変と不変の取説 第71回「世界のルールはどう変わる?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第71回「世界のルールはどう変わる?」

前回、第70回は「劣等感はどこまで続く」

安田

世界のルールについて聞きたいんですけど。

何でしょう。

安田

アメリカとかヨーロッパとか、基本的に先進国はみんな民主主義ですよね。国民に選ばれて国のトップが決まるという体制。

そうですね。

安田

独裁政権は野蛮で「社会主義も独裁政権だ」と彼らは言ってる。

民主主義側の主張はそうです。

安田

でも「世界のルール」が多数決で決まるかというと、ぜんぜんそんなことない。

ほぼ大国の意思で決まります。

安田

ですよね。それって自己矛盾じゃないですか。民主主義が最高だと言いながら。

最高だとは思ってないでしょう。

安田

え!そうなんですか。

多数決で決めないほうがいいことも、たくさんありますから。

安田

たとえば?

たとえば中国は一党独裁で偏ってますよね。

安田

はい。

でも独裁である分、余計な時間がかからない。ねじれ国会とかもありませんし、決まるスピードがぜんぜん違う。

安田

確かに。トップもエリート中のエリートですし。少なくともボンクラはトップになれない仕組みですよね。

はい。

安田

ってことは独裁のよさもあるってことですか。民主主義の悪さもあるってこと?

そうですよ。

安田

それはアメリカや他の先進諸国も分かってるわけですか?

もちろん分かってます。意思決定の早さが違うし、余計な手間もかからないので。

安田

技術革新のスピードでも中国に勝てなくなってますね。

構造的にそうなっていきます。人権なんて考えずにどんどん先に進めるので。

安田

絶対にその方が早いですよ。

だからアメリカは躍起になって中国を叩くんです。

安田

自動運転とか5Gとか、先進技術で勝てなくなるから?

はい。

安田

でも先を行ってるから叩くって、民主主義の考えに反しませんか?

国同士の戦いでは民主主義は関係ないです。

安田

すべての国や人を平等に扱ったりはしない?

ぞんなことは絶対にしないです。

安田

そこに自己矛盾を感じないんですかね。

感じないですね。自国の利益が最優先なので。

安田

自国は民主主義で成り立ってるのに、世界のルールは強国だけが決めても平気だと。

そのとおりです。

安田

じゃあ、なんで民主主義国を増やそうとするんですか?

民主主義国になると子分が増えるからですよ。自分たちが先に行ってるので「俺たちを見習え」みたいな。

安田

何と!じゃあ子分の取り合いで共産主義を嫌ってるんですか?

そうです。

安田

人権がどうとか言ってるのは?

「自分たちに都合のいい人権」だけを持ち出すんですよ。

安田

確かにそうですね。民主主義と言いながら、結局は金持ちや権力者の既得権益を守り続けてるし。

そうです。民主主義国だって、みんなが平等になったら困るわけです。

安田

平等になったら、お金持ちの財産もゼロリセットされちゃいますもんね。

平等にするためには1回全部没収ですから。

安田

民主主義と言いながらマジョリティーは貧乏。

はい。「平等のほうがいい」という機運が強まりすぎると困る。

安田

だから共産主義思想が広がるのは困ると。

共産主義のトップも民主主義が広がるのは困る。どちらも同じ穴のムジナ。

安田

日本はアメリカに無理やりつくられた民主主義国家ですけど。「好きな方を選べ」って言われたら、貧乏な人は共産主義を選ぶんでしょうか?

共産主義は思想統制されるし、自由じゃないっていう印象があるので。それがある限り選ばないと思います。

安田

じゃあ仮にサンダースさんが大統領になっても、アメリカ国民が蜂起して共産主義になることはあり得ない?

ならないですね。

安田

う〜ん。金持ち支配も嫌ですけど、自由が制限されるのも嫌ですよね。

アリストテレスは言ってましたね。「政治体制はグルグル回っていきます」と。

安田

でも中国は国家予算を自由に使えて、なおかつ十数億の人間がいるわけでしょ。民主主義国家ではちょっと勝てない気がしますけど。

そうですね。アメリカなんて民主党と共和党で方針がコロコロ変わるし。効率が悪いですよ、やっぱり。

安田

トランプがいかに強硬に出たところで、せいぜいあと4年。どこかで勝てなくなる気がします。

そろそろ抜かれるんじゃないですか。

安田

だから「抜かれる前に叩いとこう」ってことなんでしょうね。

脅威がどんどん強くなってるので。

安田

それがいま起こってる米中経済戦争の本質ですか?

そうです。

安田

最終的にはどうなると思います?中国がどんどん仲間を増やして、最強国家になる可能性もある?

う〜ん。私はまったく違う価値観のコミュニティが現れると思ってます。

安田

それは資本主義でも共産主義でもなく?

はい。結局どちらもヒエラルキー型なので。

安田

なるほど。もしそうなるとしたら、中国の現体制は終わるってことですか?

歴史的に見ると中国はずっと「内側から」崩壊してますから。

安田

香港のデモもすごかったですもんね。

彼らはそれを一番恐れてます。

安田

だから隠しカメラで国民を監視するんでしょうね。

中国でNHKを見てたら、香港のニュースが流れた瞬間にバッと真っ暗になるらしいです。

安田

それだけ監視してたらクーデターは起こせないんじゃないですか。

クーデターが起こらなくても体制が変わる可能性はあります。

安田

それはどうやって?

国の制度とは関係なく自分たちのルールで生きる人が増えていく。

安田

自分たちのルール?

はい。ヒエラルキーとは距離を置いたルール。そういう人たちの横のつながりがどんどん生まれてくる。

安田

でも国は共産党のヒエラルキーで動いてるわけでしょ?

「国はもうほっとけ。自分たちのルールでやろう」という具合に二局化していく。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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