第169回「コロナ禍を契機に再び脚光を浴びる立ち食い文化という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「コロナ禍を契機に再び脚光を浴びる立ち食い文化という小さなブルーオーシャン」


「ちょっと、サクッと腹に何か入れたいなぁ」
「ちょっと飲んで帰りたいけど、一人でお店に入るのはなぁ…」
「飲み足りないけど、居酒屋でガッツリってほどでもないし…」

こんな時に重宝するのが、「立ち食い」「立ち飲み」。

近年、この「立ち食い業態」が流行っていると言います。

「江戸時代からある『立ち食い』は、コロナ禍の救世主?!」

「店主、いくらだい」
「へぃ、十六文でごぜいやす」
「そうかい、金を渡すから手を出しておくれ、
ひぃ、ふぅ、みぃ、よう、いつ、むぅ、なな、やぁ…店主、いま何時でぃ」
「へぃ、『ここのつ』でごぜいやす」
「とぉ、十一、十二、十三、十四、十五、十六、御馳走様」
「ありがとうごぜいやした」

有名な古典落語「時そば」の一節です。

ご存知の方も多いと思いますが、
「立ち食い」という業態は、
過去、江戸時代にまで遡ります。

せっかちな人が多いと言われる江戸において、
そばや寿司の屋台は庶民にとって、
手軽に楽しめる、現代のファストフード。

現代でも、立ち食いそばや立ち食い寿司は、
受け継がれた形で残っています。

しかし、現代の社会情勢やニーズの変化により、
さらなる立ち食い文化が注目を浴びているようです。

スリー素材ドットコムからの画像

2023年4月に総務省統計局が発表した
「サービス産業動向調査」の2023年2月分結果(速報)
によると、飲食店などを含む「宿泊業,飲食サービス業」が
11か月連続で売上高が増加しており、
サービス産業の売上高増加に寄与していることを報告しています。

コロナ禍では飲食サービス業のビジネス全体が停滞し、
生活者のライフスタイルの変化から
各店舗でテイクアウトやデリバリーサービスを始める
といった動きがみられました。

そして、外食ニーズが徐々に回復しつつある
アフターコロナにおいて、
生活者の意識や市場環境にまた変化が
出てきているようなのです。

「『立ち食い』業態が流行る、3つの理由とは?」

ご承知の通り、外食業界では、
これまでの業態では通用しなくなり、
業態転換を行う企業が増えました。

飲食スペースをなくし、
店頭で渡すテイクアウト専門店や、
一人で食事ができるいわゆる黙食専門店などから、
唐揚げやフルーツサンド、焼き肉、寿司など、
多くの業態が話題となりました

そしていま、ブームとなっているのが、
「立ち食い」の業態です。

なぜ、こんなにも立ち食いの業態が
流行っているのでしょうか?

まず、立ち食いの利点としては、
少人数での利用が容易であることが挙げられます。
カウンターや小規模店舗が多いため、
1人から数人での来店が主流となっています。
これにより、感染リスクを軽減しながら
気軽に外食を楽しむことができます。
また、客側も知人や信頼関係のある人々
との来店が増えるため、感染の不安も軽減されます。

2つ目に、立ち食いの店舗は滞在時間が短いことも特徴です。
平均的な客の滞在時間は約30分程度と言われており、
気軽な「気分転換の場所」として利用されています。
これにより、外出時間を最小限に抑えることができるため、
多忙な現代人にとっては大変便利な選択肢となっています。

また、立ち食いの業態が注目される
もう一つの理由は、コミュニケーションのあり方の変化です。

新規グルメ系の立ち食い店では、一見さんが主流となり、
気軽さと自由度が重視されています。
立ち食いの場合、食べる行為そのものを目的としており、
時間をかけた会話やサービスを待つ必要がありません。
このようなスタイルは、現代のスピーディーな生活に
マッチしており、多くの人々に受け入れられています。

とはいえ、コミュニケーションそのものが
なくなったとも言えません。

コロナ禍で、大型の宴会が減りました。
2次会、3次会まで行かなくなっています。
そこで求められているのが、もう少し飲みたいと思ったときに、
一人で気軽に行ける店。
一杯飲み屋としての立ち飲み屋は、
なじみ客同士や客と店との個人間の
コミュニケーションが豊かです。
また、気の置けない仲間や親しい同僚などとの
少人数の飲み会は増えているようです。

コロナ禍による外食ニーズの変化や
少人数での利用の便利さなどから、
立ち食い、立ち飲みの業態が再び流行しています。

今回は、見方や捉え方を変えることで変化した
小さなブルーオーシャンでした。

 

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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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