会社の役割、個人の役割

人間はひとりでは何もできない。
えんぴつ1本、Tシャツ1枚、つくることができない。
材料を調達する人、加工する人、
加工する道具を作る人、などなど。
多くの人が役割分担することによって、
すべての商品はできている。

私たちの文明は間違いなく、
組織の力によってつくられてきたのである。
とくに20世紀以降、
会社という組織によって生み出された物は数知れない。
あらゆる商品、あらゆるサービスが、
会社という仕組みの上に成り立っている。
そう断言しても過言ではないだろう。

だがその強固な仕組みも永遠ではない。
生物や物質のみならず、
あらゆるサービスや仕組みにも寿命というものがある。
生まれたものは死に、作られたものは壊れ、
始まったものは終わっていくのだ。

会社という役割を終わらせていくもの。
それはインターネットを軸としたテクノロジーである。
人はひとりでは生きていけない。
この法則が変わったわけではない。
21世紀に入っても、人は人とつながることでしか、
その価値を発揮できない。

変わったのはつながる方法だ。
会社という場所を通じてつながる時代から、
インターネットという場所を通じてつながる時代へ。
物理的な制約から解放され、
人と人とのつながりはどんどん加速していく。
その結果、どういうことが起こるのか。

最も影響を受けるのは信用である。
個人と会社を比較した場合、
会社の信用は圧倒的に強かった。
どの会社に所属するかが、
個人の信用の大きな判断基準であった時代。
それがいま終わろうとしている。

どのお店で食べるかよりも、
誰が作った料理を食べたいか。
どの会社のサービスを受けるかよりも、
誰にサービスを受けたいか。
会社が発信する情報よりも、
個人が発信する情報の方が親近感を持たれ、信用される。
そういう時代に私たちは突入した。

いい仕事をすれば、その評判はどんどん拡散され、
個人の信用は増していく。
そうやって個人の信用は、
組織の信用を超えてしまったのだ。
この人が作ってくれるのなら、そのお店に行きたい。
この人が担当してくれるのなら、その会社に発注したい。

そうなったとき、会社と個人の役割は大きく変化する。
信用力に基づく集客。
それを会社が担う時代は終わる。
広告を出せば出すほど信用は低下し、
コストは高くなっていく。
そのコストを売値に転化され、
顧客はますます離れていく。
信用と集客は個人の役割へと移行する。

 


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