泉一也の『日本人の取扱説明書』第128回「予言の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第128回「予言の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

日本は天変地異大国。いつ何時、地震に津波に噴火に台風に洪水が起こるかわからない。今でこそ、科学的な予測がある程度はできるようになったが、それでもまだまだ。日本人はこれまで少しでも未来を予見できればと、おみくじに占いに風水から陰陽師まで様々な形で予言を得てきた。

2011年3.11の東日本大震災で天変地異の流れが変わった。天災から人災に大きく変わったのだ。昔の人も同じような津波の被害に遭っていたが、その情報が廃れて、津波への警戒が緩み、被害は大きくなった。伝承が途絶えていたからだ。今回は映像や電子ファイルとして、地震や津波の被害情報はアーカイブされているので、子孫たちは同じ規模の天災にあっても被害はかなり小さくなるだろう。

それよりも、原子力発電所のメルトダウンという人災だ。非常用電源が地下にあったことで水に浸かり、全電源を失い、原子炉のコントロールが効かなくなってメルトダウンが起こった。少し考えればわかるような対策ができてなかったということは、人災といっていいだろう。

その人災は多くの人々の故郷を奪った。大規模な発電所というエネルギー源が、大きな人災の原因。人類発展のための大規模な装置。それが、大きな人災のタネとなる。原発以外にそんなエネルギー源があるだろうか。実はある。それは金融というエネルギー源。

経済の血液となるお金を増やし、その流れを生み出す装置が金融。我々の生活を豊かにしてくれるお金。金融は血液を作る骨髄である。そして発電所が作る電気のように、お金を錬金する金融が次なる人災のタネになろうとしている。

ここから占い師的に話を続けよう。眉唾で読んで欲しい。
コロナ禍は、人災と天災のミックス。ウイルスは自然界にあるから天災の一面があるが、感染のスタートは人が動物界に介入しすぎたことで野生動物から人間界に入ってきた。これは人災である。しかし、その人災は人類が滅亡するといった大きなものではなかった。感染が再拡大してもロックダウンをしないということは、人々はそれほどの災害でないと安心をしている証拠である。そこまで避難しなくてもいいだろうと。

その影に隠れている人災がある。それは金融のメルトダウン。地震の後、時間差でやってくる津波のようなもの。そして3.11ではその津波はサイレント津波となって、想定を遥かに超える高さの大津波となった。

今、サイレント津波がじわりじわりときている。サイレント津波は陸地の近くの海底がずれていたことで、普段の津波を跳ね上げさせたわけだが、同じように海底のズレのようなことが今おこっている。それは、株価が異常に高いことだ。

常識的に考えて分かるが、経済活動は過去と比べて世界的に弱まっている。にもかかわらず、株価が高いのは、一度株価が落ちた後、その反転となる好材料が目立っていることと、これまで政府がお金を大量に市場に投下して金融市場に流れているからだ。

具体的に好材料は何かというと、各企業が前の四半期より業績がぐんと回復した(前期が異常だったので当たり前)、米国大統領が決まった、ワクチンの開発ができた、各国政府が引き続きお金をじゃぶじゃぶ市場に流し続けている。

4つの好材料は、これから陰転する可能性が高い。企業は前期比で業績が伸びず逆に落とす。金融の大元の米国バイデン大統領がイマイチ、売電していた大元の東電がイマイチだったように。ワクチンはあまり効かず、さらに一番感染率が高い貧困層に回らず集団免疫を作れない。各国政府はついに財布の紐がきつくなる。

陰転する方がイメージしやすいだろう。この4つの不安材料が重なれば金融はメルトダウンする。政府が今まで市場に出回したお金は、スポンジに吸われた水の如く消えていく。結果、原発のメルトダウンと同じで故郷を追われる人が続出するだろう。お金の故郷である会社を追われ、仕事を追われ、都会を追われ・・・。

サイレント津波は来ると見越して、高台に一時的に避難していたらいい。油断して安心している周りの人は「心配しすぎ!」というだろうが。その高台とは何か。それはお金がなくても生きていける人の輪の中にいることである。

今からでも遅くない。お金を介さなくてもご飯が食べられる、あったかいところで寝ることができる、そして自分が余っているものをシェアできるといった人の繋がりを作ること。奪い合いの輪に入らないでいいように。

コロナ禍や選挙は「分断」を生み出したが、それは繋がりの大切さを氣づかせる天からの大ヒントとなるメッセージだったのだ。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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