きやすい会社を作りたい。それも原動力になっているんですね。では次回はそのあたりをもう少し詳しく聞かせていただこうと思います。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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