第15回 日本にバブル景気が復活する時。

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第15回 日本にバブル景気が復活する時。

安田
今日は日本のバブル期についてお話をしたいなと。私、当時のイケイケドンドンな時代の再来を夢見ている政治家が、今もまだ多いと思っているんです。鈴木さんは長く経営者として活躍されてきたわけですが、バブルの再来はあると思いますか?

鈴木
バブル期がもう1回くるかって? いや、ないんじゃないですか(笑)。
安田
ほう、なぜそう思われます?

鈴木
そもそも僕は、社会人としてバブルを経験したわけではないんです。当時は高校生くらいで、「給料が一気にあがった」とか「ボーナスの金額がすごかった」とか、そういうリアルな景気のよさを体感したことはなくて。
安田
ははあ、なるほど。じゃあなおのこと、もう1回バブルになってもらって、それを経験したいと思いませんか?

鈴木
うーん、どうかなあ(笑)。あの頃のバブル景気って、所詮作られた幻想のように感じちゃうんですよ。実力以上のまさに「バブル」を見せられていた、というか。
安田
まあ、見事に弾けてしまったからこそ「バブル」と呼ばれるわけで(笑)。

鈴木
笑。ちなみに安田さんはバブルを経験されていらっしゃるんでしたっけ?
安田
ええ。リクルート社に入社して1年目が、ちょうどバブルの最後の年でした。

鈴木
ああ、そうでしたか。実際、どんな感じだったんですか?
安田
そうですねえ。当時私は営業をしていたんですが、企業さんから新卒採用したいと電話があると「文系なら1人200万円、理系なら1人300万円かかります」なんて言ってました。相手も「わかりました。それくらいかかりますよね」って軽く返ってくるような時代で(笑)。

鈴木
1人300万!? いやでもさすがに、それはお金を持っている大企業への提案でしょう?
安田
いやいや、社員数15人くらいの普通の中小企業にもこういう提案をしてました。(笑)。

鈴木
本当ですか!? うわ〜、つまり、10人採用するなら3000万円必要だったということか……今じゃ考えられませんね(笑)。
安田
しかも、入社辞退を防ぐために内定者を海外旅行につれて行く、なんてことも当たり前でしたからね(笑)。

鈴木
それ、もう接待じゃないですか(笑)。本当にすごい時代だったんですね。金銭感覚が麻痺した人が多かったのも納得です。
安田
それで改めての質問にはなりますが、やはりもう日本にはバブルの再来はなさそうですか? もうあんな時代は戻ってきませんかね?(笑)

鈴木
今の話を聞いてなおさら、もう無いと確信しましたね(笑)。小さな波はあるかもしれないですけど、30年前のようなビッグウェーブは起こらないと思います。
安田
まあ、当時の日本経済が右肩上がりだったのは、人口が増えて消費も多かったおかげでもあると思いますからね。今はそもそも人口が減り続けているから、確かにバブルは起こりづらいのかも。

鈴木
バブル期って要するに、「実態以上に景気が上がりすぎた時代」ってことじゃないですか。そもそもそういう経済状態にしたのは誰なんでしょうね?
安田
「景気」と言うくらいですから、結局は「気分」なんじゃないですか? 当時は国民全体が「給料は増え続けるぞ」とか「家は買った時よりも高く売れるんだ」って信じ込んでいたわけで。

鈴木
みんなの「気分」が実態以上の景気を作り上げていた、と。
安田
私はそうじゃないかなと思いますね。当時は本当にみんながみんな、湯水のごとくお金を使っていましたから(笑)。

鈴木
笑。景気なんて、悪いと言い続ければ悪くなるし、良いと言い続ければどんどん上向きになるものなのかもしれないですね。
安田
ええ、たぶん「景気」の良し悪しは、人の感情や感覚が大きなウェイトを占めているんだと思います。

鈴木
確かにバブルの頃は大きな道路がどんどん開通したり、新幹線の路線もバンバン増えたりしていたわけで。そういう目に見える変化のおかげで、日本人全体が「景気が良いな〜」って思えていたのかも。
安田
今の時代には人の感情を上向かせてくれるような、インパクトのある「良い変化」なんてないですからね。ともあれ、なんとか景気は良くしていきたい。個人的に今の日本の景気を上向かせる可能性があるとしたら、「観光大国」としてのポジションなのではないかと思っているんです。

鈴木
ああ、確かに。コロナ禍で一時激減していたものの、今はまたインバウンドで外国人の方がたくさん来日していますものね。
安田
そうなんですよ。だから日本はこれまでの「ものづくり」路線から「サービス業」へと転換することで、ひょっとしたらバブルに繋がるんじゃないのかな、と。日本には地方にも魅力的な場所や美味しい食事、独特の文化がたくさんありますから。

鈴木
観光産業を主流にしたらいいということですか。ハワイのように?
安田
そうです。テクノロジーではなくカルチャーで世界と戦うのはどうか、と。サービス業でバブルの再来を狙う感じです。

鈴木
おお、なるほど。でも今、サービス業は人材も宿泊施設も全く足りていないじゃないですか。そんな状態で世界と戦えるんでしょうか?
安田
足りないからこそ、価格を上げられるんです。すると1人あたりの収入が増えていくじゃないですか。それがバブルの再来に向けていい傾向だといえると思うんですよね。

鈴木
確かにそうかもしれません。そういえば名古屋にも初の超高級ホテルができるんですよ。1泊60万円する部屋もあるらしいです(笑)。……そう考えてみると、この値段高騰はバブルっぽくもありますね。
安田
ええ、まさにそうなんです。恐らくその値段設定は、海外からくる「本物のお金持ち」向けですよね。つまり海外の人にお金を払ってもらう形で、バブルの再来を目指すと。

鈴木
海外のお金持ちを狙って景気回復! というわけですね。
安田
そういうことです。だって、日本に住んでる日本人は1泊50万円とか100万円とかする部屋に泊まりたいとは思わないでしょう? でも富豪の方たちは、せっかく日本まで来たんだからとびきりいいホテルに泊まりたいと思う。

鈴木
そういう方たちが日本に来て、たくさんお金を使っていってくれるわけですね。安田さんのお話を聞いていたら、なんだかバブル景気が戻ってきそうな気がしてきました(笑)。
安田
そうでしょう?(笑)。でも実は1つ課題があって。というのも、今後日本は観光で儲かるようになると気付いているのって、圧倒的に海外企業が多いらしいんです。だから国内にいくつもある高級ホテルのほとんどが外資系のホテルなんですよ。

鈴木
……なんと、それは先行き不安ですね。むしろ日本政府はいち早く「サービス業への転換」に本腰を入れるべきじゃないですか。
安田
ええ、仰る通りだと思います。この流れがバブル景気に直結するかはさておき、景気の上昇に一役買いそうなビジネスチャンスなのは間違いありません。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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