第160回「安く買い叩かれる古本に価値をつけて売るという小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「安く買い叩かれる古本に価値をつけて売るという小さなブルーオーシャン」


「本の持ち主の体験を売り、若者が集まる本屋さん」

― 書店 ―
私は子どもの頃は、
商店街があり、その一角に本屋、
つまり書店がありました。
店先に並んだ「少年ジャンプ」を
毎週立ち読みしていました(笑)

調査によると、
現在全国の書店数は約1万2000店舗。
10年前に比べると3割減だそうです。

電子書籍化や
オンライン販売、
コンビニエンスストアでの書籍販売などが、
減少理由だとは思います。
書店もまた衰退業界のなのでしょうか。

さて、そんな中、
2022年3月に東京の神保町に
オープンした書店が話題だそうです。

ご存知の方も多いとは思いますが、
神保町という街を知らない人のために
少し説明すると、東京都千代田区の北部に位置し、
少し歩けば皇居があります。
この神保町、世界最大規模の書店・古書店街
として知られていて、他にもスキー用品や
カレーライスのメッカとも言われている街です。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

その神保町の一角に話題となっている
「パサージュ」があります。

何が話題なんでしょうか?

パサージュは一般の書店や古本屋と違い、
「共同書店」というシステムを取っており、
それぞれの棚に店主がいるそうです。
そして、その店主自身が売りたい本を
好きな値付けで販売する。
新品でも古本でも構わないそうです。

一般的に古本は、
市場における貴重性を除けば、
状態の良い本、きれいな本が高く売れ、
状態が悪い本、汚い本つまり、
折れや曲がりがあったり、
書き込みがあったりする本は、
驚くほど安い値段で買い取られます。
中には値がつかないけど、
無料で引き取ります、などということも
あったりします。

しかし、このパサージュでは、
店主が売りたい本を
好きな金額で売る。
そして、それが売れていくそうです。
なぜ売れるのか?
それは、本自体を売っているのではなく、
店主の体験をそのまま売っているから、
というのが、このパサージュの仕掛け人、
ALL REVIEWS社の由井緑郎社長です。

例えば、
店主の気になった部分に
メモや付せんをしていれば、
本を購入した方は、
店主の追体験ができるわけです。
これを付加価値にしたわけです。

現在は、この棚が人気となり、
購入した店主の抽選会は、
倍率が30~40倍。

客層も、オープン直後は
古本好きの中年男性が多かったものの、
現在は若年層が多く来店するようになり、
派手な髪型をした男女が、
本を見て楽しそうに会話をしているそうです。

書店を作ったわけではなく、
本棚の場所売りをしたこと。
そして、本そのものを販売するのではなく、
本の持ち主の追体験を販売したこと。

この組み合わせで、新しいビジネスモデルを
誕生させた小さなブルーオーシャンでした。

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PASSAGE by ALL REVIEWS
東京都千代田区神田神保町
URL https://passage.allreviews.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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