第53回 余命を意識することが人生の充実につながる

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第53回 余命を意識することが人生の充実につながる

安田
人間は、余命何日だと宣告されたら、意識と行動を変えると思われますか?

鈴木
え、どうしたんですか、突然(笑)。
安田
実は最近よくこういうことを考えていて(笑)。というのも余命宣告された人って、意識や行動が変わっていくと思うんですよね。

鈴木
それはそうでしょうね。もう死ぬとわかってるのに、今までと同じような生活を続けることはできないでしょう。
安田
ええ。余命3日と言われたら、1時間だって無駄にしないように真剣に生きるはず。でも余命3年だったら?

鈴木
あぁ…3年は結構ありますね(笑)。
安田
ですよね。それに我々だって、言ってみてたら余命30年とか40年みたいなもんですよ。それくらいの期間になってくると、余命なんてあってないようなものという感覚になる(笑)。

鈴木
確かに「俺は余命40年か。よし、行動を変えよう!」とはならないかもしれない(笑)。
安田
でしょう? となると、「行動を変える境目」は余命何日なんでしょうか。ちなみに鈴木さんは、余命3日と言われても、変わらずゴルフはしますか?

鈴木
健康なのであれば、最期に1回くらいはやっておきましょうかね。
安田
あ、1日だけでいいんですか?

鈴木
さすがに3日連続ではしないと思う(笑)。そういう安田さんはどうされます?
安田
私だったら家族で旅行しますかねぇ。

鈴木
それもいいですね。仕事はどうします?
安田
余命3日だったら仕事はしないでしょうね(笑)。でももし余命1年だったら…たぶん今と同じように仕事は続けているかもしれません。

鈴木

なるほど。確かに、「日々の何気ない生活を変えないことが実は一番の幸せだ」とよく言われますもんね。

安田
ですよね。そうすると余命1年ではあまり変わりそうにないですか。

鈴木
たぶん余命3ヶ月くらいが境目だと思いますね。
安田
行動を変える境目は、余命3ヶ月だと。うーん…私だったら3ヶ月もあるなら今と同じ生活を続けようかな、と思ってしまいます(笑)。

鈴木
そうですか!(笑) 安田さんは、「死ぬまでには絶対これがしたい」ってことはあんまりないですか?
安田
そうですねぇ、すぐには思いつかないということは、特にないんでしょうね(笑)。

鈴木
昔、『死ぬまでにしたい10のこと』っていう本を読んだことがあって。同名の映画を観た著名人の方々が、自分だったらどうするかというのを綴ったエッセイで。
安田
へぇ。皆さんどんなことを書かれていたんですか?

鈴木
ほとんどの人が書かれていたのが「感謝の言葉を伝える」と「謝る」。この2つでした。
安田
そうなんですね。じゃあ鈴木さんも余命あとわずかって言われたら、同じことされるんですか?

鈴木
そうですね。僕は謝ることは特にないですが(笑)、お礼を言いに行くことは絶対したいですね。……あれ、なんだか怪訝そうな顔をされていますけど、安田さんにはそういうのはないですか?(笑)
安田
ないですねぇ。私は、謝ることはもちろん感謝の気持ちも、その時その場で言うようにしているので。なんというか「宵越しの感謝」は持ち越したくないんですよ。

鈴木
そうなんですね。余命がわずかだからといって、慌ててやろうということがないと。
安田
ええ。たぶんそう思えるのって、50歳を過ぎてから終活を始めたことも影響しているかも。

鈴木
なるほど。既に終活を通じて「あれをやっておけばよかった!」を減らしていっている状態だと。
安田
そうですそうです。もちろんこれから先も、やりたいことはどんどん出てくるとは思いますけど。今の時点では「やり残していること」は全くないですね。

鈴木
そうですか。そう聞くと、「余命わずか」と言われて慌てて行動するよりいいかもしれませんね。
安田
ええ。生きている限り、余命というものは絶対にあるわけで。

鈴木
そうですね、人はいつか絶対に死にますから。
安田
それならば、時間が長く残っているうちから意識していたほうがいい。その方が人生が充実するんじゃないかなと思うわけですよ。

鈴木
それはつまり、「よし、俺の余命は30年だぞ」と意識しながら日々過ごすということですか?
安田
そういうことです。というのも、余命を意識していない人って「自分はずっと生き続けていける」という思い込みがあると思っていて。

鈴木
なるほど。いつ死ぬかを意識していないから、逆に日々をなんとなく過ごしてしまうんですね。
安田
仰る通りです。だから「終わり」を意識するのがいい気がするんです。

鈴木
なんだか「社長の引退」と同じ感じですね。いつまでに引退するから、そこから逆算して、今何をやるべきかを決めていく、という感じ。
安田
確かにそうですね。そういう意味でも常に「余命」を意識していたほうがいいとは思いますが、なかなか普通の人で「余命30年だから…」と逆算はしないですかね、やっぱり(笑)。

鈴木
あんまりそういう人はいないでしょうね(笑)。
安田
やっぱりそうか(笑)。さすがにすぐには結論が出そうにないですね(笑)。「行動を変える境目」は余命何日なのか…まだまだ考え続けていきたいと思います。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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