組織ブランドの苦悩

三井住友銀に勤めています。
リクルートで法人営業を担当しております。
パナソニックで課長職をやってます。
「おお!それはすごいですね」と、
どこに行っても評価される。

銀行でローンを組む時も、
知らない人と話をするときも、
所属する組織は大きな後ろ盾となってきた。
組織ブランドがとても大きな力を持っていた時代。

そこでは企業が莫大な広告資金を投入し、
テレビCMでひたすら社名を連呼させてきた。
あの会社の商品だったら間違いない。
消費者は企業ブランドを信頼し、
問合せや集客が殺到する。

その顧客対応を社員がこなすという仕事の流れ。
企業ブランド→個人ブランドという図式が
完璧に出来上がっていたのである。
ところがこの常識はいま大きく変わりつつある。

とくに中小〜中堅企業というポジションの会社。
そこではもう逆転現象が起きている。
たとえば飲食店はとても分かりやすい。
複数店舗を運営する会社のブランドより、
「あのシェフがやっている、あのお店」という
ブランドほうが強いのだ。

もちろん、これは飲食に限った話ではない。
現在人気のあるNiziU(ニジュー)
というアイドルグループ。
このブランドはいつまで続くのだろうか。
ちょっと前まではAKB48が流行っていた。
その前はモーニング娘。

確かにグループ・ブランドは効率がいい。
個々のアイドルが抜けても、
グループ全体のブランドは維持できるからだ。
だがそれは諸刃の剣でもある。
誰が抜けてもいいということは、似たような
コンセプトを真似しやすいということでもある。

主要メンバーが抜けたモーニング娘やAKBは
今でも活動しているが、かつてほどの人気はない。
新たなグループによって凌駕されてしまった。
これは当然の帰結といえる。

企業がやってきたブランド戦略もこれと同じだ。
似たようなサービスを展開する新しい会社に
どんどん凌駕されていく。
ではどうしたらいいのか。

往年の演歌歌手やアイドルが食べていけるのは、
個々のファンがいるからである。
個人ブランドは真似をすることができない。
SNS時代の企業経営は、
個人ブランドを生かすことが必須となるだろう。

社員の個性を前面に出し、
それぞれが自分のファンと繋がっていく。
「あの会社に所属してる人」というブランドではなく、
「あの人が所属している会社」というブランド。
個人ブランド→企業ブランドという図式こそが、
新時代のブランド戦略なのである。

 

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