2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第306回「大企業の出世事情」
第307回「マルチタスクが苦手な高学歴人材」
慶応大卒なのに年収200万の非正規雇用を選ぶ人がいるそうです。
それはかなりマイノリティーを取り上げた記事だと思いますよ。僕はこういう人には会ったことがないです。
そうですよね。大企業に入るために高い学費を払って学歴を買っているわけで。
親は泣きますよ。慶応を出てなぜ年収200万でいいのか、逆に聞いてみたい。
まあ、こういう人が一定数いるのはわかりますけど。実家に住んで非正規で働き、副業で好きなことをしてちょっと稼ぎ、好きな時間に起きて、楽しく生きていくっていう。
だったら卒業する必要ないですよね。
確かに。そもそも慶應大学に入るぐらいだから、ストイックに勉強してきた人だと思うんですけど。何がきっかけでこういう風になっちゃうんでしょう。
この記事によると一旦大手に入って、残業ですごく疲れ果てて、2年で退社したって書いてある。けどこれは本当のことを言ってないような気がします。
じつは違う理由で辞めたってことですか?
僕の推測だけど、多分この人は仕事ができないんだと思う。
慶應大卒なのに。
勉強はできるけど仕事ができない人って、高学歴層に一定数いるじゃないですか。
いますね。確かに。
おそらくそのゾーンの人なんだろうな、というのが僕の経験則です。
なるほど。ちなみに高学歴で仕事ができない人って何が足りないんですか?記憶力も計算力も高いはずですけど。
仕事ができない高学歴は、まず同時並行処理が苦手。1つのことをずっとやるのは得意だけどa、b、c、d、e同時並行ができない。並行処理能力がないと大企業はキツいんですよ。
そうなんですね。
2つ目は、仕事が遅いんだと思います。
ひとつのことしか出来ないのに仕事が遅い?それは困りますね。
飲み込みも遅いし、業務処理スピードも遅いし、相談してくるタイミングも遅い。
飲み込みが遅い?それって受験勉強に必要な能力だと思いますけど。
みんなそう思ってるから「なんで慶應なのにそんなに理解力低いの?」みたいに言われるわけですよ。
そりゃあ思うでしょう。それで慶應に合格できるんでしょうか?
勉強って自分のペースできるし、1つのことをずっとやっててもいいわけじゃないですか。結果的に試験で点数が取れれば全て正当化されるので。
理解が遅くてもコツコツやれば合格できると。
受験勉強ってある意味、こういう人にとってはすごく成果が出しやすい分野なんです。1番向いているわけですよ。
へえ〜。そうなんですね。
昔だったらそれでも良かったんです。慶應だというだけで先輩から可愛がられたりして。だけど今は大企業も厳しいから。
確かに。入ってしまえば一生安泰なんていう時代じゃないですもんね、今ね。
並行処理能力が乏しくて、スピードも遅い高学歴の人って、もう針のムシロみたいな生活なんですよ。
今までエリートだったのに突然ダメなやつになっちゃって。
「毎日22時までやって疲れ果てた」って言ってるけど、それあなたの能力の問題でしょって。
仕事ができないだけでしょうと。厳しい。それで辞めざるを得なくなった。
というより恥をかいちゃったんですよ。1番大事な自尊心を傷つけられた。だから非正規に逃げてるところはあると思います。
自由な働き方がしたいとか、sns系の仕事が好きだとか言ってますけど。じつは活躍できなかった裏返しだと。
僕はそう感じます。言ってることが上辺だけの話に聞こえる。
もし石塚さんがその子の親だったらどうしますか。
話を聞いて本人にフィードバックすると思います。同時並行処理が苦手なのか、スピードが付いていけないのか。それによって次の転職先を考える。思い切って老舗企業に転職させるとか。
老舗企業はそういうことが苦手でも大丈夫なんですか?
ゆっくり丁寧な方がいい仕事ってあるんですよ。こういうタイプって成長スピードはゆっくりだけど3年、4年もやってたらできるようになるから。
慶応に入るぐらいですからコツコツ勉強する真面目な人なんでしょうね。ちなみに老舗企業は採用してくれるんでしょうか。
「うちにも慶応の学生が来てくれたんだ」って社長さんも喜ぶでしょう。ただし面接では正直に言うべきですね。そしたら「いいよ、いいよ、一緒に頑張ろう」なんて言ってもらえて。人不足だし、老舗企業は長く働いてほしいから。絶対に合ってますよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。