この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第25回 会社を相続するのは、家族？ 社員？
第25回 会社を相続するのは、家族？ 社員？
今日は「会社の相続」をテーマにお話ししていこうかと思います。というのも、最近「親から会社を相続したけれど苦労が絶えない」という相談を受けることが多くて。
ああ、なるほど。そういう悩みは私もよく耳にします。会社は続けなきゃいけないからとりあえず相続したけど、経営が全然うまくいかないって。
何代にもわたって引き継がれてきた会社だと、個人の意思で終わらせるのも難しいですもんね。自分で創業した会社なら、潰したり譲渡したりという選択肢も出てくるんでしょうけど。
確かにそうですね。「相続したのに自分の代で終わらせてはいけない」というプレッシャーもあるし、メンツもあるだろうし（笑）。
ですよね（笑）。だから私は、「お金を遺す」相続なら良いけれど、「社長というポジションを遺す」のは必ずしも良い相続とは言えない気がして。
ああ、確かに「自分の子供だから」というだけで会社を継がせるのは、良くないですよね。もちろん本人がやりたい場合は別ですけど。
そうそう。継ぎたいなら全然いいんです。でも、イヤイヤ会社を継いでも、苦労するのは目に見えていますよ。
仰る通りだと思います。
あと、社長が突然亡くなった場合なんかだと、遺された家族と会社の役員陣との間でいざこざが起こることも多いみたいですね。
誰が社長を継ぐかで揉めるんですか？
ええ。「親父は俺に継いでもらいたいと思っていたはずだ」「いえ、先代社は私に事業を任せたいと言っていました」となるらしいです。
それは大変そうだなぁ（笑）。社長は自分の意志を遺言書に書いておかないといけませんね。
ちなみに鈴木さんは、前々から60歳で社長を引退すると宣言されていますよね。次期社長を誰に任せるのか、もう決めていらっしゃるんですか？
ええ、決まってます。次に誰がこの会社を継ぐのか、既に社員全員が知っている状態です。だから僕が死んだ後に揉めることはないはず（笑）。
それは安心ですね（笑）。そう言われれてみると、社長が亡くなる前に、次の経営者も社内に入れておく必要があるんですよね。
そうですねぇ。今まで社内にいなかった人が、「今日から私が社長です」なんて言っても社員は納得いかないでしょう。本人だって、会社の業務がわからない状態で経営なんてできないでしょうし。
ええ。実際、「社長が二代目に変わった途端に社員が続々退職しちゃう」なんてこともあるじゃないですか。
ありますねぇ。先代社長の下で長く働いていた優秀な社員たちが、新社長である息子の方針に合わなくて辞めちゃうと。で、結局、経営も悪化してしまって。
そういうこともあるからこそ、「プラスの相続にするにはどうするか」を、自分が生きているうちに考えておかないといけないなと。
本当にそうですね。
ところで最近は、「自分で興した会社を家族に継がせる気はない」という社長さんも増えているんですって。
へぇ、そうなんですね。それは相続問題で揉めるのが嫌だから？
そういう想いもあるかもしれませんが、そもそも会社の「事業」は誰のものなのか、ということですよね。家族じゃなく社員と一緒にやってきたものなんだから、社員に遺すべきなんじゃないかという。
ああ、なるほど！
だから私は、会社の株で得られる「利益」については家族に遺して、「事業」は社員に遺す。こういう相続のやり方があっても良いんじゃないのかなと思っています。
それはすごく合理的ですね！ 家族だからという理由で会社のすべてを相続させるのではなく、「事業」と「利益」を分けて相続する。社員と遺族にとってWin-Winな結果が得られそうです。
対談している二人
安田 佳生（やすだ よしお）
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク（BFI）代表。
