第54回「替え刃モデル…とは違った、新しいビジネスモデルの予感」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第54回「替え刃モデル…とは違った、新しいビジネスモデルの予感」


「世界で一番、お肉がおいしく焼けるフライパン」

愛知県碧南市にある、
従業員数30名の石川鋳造株式会社。

80年以上もの歴史ある会社です。

自動車部品の製造から、
水道部品の製造、
重機・ロボット等の産業機械部品の製造、
などなど、中小企業にありがちな
あらゆる産業のニーズに合った製品作りを
しているようです。

しかしながら、
時代の流れ、さまざまな理由により、
売上が減少。

危機感を感じた社長の
石川 鋼逸氏は、
新しい事業の柱を作りたいとの思いから、
自社製品であるフライパンの開発を開始。

いまでは入荷3年待ちとなるほどの
大ヒット商品となりました。

とここまで読まれた方は、
ん?普通の成功物語では?
と思われたのではないでしょうか?

しかし、今回、私がお伝えしたいのは、
売れているフライパンのことではありません。

なんと、面白いことに、
「お肉のサブスク(サブスクリプション)」を
やっているのです!

Free-PhotosによるPixabayからの画像

いまさら説明するまでもありませんが、
サブスク(サブスクリプション)とは、
定期購入のことです。

このお肉のサブスクでは、月額10,800円で、
4社のお肉屋さんが厳選したお肉を、
毎月届けてくれるというもの。
さらに、このお肉のサブスク契約中は、
なんと、石川鋳造株式会社が手掛けている
フライパンを無償で貸し出してくれます。

これはよく考えられているな、と
感動しました。

フライパンを売ろうとするのは当然です。
そこをお肉のサブスクで、
フライパンは無償で貸し出す。

フライパンは1万円以上するものです。
「世界で1番お肉が美味しく焼ける」という
コンセプトの元、あえて厚みをもたせ、
塗装やコーティングを一切使わず、
食べる人への作った職人の「おもい」をかけて、
「おもいのフライパン」と命名。

前述したように口コミで広まり、
一時は入荷3年待ちにまでなったフライパンです。

とは言え、1万円以上するフライパンですから、
購入を渋る人がいて当然です。
また、購入していただいたとしても、
次にこのフライパンを購入していただく
(リピートしてもらう)のはいつになるかわかりません。
(商品が良ければ良いほど、耐久性にも優れていますしね)

この2つの問題をうまく解決しているのが、
「お肉のサブスク」です。

1万円以上のフライパンを買うのはためらうけど、
月に1回、1万円の厳選肉は購入したいと、
サブスクを契約する人はいます。
そこに、無償でフライパンがあれば、当然使います。
使ってみて、その素晴らしさに触れれば、
サブスク契約解除後にフライパンを購入していただけるかも
しれません。

また、フライパンを購入した人にも、
お肉のサブスクというサービスであれば、
リピートに近い形で購入していただけます。

ジレットというカミソリメーカーが、
100年以上前に、カミソリの本体をタダで配り、
替え刃の販売で儲けたという話は有名です。

今回のお肉のサブスクは、
この替え刃ビジネスの上を行くサービスでは、
ないでしょうか?

 

 

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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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