第30回 僧侶のセカンドビジネス

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第30回 僧侶のセカンドビジネス

安田
私、お坊さんというビジネスについて、以前から不思議に思っていることがあるんです。

鈴木
ほう、なんでしょうか。
安田
お坊さんって、お葬式やお墓など「死」に関連したビジネスだと思うんですが、それ以外で稼いじゃいけない決まりでもあるのかなと。

鈴木
いえ、それはないですよ。
安田
ですよね? じゃあなんでお坊さんたちは、「死」以外で稼ごうとしないんでしょうか。

鈴木
う〜ん、江戸時代あたりは「檀家制度」によって、ある意味市民がお坊さんたちの生活を守っていたわけです。要はお寺は檀家からの寄付で成り立っていた。そういう意味では、そもそも「ビジネス」という感覚ではなかったんじゃないかな。
安田
確かに成り立ちはそうだったと思うんです。でも時代が進み、最近はお坊さんを呼んで読経してもらう機会も稀ですし、何なら墓じまいする方も増えている。お坊さんが必要とされる場面がどんどん減ってきていますよね。

鈴木
確かにそうですね。お坊さんとの接点はお葬式の時だけ、という方も多いかもしれない。
安田
ええ。人が亡くなった時、「葬儀」と「火葬」は欠かせないものですが、それ以外は今後ますます不要論が増えてくると思うんですよね。

鈴木
それ以外というと、戒名とかそういうものですかね。
安田
そうですそうです。さらに言えば、葬儀にもお坊さんはいらないんじゃないかって人が出てくるかもしれない。

鈴木
ああ、確かにそういう方もいますね。「ウチは無宗教だから、お坊さんに金を払う意味がわからん」なんてストレートに言われたこともあります(笑)。
安田
そうなんですね(笑)。ともあれ、大なり小なり「宗教離れ」のようなものが進む中で、お坊さんたちはどうやって食べていくんだろうって。他人事ながらちょっと心配しているんです(笑)。

鈴木
まぁ、さすがに葬儀や供養の場にお坊さんが来なくなる、なんて世界にはならないと思いますよ。
安田
そうですか? どうしてそう思われるんでしょう。

鈴木
人間には心の弱さがあるからです。気持ちが弱くなったときには、やっぱり何かに頼りたい。大切な人が亡くなったときには、お坊さんが「心の拠り所」になってくれるんじゃないですかね。
安田
う〜ん、でも正直な話、しっかり寄り添ってくれるお坊さんばかりではないじゃないですか。当たりハズレがあるというか…(笑)。

鈴木
笑。確かに仕事柄いろんなお坊さんにお会いしますが、「本当に尊敬できるなぁ」と思えるお坊さんはあまり多くはありません(笑)。
安田
笑。「読経屋さん」や「戒名屋さん」になっているお坊さんも多いですよね。商売と割り切っているというか。

鈴木
ええ、残念ながらそうですね(笑)。
安田
でもある意味そうせざるを得ないのかなとも思うんです。お墓や葬儀に関連することだけでお金を稼ぐのには、もう無理があると思うので。

鈴木
他のマネタイズを考えるべきだと?
安田
ええ。実際、別の事業をされているお坊さんもいらっしゃるじゃないですか。塾や幼稚園を経営されていたり。

鈴木
そうですね。役所や学校関係者にもお坊さんは多いですよ。あとは都市部のお坊さんたちは不動産関係、ディベロッパーもやったりしてますよね。
安田
え、ディベロッパーですか?!

鈴木

はい。自分たちの持っている土地を駐車場にして貸し出しているパターン、多いですよ。

安田
へ〜、そうなんですね。

鈴木
ええ。宗教法人だから本業の方に相続税や固定資産税はかからないし、お布施にももちろん課税はない。余っている土地を駐車場として貸した場合は課税されますが、毎月安定して収益が上がる。都市部のお坊さんは意外とリッチだと思いますよ(笑)。
安田
なるほどなぁ。墓じまいされて檀家さんが減っても、それほど困らないと(笑)。

鈴木
そうそう。それにお墓が減っていっても、納骨堂を作ればいいわけですから。ただ、駐車場にしても納骨堂にしても、都市部でしか成り立たないとは思いますけどね。
安田
あぁそうか。地方では駐車場なんて無料なのが当たり前だから、駐車場ビジネスでは儲けられないと。

鈴木
そうなんですよ。だから田舎のお坊さんはちょっと大変でしょうね。でもでもほとんどのお坊さんたちは、「そろそろ本業以外で稼いでいかなきゃならん」という危機感は持っていると思いますよ。
安田
なるほどなぁ。お坊さんたちも先を見据えて動いているわけですか。私が心配する必要なかったですね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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