泉一也の『日本人の取扱説明書』第103回「霊の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第103回「霊の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

あなたは神を信じますか?
では、霊を信じますか?

アンケート集計はしていないが、日本人がどちらをより信じるかというと「霊」ではないだろうか。

では、「神性」という言葉と「霊性」という言葉を聞いてどうだろう。

私は神性という言葉からは「陽」の氣を感じる。ギリシャ神話や聖書に現れる絶対的存在=ゴッドをイメージする。逆に霊性という言葉から、「陰」の氣を感じる。お化けの霊や、まっくろくろすけのような妖怪的なものを感じる。

霊とは何か。それは身近に感じとるエネルギー体。目に見えずさわれないが大切な存在。感じるが捉えられない、捕まえられないもの。我々はそういった裏の存在と協力しあって生きている。これを相補性という。コラムの常連さんには太極といった方が通じるかもしれない。

日本には八百万の神に代表される、すべてのものに命があるというアニミズムが底流に流れている。まさに霊を中心とした国である。「もののけ」という裏の存在のお姫様が「もののけ姫」であり、アニミズムという言葉から生まれたアニメーションの代表作であろう。

目に見えない妖怪「新型コロナ」。Covid-19といったコードネームは妖怪にはふさわしくない。霊の国ではシンコロと言いたい。妖怪ウォッチに出てきそうな名前である。妖怪と助け合って生きる日本人にとってwithシンコロは容易であろう。

疫病といえば黒死病といわれたペスト。5000万人もの人間を死亡させたが、その原因となったペスト菌を発見したのが日本人、北里柴三郎翁。さらに破傷風の治療法(血清療法)を発明するという偉業を成し遂げられたが、それが日本人というのは必然かもしれない。

最初に戻るが、神を信じますか?と問われると、絶対的なものを崇め奉るという厳かな雰囲気があるが、霊を信じますか?と問われると、見えない不確かなものを敏感に感じ取るぐらいのイメージである。

日本は今、目に見えないウイルスに右往左往している。見えない未来に不安を感じ、絶対的な指針を求めている。歴史を見ると疫病が流行った後、ヨーロッパでは教会が中心となったキリスト教が広まり、日本では国分寺を国中に建てて仏教が広まり、さらには大仏建立といった絶対的な存在を作った。日本もヨーロッパと同じように神性を求めたのだ。

日本流のウイルス対策があるとするなら、神性はほどほどにして、霊性を高めることだろう。ちょうど週刊少年ジャンプで陰陽師のマンガ「ボーンコレクション」の連載が始まった。ポンコツの主人公が唯一使える術が「妖怪術」。まさに霊性の術である。ぜひ読んでほしい。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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