【新連載】第1回 官僚になった理由

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第1回 官僚になった理由

安田
今回から、元官僚で現在は起業家でいらっしゃる酒井さんとお話していきます。酒井さんは以前から私のことを知ってくださっていたそうですね。

酒井
ええ。ワイキューブさんを見て、思い切ったことをする会社だなあと(笑)。『千円札は拾うな』などの著作もおもしろく拝読してました。
安田
それにしても、すごい人生を歩まれてますよね。東大法学部を出て官僚になって、でもそんなすごいキャリアをあっさり捨てて、民間企業の経営者に。

酒井
確かに、なかなか珍しいタイプかもしれません(笑)。
安田
実際のところ、官僚っていうのはどういう方たちなんですか?やっぱりエリート意識があったりするんですか。「俺は国を動かすために生まれてきたんだ」というような。

酒井
東大法学部というのがそもそも官僚を作るためにできた学部なんですね。そのための教育を受けて日々を過ごすので、国家運営について考えることは自然多くなりますよね。
安田
周りにいるのもそういう思考の学生さんですしね。

酒井
そうそう。同じような仲間と酒を飲んだり麻雀打ったりするわけなので(笑)。まあ、官僚だけじゃなく弁護士になったり、外資系のコンサルに進む人も多かったですけど。
安田
酒井さんご自身はなぜ官僚になったんですか?さっき言ったようなエリート意識、もとい愛国心のためなのか、はたまた儲かりそうだから選んだのか。

酒井
いやいや(笑)。私が入省した頃、今から30年前くらいにはもう、官僚=儲かるというイメージはありませんでした。かといって、愛国心かと言われると、ちょっと違うかもしれませんけど。
安田
でも、何かしら魅力を感じられたわけでしょう?

酒井
そうですね。端的に言えば、面白そうだなと思ったんですよね。国家運営を仕事として捉えると、これほどやりがいのあるものはないだろうと。
安田
確かにそうかもしれません。優秀な高学歴の人が集まって、大きなプロジェクトに挑んでいくわけですもんね。

酒井
ええ。やっぱり皆、視座が高いんですよ。それは「勉強ができる」という事とは少し違うんですが。
安田
普通の人とは見るポイントが違うということですか。

酒井
まさにそういう感じです。例えば私が入った経済産業省(当時は通産省)は、省庁の中でもかなり“変わり者”が集まってると言われたところで。
安田
へえ、どういうところが変わってるんですか?

酒井
学生面接からしておもしろかったんですが、「君は通産省は必要だと思うか」みたいなことを聞かれるわけですよ、通産省の面接なのに(笑)。
安田
なるほど(笑)。会社の面接に行って、「うちの会社は必要か」なんて聞きませんもんね。

酒井
そうですよね。だからやっぱり視座が違うなと。こういう人たちと働くのはおもしろそうだなと思ったのを覚えてます。
安田
でも、例えば報酬という意味では、それこそ外資系のコンサルとかの方が高いわけですよね。そういう点は気にならなかったんですか?

酒井
そうですねえ。当時はまだ20代前半ですから、お金の大事さをわかっていなかったという部分はあるかもしれませんけれど。でも、それより仕事の中身が大事だと思ったんですよね。
安田
仕事の中身。やりがいとかそういうことですか?

酒井
ええ。これは時代もあると思いますけど、当時の私は仕事って毎日16時間くらい働くものと思ってましたから(笑)。せっかく16時間も働くなら面白い仕事をしたいなあと。
安田
なるほど(笑)。確かに頭は抜群にいいわけで、お金に関しては後からでも全然稼げそうですもんね。

酒井
いや、どうでしょう。多少はそんな意識もあったかもしれませんけど(笑)。実際私も6年で官僚を辞めているので。
安田
ちなみに最近はどうなんですか?今でも東大のトップクラス人材はやっぱり官僚になっているんですか?

酒井
いや、圧倒的に減りました。過去にはいわゆるキャリア官僚の8割が東大出身という時代がありましたけど、今は3割4割くらいじゃないですかね。
安田
へえ。つまり、優秀な人材はもう官僚になりたがらないと。酒井さんはなぜだと思います?

酒井
そうですね。一概には言えませんが、「世間からの見え方」というのは大きい気がします。つまり、官僚があまり尊敬されない時代になってしまった。
安田
ああ、なるほど。せっかく「俺が国を良くしてやるぞ」と入っても、世の中がそれを評価してくれない。

酒井
私が入省した頃にも官僚を叩く向きはありましたけど、それでも尊敬の念はあったように思うんです。それがこの30年で完全になくなっちゃった気がします。
安田
政治家もそうですもんね。世間からは金食い虫くらいにしか思われていない。

酒井
ええ。最近だと地方選挙なんかは、立候補者がいなくて困ってるみたいな話もよく聞きます。
安田
確かに。そう考えるとやはり「国民から尊敬される」というのは重要なポイントなのかもしれません。

酒井
そうでしょうね。なかなか難しい時代だと思います。
安田
ありがとうございます。では次回は、それなりに国民からの尊敬もあった時代に、なぜ酒井さんは官僚を辞めたのかについて掘り下げていければと思います。

酒井
よろしくお願いします。でも、どこまで喋っていいものか、難しいですね(笑)。

 


対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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