泉一也の『日本人の取扱説明書』第80回「建前の国」

今は本音と建前が逆効果となって、お互いに氣をすり減り、不信感の元にまでなっている。昔は円満と信頼のコミュニケーションだったのが、今は氣疲れと不信の元になっている。それには理由がある。

本音と建前、ベースは「本音」である。本音があるから建前が生まれるのだが、この本音が日本から消えた。なので、曖昧な本音という土台の上に建前があるから、建前がぐらついていて不審を生み出している。本音がしっかりしていると、建前が安定をして、互いに余計な時間を使わずに、楽に会話ができるはずなのに。

本音とは本当の音。本当の音とは、自分の「内なる声」のことである。お互いが腹を割って話す時、その内なる声を相手に開示するから、日常では建前で十分なのだ。今は、内なる声が聞こえないまま、さらに腹を割って話す非日常も減ったまま、建前を言うから不審が生まれてギスギスするのだ。

では「本音=内なる声」とは何か。それは「好き・嫌い」「したい・したくない」の間に隠されている。この間にその人の志向が眠っていて、その志向が現れてきたものが本音である。マツコデラックスや滝沢カレンは本音を自然に伝えることのできるタレントなので活躍をしている。本音で生きたいという日本人のニーズに答えているのだ。

本来はその内なる声が聞こえるように子供たちを教育してきたのだが、今は外の声を聞かせる教育に変わり、志向がわからないまま社会に出てきてしまう。さらに情報が多すぎてノイズが入り混乱もしている。

高畑充希主演の同期のサクラというドラマは、嘘くさい建前社会の中、本音で生きる姿、働く姿を見せてくれる。本音があるから建前が活きるのであって、建前を中心に生きると人生をすり減らしていく。本音をベースに生きるのは大変であるが、次第に真の仲間ができ、その助けを得て人生が豊かになっていく。それをまざまざと見せてくれるドラマなのだ。

私には夢があります。「一人一人の内なる声を引き出す橋をかけること」
私には夢があります。「お互いの志向を見つけ出す仲間の輪をつくること」
私には夢があります。「建前中心ではなく本音中心の社会にすること」

それじゃあ!

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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