第93回 人不足を乗り切るには「60歳以上限定」の求人がカギ

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第93回 人不足を乗り切るには「60歳以上限定」の求人がカギ

安田
今の日本の労働人口は7000万人と言われていますけど、これが確実に3000万人まで減るらしいですね。こうなると特に中小企業は人不足がますます深刻化する。でもその一方で、最近は60歳を過ぎても働き続けている人が増えているじゃないですか。

鈴木
そうですね。70代でも当たり前に働いていたりしますもんね。うちの会社も随分平均年齢が上がってきましたよ。
安田
いいですね! …というのも、中小企業がこの人不足時代に対抗するためには、社員の平均年齢を上げることが重要だと思っていて。

鈴木
えっ、どういうことです? ウチは自然とこうなった…っていうだけなんですけど(笑)。
安田
順を追って説明しましょう。まず労働人口を世代別に見ていくと、20代はキャリアアップ世代ですよね。そして最近では、1つの会社でスキルアップして、また次の会社に移ってさらにスキルを磨いて…と、転職が当たり前になってきている。

鈴木
ふむふむ。確かにもう「新卒で入った会社で定年まで働く」なんて人はほとんどいないでしょうね。
安田
ええ。そしてそういう人たちが30代・40代になると、それまでに培ったスキルで一番稼げる会社に入るんですね。自分のキャリアのゴールになる会社です。そうなると会社側も年収1000万円くらいを払う必要がある。

鈴木
うーん、中小企業ではなかなか難しい金額やね(笑)。
安田
そうなんですよ。でもね、ここからがポイントなんですが、そういう人たちも、50代・60代となってくるとさすがに市場価値が下がる。つまりそこまで高い年収を払わなくても働いてくれるようになるわけです。

鈴木
ああ、なるほどね。そのタイミングを狙って雇うということか。
安田
そういうことです。いわゆる「終の仕事」を探している年齢の方をどんどん雇う。年齢こそ高いけど知識や経験は確かだし、マネジメントさえきちんとできれば、ちゃんと戦力になってくれるはずです。

鈴木
平均年齢を上げることが重要って、そういう意味なんですね。確かに、自分も同じ年代ですけど、まだまだ会社の役に立つ自信はあるかもしれない。
安田
そうでしょう? それになんというか、「愛社精神」みたいなものがまだ残っている世代じゃないですか。だからきっと会社のためにすごく頑張ってくれる。

鈴木

確かに確かに。…ただなぁ、限度はあるじゃないですか。頭ではまだまだやれると思っても、やっぱり歳を取れば体は動かなくなる。結局、どうしたって若手を補充していかにゃならんわけです。

安田
もちろんそうです。若手の採用も引き続きやっていく。でもさっき言ったように、彼らはもう一つの会社にいつかないんです。どう頑張っても3〜5年で転職してくわけで、だったら最初から「退職ありき」で採用するんです。

鈴木
ははぁ…辞めてしまうことを前提に採用する、ってことね。
安田
そういうことです。「5年間であなたの市場価値を上げて、有利な転職を応援します」くらい言えば、きっと応募が数倍に増えますよ。

鈴木
うーん、なるほど(笑)。確かにそこまで割り切った若手採用をしている会社なんてありませんもんね。…いやでもなぁ、そうやってどんどん辞められちゃうと、会社を支える人材が育たないじゃないですか。
安田
ええ。だから30代・40代のスペシャリストを数名だけ入れる。さっき言っていた「自分のキャリアのゴールになる会社」を探している層ですね。彼らに年収1200〜1300万円くらいの高給を支払うことで、会社のコア人材になってもらうわけです。

鈴木
うーむ、なるほど。よく考えられている(笑)。その人を中心に事業全体を動かしていくと。
安田
ええ。そして50代・60代の人材に実務をガンガンに回してもらう。要は、今までは若者がやっていたことをシニア層にお任せするんです。やっぱり3年程度では覚えられない仕事も多いじゃないですか。

鈴木
確かに仰るとおりです。案件を責任持って回してもらうには、相応の経験と知識が必要で。入社数年の若手にはだいぶ荷が重い。いや〜、重ね重ねよく考えられたプランですね(笑)。
安田
そうでしょう? それこそ50代・60代の人材にぴったりな業務じゃないですか。彼らもこれまで培った経験や技術を存分に発揮できて嬉しいだろうし。

鈴木
なるほどなぁ。ウチもさらに平均年齢を上げるべく、採用内容を変えてみようかな(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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